ブルトロットの人々
「ここは、アーリヴァンでも特に栄えている、『ブルトロット』っていう町。昔からナライエ王国の一大交易地として有名で、あっちの方には他の国からの船がたくさんやってくる港もあったりするから、この国では貿易だけじゃなくて、外交上でも重要な拠点になっているわ」
白を基調とした家々に囲まれた往来の両脇には、うず高く積まれた色鮮やかな果実の山や、整然と吊るされた燻製らしき加工食品などが、果てなく続く布の天蓋の下に連なっている。
それらの無数の露店に挟まれる、圧倒的な喧噪に満ちた人混みは、見た目には際立った不自然さはないものの、どこか異国的な意匠の感じられる衣服を着た、西欧的な顔立ちの人達で構成されている。
また、時折品物を積んだ荷車を引いて通り過ぎていく動力代わりの動物は、まるで象の胴体に褐色の毛を生やし、そこに首の短い山羊の頭を付けたような、見たことのない異形の姿をしていた。
「当然、流通の盛んなこの町には、都市部の大手商業組合だけじゃなく、個人間での取引を専門にしている行商人もいっぱいやってくるわ。その中には、たまに鋼骸器を取り扱っている人もいるから、運が良ければ、そこであんたの欲しがってる物が手に入ったりするかもね」
曇りない蒼天の下、街道は通行人達の絶え間ない足音や、あちらこちらの店から響く客引きの声で、騒々しい程の活気に溢れている。
通りを行く人々の顔は、いずれも明るく泰然としており、上空の監視衛星や無人偵察機に怯えている様子は微塵もない。
そうした街の住人達の反応に、カイトは服装の違和感や見慣れない生物の存在よりも強く、ここが異世界であるという事実をはっきりと思い知らされた。
「じゃあ、まずはこの大通りから適当に当たってみましょ。ここなら、異国からの旅人も多く通るから情報も集めやすいし、何より人目がある分、ギスティアの奴とかが襲ってくる心配も少ないし……って、ちょっとあんた、ちゃんと聞いてる?」
不意に轟いた、周囲の雑音に負けないメリッサの怒声に、陶然と通りを眺めていたカイトは我に返る。
彼は、隣から細目で睨んでいる彼女を振り返ると、決まり悪そうにぎこちない笑みを浮かべた。
「あ、す、済まない……えっと、何の話を、していたんだっけ?」
「あのねぇ……あんたが街で聞き込みをしたいっていうから、こうしてわざわざ私も付き合ってあげてんのよ! 別に、私の助けなんか要らないっていうんなら、勝手にお一人でどうぞ!」
「悪かった謝るよ、この通り! だから、どうか機嫌を直して、俺に手を貸してくれないか?」
「ツーン。聞こえなーい、聞こえなーいですよーぅだ」
気分を害したメリッサは、彼からの謝罪の言葉にも聞く耳を持たずにそっぽを向く。
それでも、必死に頭を下げ続けるカイトに最後には根負けし、相変わらず乗り気ではないものの、予定通りに街での情報収集を行う流れとなった。




