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終末の月 ~異世界転生したら仙女でした…仙女ってナニ?~  作者: 天鳥たくみ


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55 王都から

 夕食はなんとルームサービスだった。

 テーブルいっぱいに並べられた豪華な料理は、これも今までのどの街のものとも一線を画していた。

 鳥の丸焼きには美しく切られたポテトや人参が添えられ、焼きたてのパンはバターが香る。

 スープはキノコのポタージュで、魚のパイ包み焼きなんてものまであった。


 美味しい。

 見た目を裏切らない味付けも、さすがとしか言いようがない。

 ファルタも黙々とたいらげていたけれど、私も負けずに食べた。

 デザートはカッサータに似た菓子だった。

 クリームチーズっぽいものの中に、ドライフルーツやナッツが入っている。

 甘い。

 文化レベルがいきなり上がりすぎて怖い。


 この後また野宿に戻り、ピザだけの生活になるとか嫌すぎる。

 でもきっとそうなるよね。

 東の果ての湾市にたどり着けば、美味しいものがいっぱいあるらしいけれど、一体いつになるかさっぱりわからない。


 今はとにかく、目の前の幸せに浸るしかない。

 もしかしたら、またここぐらいの街が途中にあるかもしれない。それに期待しよう。



 その夜は、ごちそうをお腹いっぱい食べて、豪華だけどあまりふかふかではないベッドで眠った。



 翌朝の朝食も豪華だった。

 イングリッシュというよりアイリッシュブレックファーストって感じだろうか。

 ソーセージ、ベーコン、目玉焼き、フライドポテト、豆を煮たもの、ベイクドトマトにベイクドキノコ、何かのプディング。ジュースはりんごっぽいものとオレンジっぽいものがある。それにミルクティー。


 苦しい。

 食べ過ぎた。


 宿を出て、お腹をさすりながら歩く。


「竜骸のある所って、見に行けるのかな」

「さあな。竜骸は権力者が取り合うものだから、どこでも警備は厳重なはずだが」


「そうか。行くだけ行ってみよか」

「いいだろう」


 ぐるっと街をまわりこんで、出っぱりを目指す。

 石の路は歩きやすく、家々には花が飾られて心地良い散歩道だった。


 街の出っぱり部分には、ごたいそうな門があった。

 兵士が立っている。

 いかにも、『用の無い者は通さないぞ』といわんばかりだ。

 ちょっと近づき難い。


 しかし、

「ここは通れるか」

 ファルタは気軽に声をかけた。


 兵士たちはぎょっとしたように体をこわばらせ、それからいかにも困惑しています、という声で

「は……あ、いえ、入れません」

 とようやく言った。


「そうか」

 兵士たちの様子など気にもとめぬ態度で、ファルタは私をふり返った。


「ダメらしいぞ」


 兵士たちは再び震え上がる。

 ファルタは別に怒ったりしていないのだけれど、機嫌を損ねたらと思うと恐ろしい。

 本能的な反応なのだろう。


「ダメならいいよ。行こう」

 私はなるべくにこやかに、どーでもいいよ、という軽い調子で答えてその場を離れる。


 ゴメンナサイ。あなたたちを恐がらせようとか、思ってなかったよ。

 ファルタのとり扱いはなかなかむずかしい。



 竜骸を見るのはあきらめ、街中のパン屋でパンを仕入れて王都を出た。

 昨日入ってきた門は南西にあり、出たのは北東の門だ。


 石の路が続いていて、商人や車が行き来している。

 この感じだと、次の街までそう遠くはなさそうだ。

 しばらくは、寝床や食事の心配は無いかもしれないと思うと、心が軽かった。

 野宿の旅は思ったより心身にこたえていたらしい。



 ふり返れば、あの呪われた村でアモと別れてからもう数十日になる。

 アモとふたりで旅したより長く、ファルタと同行している計算だ。


 ファルタはほぼ野性動物で、旅の連れとしては防御力以外ほぼアテにならなかった。

 ルート検索も、天気予報もしてくれない。

 山中を真っすぐつっきって踏派するとかいう力業がメインだ。

 当然宿も食堂も無しだった。



 王都を後にして、ふたつの村を過ぎたところでファルタがいきなり

「ダンジョンに行く」

 と、宣言した。


「なにごと!?」


 ダンジョンは遠いって、いつだか宿の女将が言ってたような気がする。

 それとは別のところが他にもあるのかもしれないけれど。

 それにしても突然すぎる。


「金が無い」


 ああ……


 単純にして明解、かつ緊急の理由でした。


「そ、それは大変。行きましょう」

「おう」


 私の文化的な生活を保証する『金』はなにより大切だ。



 ダンジョンはそこそこ遠かった。

 途中で国境を越えたらしく、国はオルトリからデェッツェンになっていた。

 そういえばいつかの宿の女将は『デェッツェンのダンジョン』と言ってた気がする。


 ほとんど野宿。泊まっても最低の宿が続いて辛い。


 アモといた時は、村の家の納屋みたいな所にも泊まったけれど今は潔く野宿だ。

 魔物や獣の危険が無いから、不衛生でないだけヘタな納屋より野宿の方がましなのかもしれない。


 小雨程度はあっても、大雨に降られなかったのは幸いだった。


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