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第6話 一応神父ですし

 始まりの街から北へ。


 しばらく進むと、岩山のふもとに洞穴が見えてきた。


 入口には小さな看板。


『注意! ホーンラビット変異種出現中』


「ここですね。丁寧すぎる看板は気になりますが」


 私は洞穴へ入った。


 洞窟内は、光苔のおかげでぼんやりと明るかった。


 中にはゴブリンやスライムが数匹うろうろしている。


「すみません。先を急いでいるので」


 掌底。


 火の玉。


 手刀。


 特に問題はなかった。


 途中には、怪しげな宝箱。


「宝箱ですか……」


 なぜ洞窟に宝箱が。


 しかも、ここは初心者がよく通る洞穴のはず。


「誰も開けていない?」


 杖の先で突いてみる。


「…………」


「気味が悪いですね」


 何が入っているかも分からない。


 そもそも、誰が置いたのかも分からない。


 私はそのまま通り過ぎた。


 やがて奥から大きな音が響く。


 ドォンッ!


「くそっ!」


 聞き覚えのある声だった。


 広い空間へ出る。


「…………」


 初心者講習にいた勇者。


 その正面には、大きな角を持つホーンラビットの変異種。


「ちっ! やっぱり追いつきやがったか」


「大丈夫ですか?」


「来るな!」


 私は足を止めた。


「まだ俺が戦ってる! 横取りすんなって言っただろ!」


「はい」


「そこで待ってろ!」


「はい」


 勇者が剣を振る。


 避けられる。


 変異種の角が腹に入る。


「ぐはっ!」


「…………」


 吹き飛んだ。


「……回復しましょうか?」


「余計なことすんな!」


「と言われても、目の前で死なれると気分が悪いのですが……一応、神父ですし」


「うるせぇ。大人しく見てろ」


 勇者は立ち上がり、剣を構える。


「ぐへっ!」


 今度は剣を振る前に突進された。


「……回復しましょうか?」


「……回復だけだからな。それ以外は何もするなよ」


「はい。彼の者に癒しの雫を。ヒーリング」


 勇者の体が光り、傷が治っていく。


「あ、ありがとう……」


「お気になさらず。ちなみにポーションは?」


「持ってねぇよ。高えんだよ!」


 勇者が叫ぶ。


「この世界のポーション、初心者が買える値段じゃねえだろ!」


「あぁ。あなた方の先輩たちの影響です」


「何の話だよ!」


 変異種が再び突進してくる。


「うわっ!」


 ゴンッ!


 先ほどより、いい音がした。


 勇者が膝をつく。


「おっさん! 回復!」


「進展がないですね」


 私は一歩踏み出した。


「やめろ! 近づくな! 俺の獲物だ!」


「…………」


 難しい人だ。


 私は足元の石を拾った。


「な、何してんの?」


「近づかないようにしています」


「石持って?」


「はい」


 変異種が勇者へ跳ぶ。


 このままだと刺さる。


「仕方ありませんね」


 石を投げた。


 ひゅっ。


 ドゴンッ!!


「ギュッ!?」


 変異種が壁まで吹き飛んだ。


 そのまま動かなくなる。


「…………」


「…………」


 勇者がゆっくりこちらを見る。


「今、何した?」


「石を投げました」


「見れば分かる!」


「急所だったのでしょうか」


「そんな問題じゃねえ!」


 勇者が立ち上がる。


「ていうか俺の獲物!」


「死ぬよりはマシでしょう」


 私は倒れた変異種を見る。


「勇者は生き返る!」


「分かっていて教会の仕事を増やされるのは、放っておけませんからね」


「そこかよ!」


 勇者が頭を抱えた。


「なんなんだよ、あんた……」


「神父です」


「知ってるよ!」


 私は依頼書をしまう。


「依頼も完了のようですし戻りましょう」


「待て!」


「はい?」


「次は絶対俺が倒すからな!」


「頑張ってください」


「その余裕が腹立つ!」


 元気はまだあるようだ。


 私は洞穴の出口へ向かった。


 ◇


「討伐確認できました。お疲れさまでした」


 受付嬢が依頼書に印を押す。


「ありがとうございます」


「初依頼をこのスピードで……順調ですね」


「そうですね」


 私は受け取った報酬をしまう。


「次はどうされます?」


「次ですか」


 少し考える。


 一人でも戦える。


 だが。


 冒険というものは、普通は仲間とするものらしい。


「仲間を探そうと思います」


「それなら冒険者の酒場ですね」


「酒場?」


「仲間募集の冒険者がよく集まっていますよ」


「なるほど」


 ちょうどいい。


「では、行ってみます」


 最初の討伐を終えた私は、次に仲間を探すことになった。

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