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Armed Wizard Vanguard(アームド ウィザード ヴァンガード)  作者: 伊森 維亮
第二章 追憶よりの魔手(アサルト フロム ザ パスト)
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悪魔の囁き

「す、済まない、つい夢中になってしまった。こんなことを言われても、君には何がなんだか、分かるはずがなかったよな……」


 慌てて決まり悪そうに謝りを入れるカイトに、ようやく顔へと生気を取り戻したメリッサは、苦み走った顔付きで軽く左右に首を振ってみせた。


「うん、まあ……ひとまず、あんたが私の全然知らない世界からやってきたってことは、まず間違いないっておかげではっきりしっかり理解できたわ」

「そうか、良かった。君が柔軟な発想ができる人で、助かったよ」

「それで、あんたがここでも地獄でもない所から来たってのは分かったけど、これから一体どうするつもりなの? 行く当てとか、自分の世界に戻る方法とか、もうあったりする訳?」


 もうこの話はうんざりといった感じで、メリッサはやや強引に話題を切り替える。

 彼女があっけらかんとした口調で尋ねたその問いこそ、正しく現在のカイトが直面している、最大の懸念事項そのものであった。


 メリッサ達の世界が、自分にとってのパラレル・ワールドであるという仮説は、(はなは)だしく突飛で空想的ではあるが、現状では最も信憑性と可能性が高い。

 となれば、自前の知識や常識といったものは、この世界ではまるで通用しないことになる。

 こちら側で生存(サバイバル)し続けるためにも、元の世界へと帰還(リターン)する道筋を探るためにも、この世界の環境や社会情勢・歴史背景には、ある程度通じている必要がある。

 しかし、こちらへと移動(ワープ)して日の浅い自分には、これまでそれに関する情報を得る時間はなく、そして、これから知り得るための余裕もほとんどありはしなかった。


 非常に返答の難しいその質問に、カイトは気まずさから視線を床の上へと落とす。

 困り果てた顔を力なく伏せる彼に、メリッサはニヤリと口角を持ち上げると、意地の悪い薄い笑みを浮かべてみせた。


「ふぅん。その様子だと、やっぱり考えは何もないみたいね。ま、こっちに来てからは戦ったり死にかけたりとか忙しかったから、そんな暇はなかったでしょうけど」

「どっかの誰かさんの勘違いのおかげで、余計な面倒事に巻き込まれたおかげでな」

「うっさい! で、そんなあんたに提案なんだけど……もう一度、私と『契約』しない?」

「契約……? だから、俺は悪魔じゃないからそれは無理だと、もう何度も―」

「そんなの、とっくにもう分かってるっての! 私が言ってるのはそんなのじゃなくて、なんて言うか、もっと、こう……そう、商業的(ビジネス)な関係でのことよ!」


 発言の意図が掴めず茫然とするカイトに、メリッサは苛立ちから小さく舌打ちを漏らすと、座っていた椅子ごと彼の方へとにじり寄った。


「私がギスティア……森の水車小屋で私達を襲ってきた、あの本物の悪魔のことなんだけど、あいつに狙われているってのは知ってるでしょ? だから、またいつかあの男がやってきた時に、あんたには前みたいに私を守ってもらいたいのよ」

「つまり、俺に君の用心棒(ボディーガード)になって欲しいと、そういうことか?」

「そう! その代わりに、私はこっちの世界についてあんたの知りたいことを教えたり、いま持ってるみたいな鋼骸器を探すのを、手伝ってあげるって訳。どう? いろいろとジリ貧のあんたにとっては、そんなに悪くない話でしょ?」

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