85 新王国王2
両脇に立つ天使とケモ耳。
そして足元の魔女っ子。
「俺は考えたってワケ、コイツらを村や街に送って、ソコにダンジョンを作れば俺も行けるようになるってことじゃね」
「えー! そんなコトできるの!? すごいわ」
我ながらあざとい。
でも、初めて対等に話せる人間からの賛辞は格別だろうと思う。
「村や街まで行ければ、そっから魔法飛ばして無双すんのはカンタンだったぜ。村なんてほとんど原始時代だったしさぁ、いくらNPCしかいないからって、手ェ抜きすぎだろ」
胸クソ悪いな。
何がNPCだ。
「どうせ狙うならやっぱ天下統一だろ。『俺様の野望』ってヤツだな」
王はケラケラと笑う。
「んで、オトした国の王とかには人を集めさせたりさ。やること多くてメンドくせーよな。もともとシムとかそんな好きじゃねーし。テキトーに男は兵士にして、女は顔がいいのだけ連れて来て、あとは仕事させる。どーせNPCだし、あんま役にたたねーけどな」
「そこに居る女の人たちも、NPCなの?」
「そーだろ。女はみんな俺が大好きだぜ。さすがに全員から好き好き言われても、こなしきれねーぜ」
下品だな!
私はこの世界の人がNPCだなんて思ったことはなかった。
「あとさぁ、俺、神に言われたことがあんだよな、『カミクラの者を差し出せ』っての。最初は何のことか全然わかんなかったよ」
「カミクラ……? 皇国の皇帝の?」
「そー。東の果てに湾市って文明の進んだ国があるってわかってめっちゃアガったわ」
「それで湾市と戦争してるの? そういう噂だったけど」
「まあな。神の取り引き条件だったってのもあるけど、湾市も欲しいじゃん。飛空艇とかあるしさぁ」
その神ってやっぱり悪魔じゃないのか。
「だいたい転生の条件て、魔王討伐だったりするよな、そういう感じじゃね? 湾市は神に背いた的なコト言ってたしな」
的なコトってなんだ、人の話を聞いてないな。
「でもなかなかしぶとくて。やたらパワーのあるネームドとか居るし」
ネームド―――おそらくセイカやファルタのことだ。
「けどな、ついに『カミクラの者』を捕まえたんだなー」
アカネ王子のことだろうか。
「例の男を連れて来い」
王が命じると、扉から二人の兵士が人を引きずって現れた。
この上層にも男がいたのね。
まあ兵士ぐらい居るか。
「おまえらが探してたのはコイツだろ? 残念だったな、俺の方が一足速かったぜ」
おまえら―――ということは、私の目的はお見通しだと言いたいのだろう。
「顔を上げさせろ」
床に膝を着いて俯いていたその人の髪を、兵士が乱暴につかんで顔を引き上げる。
上部の窓からの光に照らされて、汚れてはいても鮮やかな金の髪と、晴れた夏の空を思わせる蒼い瞳が露わになる。
アカネ王子は、まさに絵に描いたような王子様だった。
コーサカ氏の印象が強すぎて、黒髪和風の人物を想像していた私はびっくりした。
そして、王子の酷い姿にもショックをうけた。
もとは白かったのだろう丈の長いシャツだけをまとった身体は、ひと目でわかる程傷だらけで、シャツは血と泥で汚れきっている。
乱暴に引きずられてきた床には血の跡が残されている。
大丈夫か、この人。
いや大丈夫じゃないよね。
まっすぐ私を見てるけれど、顔色はおそろしく悪いし、今にも倒れそうだ。
「はっはー、せっかくお仲間が現れても、こんな役立たずの女じゃな。まあ、おまえは神との取引きがあるからまだ生かしといてやる。でも女、おまえはダメだ」
そう言って王は私を見てニヤニヤ笑った。
見ためはまだ十代の少年なのに、最低の人格が表われているような醜い顔を見て、私は悲しくなった。
こんなのが、私と同じあの恵まれた世界からやって来た者なのか。




