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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
第一の巡礼 悠久原生世界_エイヴス
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84.帰ってきた想造者

 クレイス原生林を抜け、古都アーテミーへ戻ってきたオレたち。

 昼下がりということもあって、それなりに多くの住民が街道を行き交っている。

 その人たちをよくよく観察してみると、耳の少し長い人も少なからずいた。


「普通に街で生活してるエルフの人たちもいるわけか」

「みたいねえ。森に住んでいるエルフに会わなかったのは良かったわ」

「そっちは排他的って言ってたもんな」


 普遍種と交流することを良しとするエルフと、拒否して森に住み続けるエルフ。

 エイヴスにおけるエルフは主にその二派がいるという感じかな。


「しかし、森のエルフはどの辺りに住んでたのか。オレたち原生林をどれくらい探索したかも把握してないんだよな」

『あの原生林はかなりの規模ですよ。エイヴスはそこ、アーテミーが唯一の都市で、後は自然がそのまま残る島国ということですから。皆さんが踏み入ったのはせいぜい原生林の一割に満たないほどかと』

「そんなもんなのか……。ならエルフに遭遇しなかったのも不思議じゃないな」

『ええ。あと一時間ほど進んでいたら可能性はあったかもしれませんが』


 討伐目標をさっさと見つけてしまえたのは、そういう意味でもラッキーだったかもしれない。

 少し街を歩き、オレたちは拠点の建物へと戻ってきた。

 再度眺めてみると、拠点は街並みに上手く溶け込んでいるというか、それと分からないような見た目になっている。

 街の風景を邪魔しないよう、配慮しているようだ。初めて来たイマジネーターにとっては判別し辛いが、まあ仕方ない。

 扉を開けて中に入り、ホールに設置されている転移門の前へ立つ。

 そして全員、コネクターを取り出して元の世界へ接続を開始した。


 ――早くこの感覚、慣れたいもんだな。


 まるで自分の体が霧散したかのような気味の悪さ。

 少しずつ慣れてきているかも……とは思うのだが、やはりまだ平気ではいられない感覚だ。

 数十秒ほどそれを我慢して、ようやく肉体の転移が終わる。

 アルカード星書院の転送室――ロウディシアへの帰還、完了だ。


『ワールドスクリプト:エイヴスからの転送完了。お疲れ様でした』


 アナウンスを聞き流しつつ、オレたちは転送室を出る。

 壁掛け時計の時刻を見ると、午後三時十分。まだ活動には余裕のある時間なので、生徒の姿はそれなりにあった。

 ここにいる皆は今から頑張るところなんだろうが、大仕事をやり遂せたオレたちは、お先に失礼させてもらうとしよう。

 星書院を後にして、定刻にやって来た列車に乗り込む。

 今回の遠征は疲れが溜まったのだろう、イオナやルカは列車に揺られながら夢の中へ落ちていたのだった。


「ふー、よく寝たあ」


 到着後、ホームに降りたルカは大きく伸びをする。その姿を猫みたいだな、などと思ったり。

 時刻は午後四時近く。報告を入れたら夕食まで好きに過ごせるな。

 A棟の依頼掲示室に向かうと、フィンクスさんは机に両腕を乗せながら、眠たそうに欠伸をしていた。

 皆が一通り依頼を請けた後のこの時間が、多分一番暇なんだろう。


「……お? ダインくんらか。どーも」

「どうも、フィンクスさん。……昨日請けた依頼、無事に終わらせてきましたよ」

「ハハ、流石やねェ。君らやったら問題ないと思っとったわ」

「それ、期待され過ぎじゃないかって感じましたけどね……」


 んなことないとフィンクスさんは否定するが、入学二週間目の新米があんな魔物を問題なく倒せるとはちょっと思われたくない。

 過小評価はもちろん嫌だが、過大評価されるのも大変に違いないのだから。


「そしたら、ほい。報酬はキッチリ振り込んどいたから」

「ありがとうございます」


 オレのポータルバンクへ報酬六千ペンドが入ってくるので、仲間で均等に分ける。

 だんだんこの動作も手慣れてきた。


「昨日の今日でやってくれたんもありがたいわ。多分、タイミング的にもバッチシなんちゃうかな?」

「タイミング?」

「せや。……ま、近いうちに分かると思うで」

「はあ……」


 依頼をこなした後でも、詳細はまだフィンクスさんの口からは説明出来ないらしい。

 まあ、この人もあくまで生徒だものな。追及しても答えは返せないだろうし、止めておこう。


「そない怪訝そうにせんでもええ。ホンマにもうすぐ、分かるやろうから」


 最後にフィンクスさんはそう言って、オレたちを笑顔で見送ったのだった。


「……結局、最初から最後まで変な依頼だったね」


 A棟を出てから、ルカが不服そうに言う。

 オレも、フィンクスさんからネタバラシがあってもいいんじゃないかと思っていたし、肩透かし感はあった。

 この依頼に何らかの意図があるのは確実で。じゃあその意図はいつ分かるのか。

 ホンマにもうすぐ、と彼は口にしたが、そのもうすぐとはいつのことなのか……。


「評点トップのチームっていう謎の条件付きで、依頼主の素性は謎で、オマケに倒した魔物の正体も謎。謎だらけよねえ」

「ホントに。せめてボクらが討伐した魔物が何だったのかは知りたいなあ。気味悪かったし……」


 ……そう。あの異様な魔物は何だったのか。一番知りたいのはその謎かもしれない。

 明らかに通常の魔物とは異なる存在。どうしてオレは、あれをあってはならないモノだと直観したのか……。


「――アレは、義骸イレギュラーという存在だ」


 ――え?


 突然かけられたその言葉に、その声に……オレは驚く。

 それが謎の魔物に対する説明だったから? いや、それだけではない。


「あれ? ……そんな」


 目の前に現れたその人物の姿を見て、ルカも驚愕に固まってしまう。

 ああ、無理からぬことだ。オレもこんなことがあるなんて、予期していなかったのだから――。


「……もしかして、貴方は」


 それが、あの時と同じ台詞だということに、オレは恥ずかしながら後から気付いた。

 しかし、その人は愉快そうに笑ってから、過去をなぞる様にこう告げたのだ。


「ああ、そうだよ――」


 ふわりと風になびく、金色の髪。

 美しき戦乙女と形容するのが相応しいような、その女性は。


「――イマジネーターさ」


 オレたちが幼い頃に出会ったあのイマジネーターに、相違なかった。

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