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3.月と声を繋ぐ君に 9.3.2024






「絶対…?」



「ぜ っ た い !!」



「必要……?」



「ひ つ よ う !!」



「………はい。」




俺が諦めてインスタのQRを出すと、チサクはそれでよし、とでもいうように満足気な顔をして、スマホで読み取った。


しかも本垢はもちろんだが、サブ垢まで読み取った。



俺は別にお互いの連絡先は知らなくてもいいと思ったのだが、チサクは新月の日に俺の家に来るなり、連絡先を知らないことについて文句を言い始めた。


どうせ毎月新月の日に会っているわけなので、連絡先だなんてなくても良いと思うのだが、チサクにとってはそうでないらしい。


仮にそうだとしても、サブ垢はいらないだろう。




「……ん、で?」




え、で?とは?


もう本垢もサブ垢も読み取ったんだから、これでいいだろ。




「……LINEは?」




え、LINEも?


インスタあればそれでよくないか?


DMの方がよく使うだろ。

LINEはクラスのグルチャと親とか親戚くらいにしか使わないし、あっても意味ないと思うんだけど。




「いいから、交換しとくの!!!!」




えー、、、。圧に負けて結局交換した。






─────────────────────────






『颯星くんは好きな教科とかあるの?』



「……数学だな。特にIとかIIが好き。チサクは?」



『うーん、私文系なんだよねぇ。日本史とか好きかも。刀がカッコいい!』




連絡先を交換してからというもの週3回、いや、4回くらいの頻度で電話をしたり、毎日のようにDMをしている。


それはいつも決まって、チサクから始まる。


話す内容が特別あるというわけではないが、他の人が聞いたらつまらないような話をずっとしている。


時間帯は主に夜の空いた時間で、勉強をしたり、テレビを見たり、自分の好きなことをしながらのことが多い。


しかも、つい長電話になってしまいがちだ。



この前は、部屋を片すように母に怒られた、だとか、今日のお弁当に好きな食べ物が入っていた、だとか、小テストがあった、だとか、本当にどうでもいいような話をたくさんした。


最初はなんの時間なのだろうか、と思っていたが、いつの間にか、俺の中でなくてはならない時間になっていた。


チサクはなんでもない話を、なんでもなくない話に変えて話すのがうまい。


つい聞き入ってしまって、とても楽しい。




『でね?!刀って、こう反ってるじゃん!?こんな感じで!うーんどうすれば伝わるかな?こんな感じなんだって!』



「っふは!!電話なのにっ、電話なのにこんな感じって!言われてもわかんない!」



『た、確かに…!』




チサクはきっと電話に慣れていない。


電話はお互いのことが見えていない、ということを頭では理解しているようだけれど、実際は、こう、とかそれ、とか、こんな感じとか、抽象的で電話越しでは到底わからない言葉をよく使う。


きっとチサクは直接会っている気分になってしまっているのだろう。


一度ビデオ通話を提案したことがあったが、なんかそれは違う、と互いの顔が見えない良さを熱弁された。

今時、相手の顔が見えない良さを熱弁されるだなんて夢にも思わなかった。


今月の新月の日に連絡先を交換して良かった。



今日もそろそろ電話が終わる。




『そろそろねむいー。』



「そっか。俺も。」




かけらも眠くなんてないけれど、ねむいーと言う言葉を聞くと、なんだか自分も眠いような気がしてきて、つい乗っかってしまう。




『じゃあねよー?』



「うん。寝ようか。…おやすみ。」



『ん。おやすみ。』




プープープー



切るの早いな。


チサクは自分が本当に眠い時は一瞬で通話を切る。


俺からおやすみ、という前に切ることもあるくらいだ。


え、それってどうなの?


自分からかけて自分で切る。まぁ間違っちゃいないか。


考えてたらよくわかんなくなってきたな。


もういいや、俺も寝よう。






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