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終末の月 ~異世界転生したら仙女でした…仙女ってナニ?~  作者: 天鳥たくみ


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52 ハンベルの街

 私の推測はまあ当たっていて、夕食時前の人の少ない時間もありで、宿の女将は、無知な旅人の質問に嫌な顔もせず答えてくれた。


 コノンノのアモからもらった地図を広げながら聞いたところによると、この街はコノンノのある海沿いから、山脈を越えて北東に位置するらしい。


 街はオルトリという国に属していて、ここから北へ行くと、いくつかの町と村の向こうに王都オルトリアがあるという。


 現王は聡明で穏やか。貴族たちもだいたいは圧政を敷くようなこともなく領地を治めているらしい。

 正当なナーロッパ世界観にマッチした国だ。


 しかし最近は私たちが出会った盗賊のような流れ者が多くなり、治安が悪化しているらしい。

 それも王都のずっと北東、大峡谷の向こうで起きている戦争のせいだという。



 新王国は、北方三国の西側に王都を擁する新興国家で、戦で版図を広げてきた。

 国王は歴戦の強者で負け無しだという。

 ただ皇国との戦いは膠着状態にあるらしい。

 なにしろ皇国の本国ははるか東の果てで、そこから飛空艇を飛ばしてくるのだから。


 戦場となっているのは、大峡谷の辺りで、新王国は敗戦国の兵や民を兵士として送り込んでいる。

 元からの軍人はまだしも、そこらで徴兵された民は戦を忌避して逃げ出すこともを珍しくない。

 そういった流れ者が、武器を持ったままやってくるから始末が悪いと、女将は吐き捨てるように言った。



 皇国のことはよくわからないけれど、新王国はかなり迷惑な国家のようだ。

 アモも関わりたくないと言っていたはず。

 この先もなるべく新王国の勢力下には近づきたくない。


 幸いにもまだこの国の中には、兵士崩れや流れ者ぐらいしか入り込んでいないようなので、なんとか新王国とは関わらずに東へ抜けられそうだと思って、少し安心した。


 ファルタがいれば、ほぼ全ての危険はないも同然とわかっていても、無用のトラブルはできれば避けたい。

 そしてこのなーろっぱ的な世界を楽しみたい。

 久々の穏やかな旅なのだ。




 夜が明けると、商人夫妻と馬車が戻ったと知らせが来た。


 子供(ルニ)を起こして門へ向かう。

 救助に向かった衛士たちも夫妻も、怪我もなく無事だったようだ。


 現地で馬車を直して来たらしい。

 馬はあの時点で見当たらなかったから、街から連れて行ったのだろう。


 ルニは、馬車に駆け寄ると商人の手伝いを始めた。

 まだ小学生ぐらいの子供なのに、働くことが当たり前のようだ。

 江戸時代レベルの生活なのだろうか。

 思い返してみれば村や町には学校らしきものも無かった。遊んでいる小さな子たちは見かけたが、十も過ぎれば働くのが普通なのかもしれない。

 私とファルタは特にやることもなく、ルニが立ち働くのを見ていた。


 商人の男は私たちに気づくと、改めて礼を言って小金を差し出してきた。

 無下に断るのも無粋な気がして、素直に受け取っておく。街中で菓子でも買おう。なにか売っているといいが。


 夫妻とルニに別れを告げて、街の中心部へ向かった。




 広場には朝市が立っていた。

 朝食を売る屋台が立ち並ぶ。

 平たいパンに、焼いたソーセージを挟んだホットドック的なものを買ってみる。

 ケチャップもマスタードもないけれど、ピクルスっぽい酸っぱい漬物が入っていた。


 薄い甘い味のついたミルクティーのような飲み物もあった。

 西の方ではお目にかからなかった、豊富な食材と味付けだ。

 だいぶ文明の進んだ世界にやってきた感がある。


 練った小麦粉をスープに入れて煮込んだすいとんに似た料理があったり、クッキーのような菓子が売られたりしている。

 食べ物の他にも、衣類や道具を売る店も出ている。とは言っても、商品のほとんどは古着や中古品のようだった。


 それでもこの市では、店は台の上に商品を並べていて、以前アモと西の町で見た市に比べると時代が進んだ気がする。

 単に貧富の差なのかもしれないが。


 食べ物を見てもこの街の方がはるかに豊かだ。

 衣類が古着ばかりなのは、既製服(レディメイド)という概念がまだ無いからだろう。服は全て注文品(オーダーメイド)なのだ。


 とりあえず通販ゴスロリが頼み放題の今、服は必要ないが、あまり着心地の良さそうなものはないようだ。

 それに色や柄の美しいものも見当たらない。

 あの蜃気楼の街で目にした色鮮やかな布は、やはり幻だったのだろうか。


 今買いたいものはないので、食べ物だけ仕入れて街を抜ける。


 目指すのは王都オルトリアである。


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