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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
第一の巡礼 悠久原生世界_エイヴス
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91.そして再びのエイヴス

 アトモス学園を発ったオレたちは、列車に乗り込みアルカード星書院へ向かった。

 目的地も昨日と同じ、異世界エイヴス。違うのは、今日は朝から異世界へ乗り込むというところ。

 そして、乗り込む目的も。

 十時過ぎに星書院へ到着し、すぐさま受付に申請をして転移の準備にかかってもらう。

 既に学園から話は通っているようで、オレたちの申請は優先して通してもらえた。まあ、そもそも他にイマジネーターの姿はほぼなかったが。


「おはようございます、皆さん」


 挨拶をくれたのは司書のアンナさんだ。

 オレたちが任務へ向かうのを知り、声を掛けたようだった。


「皆さんが、異世界エイヴスの調査に向かってくれるそうで。まだ入学して間もないのに、大変な任務をよく買って出てくれましたね」

「その分期待されてるってことではありますし。……それに、同期が帰ってこないとなると心配ですから」


 バランはともかく、他の四人はリーダーの意見に振り回されての結果なので可哀想だ。

 どんなトラブルに見舞われたにせよ、無事に連れ戻してやりたい。


「どうか無事に全員が帰還出来るよう、祈っています。頑張ってくださいね」

「ええ、ありがとうございます」


 アンナさんは優しく微笑み、オレたちを勇気づけてくれる。


「……それにしても、エイヴスですか。あの地で問題が起きるとは」

「ん? エイヴスって何か特別なんですか?」


 独り言のように呟いたアンナさんの言葉に、ルカが気になって聞き返す。

 すると彼女はハッとした様子で、


「いえ、長年親交のある場所ですから。……それに、エルフも多く住んでいますし」

「ああ……」


 アンナさんは純血のエルフだ。ゆえにエルフが住まうエイヴスには思うところがあるのだろう。

 もしかすると、愛着すら感じているのかもしれない。


「私自身、何度か訪れたこともあります。司書の特権ですね」


 冗談めかしてアンナさんは言う。まあ、仕事の関係で彼女自身が異世界に向かうこともあるのだろうなとは思う。

 そこで、エイヴスは良い世界だと感じた……とかかな。


「おっと、すみませんお引止めして。準備は出来ていますので、どうぞお気を付けて」

「……はい、行ってきます」


 アンナさんに礼をして、オレたちは転送室へと進む。

 室内に入るとすぐに、転移門のところへワールドスクリプトが下りてきた。


『ワールドスクリプト:エイヴス、準備完了しました。イマジネーターの皆さんはいつでも出発可能です』


 いつものアナウンスが流れる。但し、オレたちの目的はいつもとは違うもの。

 そう、確かこういう事態に対処するときには、相応しい言葉があったはずだ。

 コネクターを取り出し、ゲートを前にして宣言する。

 

「これよりワールドスクリプト:エイヴスの『校正』を開始する――」


 そして、オレたちはエイヴスへと接続を行うのだった。





 転移を終え、昨日と同じ拠点の室内へ到着する。

 ただ、前日から少し椅子が動いているようにも思えた。先行しているイマジネーターがここを使っているのか。

 バランたちの行方不明後すぐこちらへ来ているなら、拠点で一泊している可能性もあるな。


「ふう。……まずはイマジネーターさんと合流しなきゃだね」


 移動後の気持ち悪さを解消しようと体を動かしながら、ルカが言う。

 コーネリア校長が連絡を入れておくと話していたが、伝わっているんだろうか。

 転移門で落ち合えるとのことだったが……。


「――ああ、来てくれましたね」


 と、聞こえてきたのは聞き覚えのある声だった。

 奥の扉がガチャリと開き、そこから現れた人物は。


「メルシオネ教官……」

「久しぶり……と言うほどではないですね。どうも、ダインチームの皆さん」


 入学式後の一週間、オレたちの導入訓練を担当してくれたメルシオネ教官だった。

 よもや、教官とすぐに再会し、その上任務を一緒に遂行することになろうとは。何があるか分からないものだ。

 ……まあ、それは教官の方こそ思っていそうだが。


「今回の事件、ダインチームが調査に同行するというのは驚きました。正直なところ、心配な部分もあるのですが」

「力不足なのは承知してますけどね……やれる限りはやりたいと」

「ふふ、皆さんの力は頼りにしていますよ。むしろ、私がどこまでやれるものかと戦々恐々です」


 普段の穏やかな表情は崩さないものの、確かにメルシオネ教官は緊張しているようにも見える。

 自分が事件の発生している現場の指揮をとるようなことが、今までは無かったのかもしれない。

 そうなると、メルシオネ教官もコーネリア校長に試されていたりするのだろうか。

 お前が先頭に立って解決してみせろ、と。


「メルシオネ教官は、イレギュラーについては?」


 質問をしたのはイオナだ。イレギュラー絡みである可能性が高い本件なので、まず聞いておきたかったのだろう。

 メルシオネ教官は頷き、


「戦った経験はありますし、それゆえ多少の知識もあります。ただ、昨今はイレギュラーの出現が増加傾向にあるようですね。異世界に危機が訪れていることの顕れとは言いますが、複数のワールドスクリプトで起きているというのは少々不気味です」

「……ですね。人手が足りなくなって、私たちに白羽の矢が立ったくらいですし」


 このままイレギュラーが増加し続けた場合、終局に至るワールドスクリプトもまた増加する、ということなのか。

 その点については不安なところだ。


「むしろ、今までが平和過ぎたと思いましょう。時代に即してイマジネーターの育成方針を変えていくのは当然のことです。皆さんはその第一号として、自覚を持って取り組んでもらえれば」

「そうだねえ。光栄にも選んでもらった以上、相応しい結果は出したいもんだ」


 自覚が一番なさそうなのは、そう言うエスカーなんだけどな。


「……それで、メルシオネ教官。私たちはこの後どうすればいいのかしら?」


 これからの動きについてフェイが訊ねると、


「私は昨日から現地入りしているのですが、昨夜アーテミーの町長に面談を申し入れたところ、明日にしてほしいと返されましてね。どうも年に一度の祝祭が近いからなようで、忙しくしている様子でして。……ということで、私たちはこれからその面談に向かうことになります。時間もそろそろですし」

「アーテミーの町長か……」


 エイヴスではアーテミーが国の中心と聞いたし、町長となればロウディシアで言えば国を治める者……つまり星定議会の長であるヨーゼフ=カーファ氏くらいのポジションなのだろう。

 ただ、世界の規模感からして、どうも農村グロリヤの村長と同じくらいのイメージしか湧かない。

 面談するというなら、そのくらいの方が緊張感も少なくて済むけれど。


「話は基本的に私の方で進めますから、皆さんは気になることがあれば質問する感じで大丈夫ですよ」

「はは……助かります」


 異世界の人とどのようなスタンスで対話すべきか、早速勉強させてもらうことにしよう。


「では、拠点を出て町長の家に出向きましょうか」


 メルシオネ教官の言葉にオレたちは頷き、行動を開始した。

 バランチーム救出……そしてエイヴスにおける問題解決の第一歩が、ここから始まる。

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