表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/14

9.月の表面に写る君は 2.28.2025






「この辺にエオンなんてあったっけ?」



「ないよー?」



「は?」




先月のチサクの提案で、エオンにプリクラを撮りにいくことになった。


俺たちは今初めて出会った公園付近を飛んでいる。


物理的に飛行中です。



もちろん現在時刻は10時30分なので、エオンは閉店しているはず。


というわけで、忍び込んでプリクラを撮るらしい。


もちろん、きっちり2000円は持っている。


プリクラ代は俺の奢りにするつもりだ。




「飛んでったらあっという間だよ!」



「飛んでったらって、そこそこ遠いぞ?だってエオンって車でも50分くらいかかるし。」



「空を飛んでったら25分♪」




半分でいいのか?


すごい。毎日学校まで飛んで行きたい。




「空は交通ルールがないから、どんだけ飛ばしてもいいんだよ?」




いや、そんな、なんでそんなことも知らないの?みたいな顔で見られても。


だってそもそも俺夜中にほぼ外出てないし。


いつもチサクが俺の家来てくれてたから。


そもそも、飛ばしたら飛ばしたで危ないだろ。




「ほら!見えてきた!せーんにゅー!」




チサクは余程プリクラが楽しみなようで、いつも以上のハイテンションである。




「えぇっと、ゲーセンは………「4階か。エスカレーター……じゃなくて吹き抜けから飛んでくか。」



「さては君、地図読める口だな?」




チサクは、いい道具を見つけたときのような、いたずらっ子のような顔をして下から俺を覗き込んだ。




「読めるだろ。」



「?!わ、私、読めないよ?!」




チサクが慌てたように目を左右にキョロキョロさせる。


私も読めるようになりたいなぁ!というのが伝わってくるようだ。




「みんな読めるわけじゃないし。誰かしら読めればいいよ。」




気にするな。


俺にとってはカッコいいとこ見せれそうだから、チサクが地図読めない方がちょっと都合がいい。



そんな下心を抑えて、頭を撫でようと手を伸ばす。



あ、下心の蓋は下心だったみたいです。



あとちょっと。


あとちょっとでその綺麗な黒髪に手が届く。




「ねね、何してるの?」




チサクはそう言いながら吹き抜けの方へすっと飛んでいっていた。


チサクは本当に不思議だなぁという顔をしていて、俺がチサクの頭を撫でようとしていたことなど、少しも気づいていないようだ。



俺の手はすかっとチサクの頭の上を素通りしたかたちになる。



こういうところで決められないやつって、結構ギリギリまで決められない、もしくは、決められずに終わるよね。


俺、もしかしてそれの予備軍ですか。


泣きますね。今から。号泣していいですか。






─────────────────────────






「おー!久しぶりに来た!プリクラ台だぁ!え、どの台で撮る?!redmitだー!ほしウサもあるしっ98%もあるー!」




プリクラのあるようなところに久しぶりに来たようで、チサクはとてもはしゃいでいる。


きっと新月病に罹って、体が思うように動かなくなってきてから、1度もこう言う場所に来ていなかったのだろう。


なかなか、こんなにはしゃいでいるチサクは見られないので、とても新鮮で可愛らしい。



しばらく、ぼんやりと見惚れているとチサクがくるりとこちらを向いた。




「颯星くんはどれで撮りたいっ?!」




やば、チサクに見惚れてあんまり話聞いてなかった。


いやまあ聞いてたとて、わかる話かどうかは怪しい。


一度、部活の記録会後に友達に誘われて撮った、撮らされた(?)だけの俺にわかることなんて、プリクラが500円ってことだけだ。




「ごめん俺プリクラ詳しくないから、あんまわかんないんだけど、チサクのオススメは?」



「うーんっ、うーんっ、YOUR PALETTかなあっ。」



「じゃあそれで撮ろう?俺、チサクのオススメ気になる。」




俺がそう言うとチサクは満面の笑みで、おそらく自分でしたのであろう刺繍の入ったがま口財布を、パチンッと開いた。



「颯星くん、どっちが300円かジャンケンしよ!」



「俺が500円ね。」




俺が食い気味にそう言うと、チサクは握りしめていた右手をゆっくり下ろした。




「え、なんで?!ジャ、ジャンケン……」



「いいから。ね?」




割り勘にしようとしているチサクの頭をさりげなく撫でて、納得させる。


そうするとチサクは俯いて、




「……今、50円ないから、あとで250円返すね。」




と言った。






─────────────────────────






「やっぱ私たち写んなかったね。」




印刷されて出てきたプリクラには、何も写っていない。代わりに、落書きが山のように書いてある。




「はい、颯星くん半分こね。」




チサクが手慣れた様子で半分のところで写真を切ってくれる。




「ありがとう。」



「また来よ!あ、250円も返すね。」



「いいよ。いらない。俺の奢り。」




プリクラもいいかもしれない。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ