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Armed Wizard Vanguard(アームド ウィザード ヴァンガード)  作者: 伊森 維亮
第二章 追憶よりの魔手(アサルト フロム ザ パスト)
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越えられない壁

 唐突に投げられた直接的で恫喝(どうかつ)的なその詰問に、カイトは一瞬返答を躊躇(ちゅうちょ)する。

 自分を見据えているメリッサの鋭い眼差しを、彼は横目でちらりと受け止める。

 そして、重く小さい息を吐いて心を落ち着けた後、カイトは彼女の正面へと向き直り、誠意と力を込めて首肯した。


「そうだ。俺は君が言っていたような、『悪魔』とかでは決してない。俺は、君やルチアがそう呼んでいたような、こっちの世界における『鋼骸種』とかいう種類の存在になるはずだ」

「こっちの世界では、って……じゃあ、あんた、一体どこから来たっていうの? 地獄からじゃないって言うなら、まさか、『鋼骸種の世界』からってこと!?」

「君の理解の範疇(はんちゅう)で言うなら、それが最も妥当なところだろうな」

「そんな……鋼骸種が生息している世界だなんて、それこそ眉唾の与太話じゃないの!! それに、本当にそんな異世界空間が存在してるなら、こっち側の魔術師達の誰かが気付いているはずよ! なのに、そんな噂も全く聞かないなんて、おかしいじゃないの!」

「正直、その魔術とかいうこの世界の技術については、俺も詳しくは知らないから確かなことは言えない。だが、現にその鋼骸種の世界の出身者が、こうして君の目の前にいるんだ。俺の話が本当である証拠として、これ以上のものは無いと思うんだが?」


 カイトのその端的な事実確認は、相手の反論を封印するのに充分な効果を持っていた。

 反証の余地のないその問い掛けに、メリッサは口を虚しく開け閉めしながら、躍起になって返す言葉を探す。それでも、やがて自分が完全に論破されたことを悟った彼女は、眉根に寄せていた深い皺を解くと、力なく(かぶり)を振って白旗を()げた。


「はいはい、そうよね、その通りよね。鋼骸種のあんたがそう言ってるんだから、間違いなんてあるはずなんかないわよね。疑った私がバカでした、はいスミマセン」

「やっと分かってくれたみたいで、良かったよ。おっと、(ちな)みに今のは、俺のいた世界について君が認めてくれたことについてであって、君が馬鹿とか言ってる訳じゃないから」

「うっさい、いちいち説明しなくていいわよ、そんなこと! てか、その鋼骸種の世界が本当にあるとして、そこにいたあんたはどうやってこっち側に渡ってきたのよ? 召喚魔術とかを使ってじゃないとしたら、まさか、鋼骸種はこの世界の人間の協力もなしに、自由に異世界間を行き来できるってこと?」

「いや、そうじゃない。俺がこの世界に来たのは、時空振動発生装置の暴走が原因と見て、まず間違いないだろう。俺は、こちら側で目を覚ます前、敵が起動させていた素粒子爆弾のプログラムへと介入し、その活動を沈静化させようとしていた。その過程で、その装置と連動していた時空間転移装置にも何らかの影響が及び、機能に想定外の誤作動を引き起こしてしまったんだろう。あの時、あいつは時空間移動を可能にするとされる、不可知の物質であるはずの素粒子第三類(タキオン)を発見したと言っていた。奴のその言葉を信じるなら、あいつはその力を用いて、本当に過去の時間軸へと移動しようとしていたはずだ。だが、実際に発生した時空間転移に起因する衝撃波に巻き込まれた俺は、俺の知る過去とは明らかに異なる、未知の概念や歴史が存在するこの場所へと飛ばされた。これはあくまで俺の個人的な想像だが、おそらくあの時動作不良に陥った時空間転移装置は、対象を過去や未来などの時空間ではなく、全く別の次元へと移してしまったんじゃないだろうか。以前、この世界は互いに感知できない、異なる空間が重なって存在していると聞いた覚えがある。だとすれば、制御不能となって本来の機能を失った時空間転移装置の転送先が、何らかの条件から異層空間としての並行世界(パラレルワールド)へと変更された可能性もある訳だ。我ながら(にわ)かには信じがたい話ではあるが、これならこの世界の人間が最新鋭の戦闘兵器を知らない理由や、悪魔や魔術といった俺の常識を超えた超自然的(スーパーナチュラル)なものが実在している事実についても、一通りは納得のいく説明が―あっ、と……」


 持論を饒舌(じょうぜつ)に述べていたカイトだったが、ふと隣人の様子が目に入って言葉を濁す。

 彼の滔々(とうとう)と流れるような発言を耳にしていたメリッサは、いつの間にか死んだ魚のような遠い目となって、その話し手の方を思考放棄した虚ろな瞳で眺めていた。

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