99 エンドロール
最終回になります
お読み頂き、ありがとうございました。
私はずっと『王子』だと思ってたけれど、皇帝の息子ならば『皇子』だ。
皇帝がいなくなって帝国もなくなったらしいから、あまりにもどうでもいいことだけれど。
そんなつまらない勘違いに気づいて、笑いがもれる。
次からはカミクラくんと呼んであげよう。
きっと嫌がりそう。
そんなことを思っていると、アモとファルタがやって来た。
ルニもいる。
「おかえりなさいー、サヤさん」
「アモーっ、ただいま、ファルタも、ルニも」
「アカネ皇子も無事らしいな。これで私の無料食事券も保証される」
ファルタがにっこり笑う。
ほんとブレないな。
「もう皇子じゃないんだって」
「ああ、そういえばあいつの父親が中央塔から落ちたと聞いたな」
「皇国が無くなったって、大事じゃないのかな」
「湾市の中はー、結構ゴタゴタしてるみたいですけど、この辺は上層なので静かですー」
「そっかあ。それにしても、三人とも湾市にいたのね」
「アモが、サヤは湾市に戻ってくると言うからな。三人で飛空艇に乗ってきた」
「そうなんだ。アモよくわかったね」
「塔の盟約の始点がここなら、終点もここになると思いましたー」
そういえば、何もわからなかった頃からずっと、私は湾市を目指していたのだった。
盟約の強制力すごい。
「ルニ、おいしいもの食べさせてもらった?」
「はい! ここのごはんはとてもおいしいです」
この子だけでも、助け出せて良かった。
あの城が今どうなっているのかはわからないけれど、そういうのはゆっくり知っていけばいいと思う。
「あー、疲れた。ずーっと歩きっぱなしだったからもうヘトヘトだよ。宿はある?」
「ツヅキが用意してくれた」
あの黒服の部下かな。
湾市の中なら、超快適なベッドが保証付きだ。
「とにかくまず寝るーーっ」
案内された豪華ホテルの豪華スイートで、スプリングの効いたベッドにダイブした途端、私は夢の国だった。
その後のことは、冒険物語としてはエピローグ。
エンドロールの背景に流される程度の話だ。
王子改めカミクラくんは、じきに起き上がれるくらいに回復し、ファルタは無事無料食事券をゲットした。
これにて塔の盟約は完遂され、強制力は解除された、と思われる。
目に見えるようなものではないので、実はよくわからない。
腹黒コーサカ氏は、見舞いと称してちょいちょいカミクラくんの元を訪れており、二人が顔を寄せ合って―――敢えて額を突き合わせてとは言わない―――何事かを企む様子は、なかなかに眼福だった。
百合カプかな?
私の萌えはきゅんきゅんしたが、妄想の方はいまいちはかどらない。
自分の好みの幅が意外に狭くて驚きだ。
こんなに美形に恵まれているのに。
皇帝亡き後の湾市の建て直しは、この二人が担っていくのだろう。
ルニは、ゴタついているカミクラ家よりはマシだと、コーサカ氏が預かってくれた。
湾市なら、学校にも行ける。
仕事をしなくていいのかと訊くから、子供は育つのが仕事だと言っておいた。
寂しくならない程度に、会いに行こうと思う。
私は、ファルタとアモと一緒に峨山の塔へ戻ってみた。
そこが私のダンジョンだというなら、ちゃんと見ておかねばと思ったのだ。
転移陣が使えるので、あっという間だ。
あんなに苦労して踏破した道のりが、瞬きする間に超えられる。
驚いたことに、塔は跡形もなく崩れ去っていた。
確かに、出て来た時に崩れ始めてはいたけれど、ここまできれいさっぱりなくなっているとは。
塔はなくなってもダンジョンとしての機能は残っているらしく、転移陣はちゃんと働いた。
ついでにファルタたちの怪獣大決戦の跡も、すっかり元通りになっていた。
やはり聖域と言われるだけあって、この辺りは普通の土地ではないらしい。
「これ、建て直さないといけないのかなあ……」
「サヤさんが必要だと思ったときに建てれば良いですよー」
「え、そんなもん?」
「サヤさんのダンジョンですからー」
「そうなのか。じゃまだ当分いいや。このダンジョンは地域経済にも貢献しないし」
「妙なことを気にしているな。どのみち塔を登れるのは私かセイカくらいだ」
「そういえば、あの時大雨が降ったのは、摂理の介入だったのかな。だから雨が降ることはないっていう峨山で滝みたいな雨が降ったのよ」
「そんなことがあったんですねー」
「しばらくのんびり暮らそうかなー。摂理だか運命だかに振り回されるのはちょっと疲れたし」
「良いんじゃないですかー」
「よし、じゃ、まず湾市に戻ってスイーツ食べよう」
「お供しますー」
「おう」
こうして私の冒険は一件落着した。
後日、スーパーエリート腹黒二人組から無茶振りが飛んでくるのは、また別の話である。
END
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