80 城攻略3
―――という訳で、新王国王はを魅了を使う。
そしてどうやらアモの技で解除は可能らしい。
城の中に居るのは魅了された女性、半妖の獣人、極少数の男の兵士で、それを統率しているのが三体のゴーレム。
ルニによると、攫われて来た女たちがまず閉じ込められるのは地下の部屋のようだ。
それから選別を行って、見目の良い女はハーレム要員に、その他は労働力にする。
ルニがハーレムに入っていないところをみると、ロリ趣味は無いらしい。
そしてあまり考えたくないことだけれど、役に立たないと断じられた者はおそらくあの麦にされる。
麦を生産するだけで食糧問題を解決できるのだから一挙両得だ。
城のどこかで栽培しているのかもしれない。あれ自体魔物の一種らしいから、太陽光とかも必要なさそうだ。
話を聞いた限りでは、三体のゴーレムとガチ戦闘にならない限り問題はなさそうだ。
ファルタの機動力と、アモのが解呪があればある程度城の攻略はできるのではないか。
目的はルニの主人の救出であるが、実を言うと私はそれ自体は望み薄なのではないかと思っていた。
閉じ込められてから時間も経っているようだし、乳児とはいえ、いやむしろ役に立たない乳児だからこそ、男児を新王国王が生かしているとは考えにくかったからだ。
しかし、結果がどう出ようと、ルニの希望に沿って動くというのが目下の方針だ。
私は、城の内部を調査することが必要なのではないかと思っている。
そしてそれはおそらくアモの目的にもかなっている。
―――つまり盟約の強制力である。
雑すぎる作戦会議の末、私たちは城に潜入すべく、働く女たちの目を避けて城の入り口をくぐった。
ルニの案内で通路を進む。
窓もほとんどない城の中は暗かった。
所々に申し訳程度に魔石灯の明かりがぼんやりと浮かんでいるが、床も天井もよく見えない。
仙女ボディの視力は並みの人間レベルなのだ。
慣れているのか、ルニは迷いなく進んで行く。
「この奥に、あたし達が寝ている部屋があります。下へ行く階段はこっちです」
誰ともすれ違わないし、人の気配が無い。
城の大きさの割には人が少ないのかもしれない。
男の兵士は最低限しかおらず、女はハーレム要員を除いて城の奥には連れて行かない。
ルニがその対象にならなかったのは、幸いだった。
不要とされた者は、麦にされる。
そして半妖の獣人はファルタが虫を傷つけたのでおそらくもう増えていない。
城内に人が少ない理由はそんなところか。
狭い階段を下る。
床も壁も砂岩のような素材感で、あまり足音も響かない。
かなりの段数を降りると、また通路だった。
「ここは普通のダンジョンだな」
ファルタがあたりを見回しながら言う。
どうやらファルタにはこの暗間でもはっきりものが見えているらしい。
「でも魔物もいませんし罠もありませんねー」
いやアモ、それは無くていいから!
「入れ物を造るだけで精一杯だったんじゃない? ダンジョンや魔物を作るにはポイントが必要だって、ゴロー氏は言ってたし、15年かかってあのデェッツェンのダンジョンを作ったって話だった。それに比べたらここはほんの数ヵ月かそこらで作ったわけでしょう。しかも、ダンジョンとして機能させるつもりもないみたいだし」
「そうだろうな。おそらくいる魔物はあの半妖だけだ。問題はゴーレムだが、三体しかいないなら広い範囲は見張れない」
「男の兵士は魅了にかからないようですからー、見張りとして配置するのも難しいでしょうねー」
「たぶん、新王国王はダンジョンを拡げることを最優先にしてる。ダンジョンマスターはダンジョンの外には出られないから。外に出ているって話もあったけど、おそらく自分の姿のゴーレムを作っているか、三体のゴーレムを上手く使ってそう見せかけているか」
「新王国が表に出てきたのは三年前ですー。実際にダンジョンマスターとして転生したのはもう少し前だとしても、五年にも満たない年月しか経っていません」
「経験が圧倒的に足りないってことね」
「だろうな。しかも本来ダンジョンはその土地に富をもたらす存在だ」
「それが収奪と恐怖じゃあ、土地の人間も、ダンジョンマスター仲間も忌避するわよね」
「おそらく何もかも手さぐり状態なんだと思いますー。それでも普通のダンジョンマスターにはできないことができているから、こんなことになってるです」
「ゴーレムを外に出すこと、かな。あと魅了」
「それでひたすらダンジョンを作って拡げまくっていると。警備も手薄になるわけだ」
通路を進む間も、誰一人すれ違わなかった。
そして通路の終わりには、扉があった。
「中に何があるか、知ってる?」
ルニに訊ねてみる。
「わからないです、ここまでは来たことがないので」
「そう」
「見てみよう」
言うが早いか、ファルタはいきなり扉を開けて中を覗きこんだ。
全開にしなかったことは褒めてやろう。
そして覗いたと思ったら一瞬で閉める。
私たちには、見る間もなかった。
「ファルタ、何があったの?」
「ここはダメだ」
厳しい声で言うと、来た路をどんどん戻り始める。




