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女の子の僕が君の心を奪うまで  作者: 紫苑寺


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21/22

第21話:卒業とまた明日

6年生の一年間は、思っていたより早く過ぎ去っていった。


修学旅行は定番の京都・奈良で、お寺や古都の街を観光しつつ、

夜は女子部屋でみんなでおしゃべりして眠れない夜を過ごした。


お風呂の時間、豊ちゃんの胸がさらに成長していたのがインパクト大きすぎて、

観光内容をほとんど忘れてしまったけど。


シンくんとは修学旅行中に何度か抜け出して二人の時間を過ごした。

付き合っているわけではないけど、親密な男女の関係が続いている。


イツキくんともイベントごとに少しからかったり、勝負をしたり、

今のところはこんな関係性を維持している。


(これ以上は中学に上がって、お互い身体が成長してからね...)


そう思いながら一定の距離を保ちつつ、運動会や学芸会、

クリスマスにバレンタインなどのイベントを過ごすうちに、気づけば卒業式を迎えていた。


---


卒業式の日、体育館は普段とは違う厳かな雰囲気が漂っていた。


各々が卒業証書を受け取り、校長先生に頭を下げて席に戻る。


(卒業式って、練習は何度もやるのに本番はあっという間よね)


前世でも経験したはずだけど、今の自分の記憶の方がずっとはっきりしている。


向こうの記憶が霞んでいくのか、こちらの日々が濃くなっているのか。


(僕の記憶は私の記憶にどんどん上書きされていっているのかしらね...)


式の間、豊ちゃんは隣でハンカチを握りしめていた。


「泣きそう?」


小声で聞くと、豊ちゃんがこくりとうなずいた。


「愛鈴ちゃんは泣かないの?」


「泣かないわよ。むしろ早く中学に上がれるのが楽しみだもの」


本当に長かった。


転生してから10年以上、子供の身体で不自由することもかなりあった。


何よりの不自由は自由にモノを買えないことだろう。


せっかく女の子になったので、化粧や可愛い服を買いたいがママに


「愛鈴にはまだ早いわ。中学に上がってからね」


と言われ買ってもらえなかったのだ。


普通に考えたら至極当然な意見だとは思うのだが、

前世20年分の記憶を持つ私は女の子を謳歌したいという思いが抑えきれずにいるのだ。


まだ中学では本格的な化粧品やブランド品を手に入れることは叶わないであろうが、

小学生よりはできることが増えるのは間違いない。


そのことを考えると卒業式という場に不釣り合いな愉快な感情しか湧いてこず、

表情を抑えるのに愛鈴は必死だった。


---


最後のホームルームが終わった後、教室はしばらくざわざわとした。


親と写真を撮る子、連絡先を交換する子、先生に花束を渡す子。


「愛鈴ちゃん!」


クラスの女子が何人か集まってきた。


「写真撮ろ!」


「ええ、もちろんいいわよ」


「中学でもよろしくね!」


「絶対また遊ぼ!別々の学校でも仲良くしてね」


「えぇ、忘れないわ」


次々に声をかけられて、写真を撮って、笑って。


(みんな、素直でいい子たちよね)


なんて思いながら、私はにこにこして手を振り続けた。


---


廊下に出たところで、シンくんに会った。


互いの親は外で何か話し込んでいる。


「愛鈴ちゃん」


「なに?」


シンくんが、少しだけ口を開いて——また閉じた。


何かを言おうとして、やめたようだった。


(言いかけたでしょ。「中学でも一緒だね」って)


私は黙って待った。


シンくんは少し視線を落として、それから小さく息を吐いてから、またこちらを見た。


「……中学でも、よろしくね」


「えぇ、こちらこそ。よろしくね、シンくん」


そう答えると、シンくんがほんの少し赤くなった。


「またね」


「ええ」


それだけ言って、シンくんはお母さんの元へと走っていった。


その背中を、私はしばらく見つめていた。


(中学では今まで以上に刺激的な日々を送りましょうね。シンくん?)


---


小学校の6年間、

シンくんとも、イツキくんとも、豊ちゃんとも、ここで出会った。


(感慨深い、なんて言葉、私らしくないわね)


先ほど豊には中学に上がるのが楽しみと言ったが、

ほんの少しだけ、6年間を過ごした学舎を去ることに寂しさを感じる。


そういう気持ちがあることは、自分でも意外だった。


(小学校なんてまだ二次性徴も迎えてないから退屈だと思ったけど、女の子だからか意外と楽しめたわね)


4、5年生になる頃には早い子は初潮を迎えており、

男の子とは違いみんな性に関して興味津々だったのだ。


ガールズトークという女の子限定イベントは、予想よりも過激な話題が多かった。

巷の男子が予想する恋愛や服に関する話などという可愛い幻想は打ち砕かれるレベルであったことは私自身少しショックを受けた。


でも以前豊ちゃんと二人でした際は、ずっと赤い顔をしていたので可愛かった。

ぜひ今後も豊ちゃんはそのままでいて欲しい。


相変わらずの煩悩全開妄想をしていると、突然強風が吹き、春の風がスカートの裾を揺らす。


まだ少し肌寒い。でも、春の暖かさを感じる。


(さあ。次の舞台へ行きましょう)


中学ではより清く、楽しく、美しく、そして淫らに歪んだ日々を送りましょうか。

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