第二章 単独行動5
ストックが尽きてしまったので二週間ほど時間を頂きます。
ルナと暮らし始めてから三日が経った。俺には依然として待機が命じられており、特に何もすることが無い。日課の体力訓練とルナからの授業はこなしているが、ルナに負担を掛け過ぎている気がなんとなくする。仕事を奪わない範囲で何か手伝えることがあれば良いのだが。
朝食後、そんな風に思っていると玄関の呼び鈴が鳴った。
現在ルナは出かけており俺一人しかいないため玄関に向かう。近隣住人への挨拶は済ませてあるが誰が来たのだろう。そう考えながら扉を開けると、そこには数日前に俺をここまで護衛してくれた軍人がいた。そして、俺に視線を向けるとこう言った。
「グリッドマン大佐から招集が掛かった。直ちに同行を」
そう言えば、彼は情報を掴み対策ができ次第招集を掛けると言っていた。つまり今日がその日ということなのだろう。事態が動くと分かった俺は返事に力が入る。
「分かりました。準備してきます」
俺はそう言うと必要なものを揃えて車に乗り込んだ。
数日前に案内された場所へ再び案内されると彼はいた。しかし、前回のような重苦しい雰囲気は薄い。
「ハロルド。待っていたよ。では、そこに座りたまえ。話がある」
俺は言われるままに前回は使わなかったソファに座る。その向かいに彼は座った。
「我が軍の調査報告とそれに伴う今後の方針が決まった。君にとっても重要な話だ。よく聞いてほしい。今回の調査の結果、二人を攫ったのはル・ダリアスというテロ組織だということが判明した。そして、彼らは捕らえた男性官僚と君の引き渡しを要求している。現在は人質奪還に向けて交渉しているが、我々が相手の要求を飲むことはあり得ない。そのため、二人が捕らわれている場所を早急に見つけ出し救出する、という作戦が視野に入ってきた。また、テロ組織が君の居場所を特定、襲撃する可能性を考慮し屋敷周辺の警備も強化するつもりだ」
「テロ組織ですか。物騒な組織が関わっているのですね」
「正直に言えば我々も驚いた。小物に情報を握られるなど思っていなかったからな。現在はどこから情報が漏れたのかなども調査中だ。これに関してはかなり大規模な調査になるため時間が掛かる」
「救出作戦が視野に入っているとのことですが、どの程度を見越しているのでしょうか」
「今日の本題はそれだ。君はヘレナ嬢を助けるために一軍人として使ってほしいと願い出ただろう。それについて私を含めた上層部は君の願いを聞き入れることにした」
それを聞いた俺は心の奥で胸をなでおろした。正直無理だろうと思っていたからだ。だが、願いが聞き入られたことは素直に喜ぼう。
だが、疑問も残る。なぜそのような決定を下したのだろうか。
「ありがたいことです。しかし、難色を示されていたにもかかわらず、何故そのような決定になったのでしょうか」
「端的に言えば規模が小さいからだ。事件の大きさに合わせて行動するべきだと考えれば、我々が大きく動く必要はない。勘違いしないでほしいのだが、君が確実に救出作戦に参加できるわけではない。直前まで控えておき、実行すべき機会ができた場合にのみ参加するという形になる。具体的に言えば君を投入しても全く問題が出ない場合ということだ。だが、我が軍の部隊に配属され訓練をするというのは決定事項になる」
「つまり、私は救出作戦のメンバーに選出されてはいるけれど、安全な機会が来るまでは出撃できないということなのですね」
「そういうことだ。小物とは言えこんなことをしてきた連中だ。多少の警戒は必要になる。それに、二人で一つの兵器ならば片方だけ持っていてもしょうがない。我々にもテロ組織側にも言えることだが、どちらが先に奪えるかとして見るならば、今の状況は予行演習として申し分ない。君たちを兵器として使うには良い相手となってくれるだろう」
彼はそう言うと小さくほくそ笑んだ。
それを聞いて初めて、俺はヘレナが今まで受けてきた兵器としての扱いというものを肌で感じた。自分もヘレナを利用している立場だとは言え、黒い部分をまざまざと見せられるというのは良い気分がしない。
「でしたら、私は出番があることを願ったほうが良いのですね」
「我々からしてもそちらの方が有意義と言えるかもしれないな。いずれにせよ君はこれからしっかりと働いてもらう。その力を存分に活かしてほしい。これからは軍隊内での活動内容と作戦についての細かな説明をする。ルダティアの方式と違うかもしれないが早く慣れるよう努力してほしい」
「分かりました」
そうして、俺は事件解決のために新設された救出メンバーに選出され、翌日から訓練を受けることになった。




