表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/14

8.月と側で戯れる君が 1.29.2025






「…………。」




いつも通りの電話越し。


痛いほどの沈黙が続く。



やばい。


付き合ったら付き合ったで、何話せば良いのか分からない。


別に彼女ができるのは初めてでないのに、こんなに口から言葉が出ないことって今まであっただろうか。


付き合う前は何も考えずに話せていたのに。


そう考えて俺が落ち着きなく布団の上で呆然としていると、スマホから声が聞こえた。




「ねね、どこか遊びに行こうよ。次の新月の日。」



「いいよ。どこ、行こうか?」



「んーとねぇー、」




チサクがあそこも良いかな、ここも良いよねなんていい始める。


俺は返事するのだけで、精一杯心臓が働いて苦しかった。


多分相当甘ったるい声が出ていたんじゃないかと思う。




「颯星くんはどこ行きたい?」



「お、俺?俺は」




どこ行きたい?!



チサクの声を聞いて、そこに行ったらどうしようとか考えているだけだった俺のバカ脳みそは、急に振られた自分の意見が思いつかない。



返事しろ。頑張れ俺の頭。


どこ行きたい?!




「ち、チサクの部屋!」




………。



や、やらかした。


もっと色々あるじゃん。


初めて会った公園でもいいし、24時間営業のところなんて今時山程あるのに。


流石にキモいぞ。俺。




「い、いや、その、いつも会うの俺の家じゃん?だから、その、チサクの方で遊ぶのもアリかなっておもって、そんな、変な意味じゃなくて、その、あの、その、………すみませんでした。無かったことに。」




なかなか返事がない。


流石にやっぱ引かれたよな。


これで別れるって言われちゃったら俺どーしよ。


多分立ち直れない。



ここで後輩の『2年で()有名』


という言葉が、今じゃないタイミングで突き刺さる。


俺がいなくても、チサクには良い人がいる。


やっぱこんなキモいやつじゃない方がいいよな。



どんどん自分で自分の心を折ってってる感じがする。

ばかだ。おれ、ばかだ。




「……ふふっ。いいよ、私の部屋においで?」



「いや、ほんとごめんなさい。2度とこんな気持ち悪いこと言いません。」




お願いだから嫌いにならないでください。


チサクの器は狭いと思ってるわけじゃないです。


でも、部屋入れろとか、気持ち悪いし。


嫌われるというか、蛙化?されてもしょうがないと思うんです。


蛙化やだ。しないで蛙化。

ノーモアフロッグ。




「?だから、いいよ?おいで?私の部屋。」



「え、今いいよって言った?」



「うん。」



「ダメです。そんな簡単に男を部屋に入れちゃいけません。」



「颯星くんが来たいって言ったのに?」




そう言われると非常に弱い。




「颯星くんは、何もしないでしょ?」




しません。誓って何もしません。


自信はないけど、しません。


大丈夫。


俺。

理性。

仕事。

ダイショーブ。


ダイジョーブ!


ダイジョーブ?






───────────────────────






そういう訳で現在21時30分。


俺はチサクの家の2階、部屋の窓の真ん前にいます。



どんな部屋なんだろう。


実はただの一度もチサクの家に入ったことはない。


すごい緊張してきた。



一応手土産にコルネ買って来たけど、気に入ってくれるだろうか。


そういえば俺アレルギーあるか聞いてなかったな?!


いつも出したお菓子普通に食べてるから気にしたこと無かった。


コルネ、乳も入っていればナッツも小麦も入ってる……!



やっぱなんか別のにしよう。


家に取りに帰ろう。


アレルギーが何も入ってないのって何?


え、アレルギー表示があるのは28品目だよね?


えび、かに、くるみ、 小麦、そば、卵、乳、落花生

が特定原材料で、特定原材料に準ずるものが……え、なんだっけ。


1年のときに、家庭科基礎で身につけたはずなのに…!



ん?待てよ?


俺が大好きな、かの青リンゴバンドのボーカルはりんごアレルギーだったよね?


え、世界に存在する物って全部にアレルギーある説。


詰んでる!



あれ、チサク、俺にお菓子持ってきてくれたことあったっけ?


ないな。ないね!


手土産もしかして要らなかった?


重い?


今から一回家帰る?




ガラガラ




「ね、颯星くん。いつまでそこにいるの?」



「……あ。」






─────────────────────────






「なるほどね。このコルネおいしっ!どこのお店?」




俺の家の近くにある『étoile de la corne』です。


読み方は分かりません。


何語なのかもわからない。


でもフランス語っぽそう。




「ん!ほうほう。」



「お嬢さん、お口の中がなくなってから話してください?」




口からクリームでそうだよ。


一口の量加減しなさい。




「ほー。」




口の中を処理し終えたチサクが口を開いた。




「ん、でね?来月さ、プリクラ撮りに行こ!」



「プリクラ?夜遅くに?そもそも写るの?」



「閉店後にエオンにこっそり忍び込んで!」




防犯カメラに写らないの?




「多分写んない!行こう!いざエオンへ!」




えー………。


まあ、チサクが楽しいならいいけど。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ