第二章 幕間2
時系列をほんの少しだけ遡ります。
「ねぇ、プルート。起きてる?」
「あぁ、起きとるで。どないしたん?」
「相談というか、ちょっと聞いてもらいたいことがあるの」
「何や、話してみ」
「最近ね、動いてもないのに心臓の鼓動が速くなることがあるの。ルナや担当の先生からは異常はないって言われてるけど、ちょっと気になって……。プルートは何か知ってたりしないかな?」
「うーん。それだけやと俺も分からんなぁ。どういった時に起きやすいん?」
「人と話してる時に起きやすいかな。でも、前まではこんなことなかったの。こっちに来てからずっとこんな感じ。どこか具合が悪い訳じゃないとしたら、原因はどこにあるのかなって思ったの」
「緊張でもないとしたら、何やろうな。それなら、誰と話してる時にそうなりやすいか分かるか?」
「うーん誰だろう。多分ハロルドと話してる時に起きやすい……かな。他の人と話してる時にそうなったことは多くないと思う」
「ほほぅ、にーちゃんと話してる時にか……。確かヘレナはにーちゃんと戦場で出会って、にーちゃんに導かれるままここまで来たんやったな。二度も危機を救われていると考えるなら……。ちょいと話が変わるけど、ヘレナは恋愛小説とかは読んだことはあるか?」
「あるけど、主人公に感情移入できないことが多くて、あまり好んで読んだことはないかな。それがどうかしたの?」
「ヘレナはにーちゃんと話してる時、楽しいか?」
「うん、楽しい。私と真剣に向かい合ってくれたのはハロルドだけだから。最近はハロルドも忙しそうで話す機会は多くないけど、できればたくさん話したいかな」
「分かったで。ヘレナの心臓が速くなってる理由が。それはな、ヘレナがにーちゃんに恋をしとるからや。多分」
「……言葉としては知ってるつもりだけど、これが恋なの?」
「俺も詳しいことは知らんけど、一般的には恋として分類されるんやないかな。ヘレナはにーちゃんのことは好きか?」
「うん、好き。でも異性として好きかって言われても、正直よく分からない」
「まぁ、ヘレナの境遇を鑑みればそうなってもしゃーないか。それに、恋について具体的に説明してくれ言われても、俺もちゃんと説明できんし。難しいもんやな。なんやろうか、ヘレナの気持ちが時間を経るごとに大きくなって、離れたくないって思えるようになれば、話は変わるんやろうな。まずは様子を見てみるか」
「様子を見る、か。とりあえずはそうしてみる。そう言えば、プルートは恋をしたことはないの?」
「ははっ、おもろいこと聞くな。ぬいぐるみが恋をするなんて笑い話みたいなもんやろ。俺が聞く側だったら爆笑しとるで」
「プルートも人間だった頃は恋ぐらいしたことあるんじゃないの? それとも小説にあったように、振られたから恋にはもううんざりしたとか?」
「いや、そんなもんやないで。単純に俺は……いや、この話はまた今度にしようか。寝る前に話すにしてはあまりにも長すぎんねん」
「別に長くても私は構わないよ。あ、でも数時間も喋るとなると話は別かも」
「それくらいあるで~。根掘り葉掘り聞かれたらもっと時間かかるかもしれんな。寝る前に話す内容としては不適格やろ?」
「それじゃ時間があるときに少しずつ話してよ。プルートの秘密とか結構興味あるし。やっぱり何でぬいぐるみの姿なのかとかは知りたいかな」
「せやな、機会があったら話そうか……。話は変わるけども、にーちゃんから学校の話を聞かされとったな。ヘレナは学校に興味あるか?」
「うん、学校は楽しみだよ。でも、ちょっと不安というか、あまり乗り気になれない部分もあるかな」
「勉強はあまり得意やないとか?」
「勉強はどちらかというと楽しみかな。でも、学校に通う以上、人付き合いができるか不安。ハロルドが近くにいないと話せないってのがここで裏目に出ちゃった感じ。ハロルドやプルート以外の人と仕事以外の話をしたことってほとんど無いから。筆談だけでそれをできるか少し怖い」
「学校は勉学の場だけやないからな。不安になるのもしゃーないか。強いて言えば、俺を学校に連れていくとかか。困ったことがあれば、その都度俺に聞けば多少マシになるかもしれんからな」
「それは、ハロルドに聞いてみないと分からないかも。ハロルドの性格ならプルートを同行させることでの利益不利益とか絶対考えるから。でも、無策で入学させるつもりはないだろうし。はぁ、それまでにリハビリ頑張らないとな。学校生活送れるぐらいの体力がないと流石にダメだよね……」
「時間はあるから、焦らずゆっくりやっていけば大丈夫やろ。頑張れる状態やない時に頑張ったって効果は薄いからな」
「じゃあ、とりあえず適度に頑張る。そう言えば、入学する前に簡単に学力を測るとか言ってたけど、それって試験があるってことなのかな?」
「まぁ、学校側からしたらどこに編入するかの判断材料になるから、あって当然やろうな。どこが出題範囲とか分かっとるんか?」
「分かんない。はぁ、ハロルドにもっと詳しく聞いておけば良かったな」
「明日にでも聞いとけば問題ないやろ」
「そうだね。明日の朝にでも――」
ガチャリ。
部屋の扉が開いた。




