58 デェッツェンのダンジョン3
「そっか……現代でもそうだったわね」
「それにこれはもっと不確かな話なんだけど、大峡谷よりずっと北東の方に冥地と呼ばれる場所があって、そこに謎のエネルギー源が眠っていると言うんだ」
「メイチ……?」
「幽冥のメイ冥土のメイだな。一本の草も生えない不毛の地という話」
「ナニソレ……なんか危いモノなんじゃない? 核物質とか……」
「さあなあ。それはホント噂程度の話だから。でも新王国の王がソレを狙ってるとしたら、湾市と衝突してるのもわかる」
「湾市もエネルギー源を領有しようとしてる?」
「そりゃあな、飛空艇を飛ばしてる国だぞ。もともとこのあたりの国とは文明レベルが段違いだから、エネルギー需要もハンパないはずだ」
「うーん、竜骸の他にも謎のエネルギー源が争いの種になってるってことか」
「まあ新王国が一方的に突っかかってるって形だな。そもそも新王国はそこら中の国にケンカ売って支配下に置いているらしいからな」
「そこの王が転生者だと?」
「じゃないかって話だ。あまりお近づきになりたくはないが」
「ここまでは影響が無いの?」
「わからん。デェッツェンの国は今のところ独立を保っているが、いつ攻められるかもしらん。まあ、ダンジョンは国とは無関係だからな」
「ダンジョン内には手が出せないってこと?」
「おそらくは……でもアイツはいろいろ規格外だからな……ヤバイかも」
ヤバイなんて単語、久しぶりに聞いた。
謎の親近感がわくなぁ。
「新王国の王様ってヤバすぎなんじゃない」
「そうなんだよなあ。そちらさんの竜人族も相当だけど」
「ああ……」
そこへ来るか。
「ファルタも規格外だからねー。ごめんね。もう引きあげるから安心して」
「オタクが主人なのか?」
声を低くして問う。
「そういうわけじゃないけど、なんか盟約とかで一緒にいるのよ」
「ああ、塔の魔女の盟約ってやつか。ふーん。おもしろいな」
「よくわからないことがいろいろあるよね、この世界。貴方はどの位住んでるの?」
「うーん、15年くらいかなあ。今は安定してるけど、最初の頃は辛かった」
「ダンジョン作成って大変?」
「始めはポイントも少ないし、少しずつ拡張しながら人を呼んで来なきゃならないし……まぁゲームみたいではあるけど。ろくな食べ物もないし、餓え死にしそうだった事もあるな」
「あーそれはつらい。今は食べ物ってどうしてるの? ダンジョン内で作ってる?」
「いや、地元民に持って来させてる。貢ぎ物とかお供えとか、そんな感じ」
「へえー。あ、そうだ。それならピザ食べる?」
「ピザ?」
思いついてピザをふるまうと、ダンジョンマスターゴロー氏は泣かんばかりに喜んだ。
その後しばしふたりで、この世界の食事情と日本の飯について盛り上った。
「いやー、それにしても竜人にはびっくりした。めちゃくちゃ強いな」
「そうね」
「強すぎだろ。この層のボスはかなりの高難度設定なんだ。造形にも気を遣ったし」
「どこかで見たような気がするのは気のせい?」
「それは言わない約束だって、オタクもゲーマー?」
「へっぽこだけどね。ちょっとだけやってた」
「この世界って、ゲームの世界という訳でもないんだな。なんかいろいろごちゃ混ぜ感がある」
「そうかも。レベルとかステータスとかも無いよね」
「無い無い。僕はダンジョンマスターだから、ダンジョンのレベルやステータスは見られるけどね。人にはそういうのは無いらしい」
「私なんかきっと、ステータス見れたら全部最低っぽいわ」
いささか落ち込む。
「だから竜人族が付いてるんだろう。普通ダンジョンはラスボスが撃破されたら終りで、マスターは運良く助かったとしても、一から出直しになるんだけど」
「厳しい……」
「塔の魔女のダンジョンは、百階まで登った者の願いを叶えるっていう話じゃないか。だいぶ変則だよ」
「たしかに……」
「竜人の願いって何だったんだ? あ、秘密なら言わなくても」
「全然、秘密じゃないし。むしろ協力お願いしたい」
「協力?」
「皇国の王子様のアカネという人を探して欲しいっていうんだけど、何も手がかりが無くて。ゴロー君は何か知らないかなあ」




