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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
第一の巡礼 悠久原生世界_エイヴス
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79.二度目の星書院

 アトモス学園から列車に乗ること三十分。

 オレたちは、四日ぶりに星々の書庫――アルカード星書院へとやって来た。

 ライセンスをかざし、ゲートを抜けて受付前へ。先週は職員の姿しかなかったが、今日は学園に在籍する上級生の姿もちらほら見える。

 皆、ワールドスクリプトへの遠征に向かうところなわけだ。


「こうしてみると、星書院も忙しいんだねえ」


 エスカーが、慌ただしく動き回る職員を観察しながら呟く。

 各イマジネーターの申請を受け付け、ランクのチェックからワールドスクリプトの準備、転送作業とやることは多い。

 休みが明けて申請に来る人が増えれば、ドタバタするのは必定か。


「しかし、エイヴスか……事前にちょっと調べてはみたけど、かなり昔から友好世界に認定されてるところなんだな?」

『ええ。もう四十年以上前に発見され、比較的早期に協定を締結、尚且つずっと平穏な状態が続いている世界です。異世界は危険度が変動しやすく、終局を迎えてしまうものもそれなりにあるのですが、エイヴスは現在のところ『注意』ランクとなっていますね』


 オレの問いに、マルがすぐさま答えてくれる。

 四十年以上も友好関係にある平和な異世界、か。

 そこに危険な魔物が出現したというなら、なるほど急ぎ対処したい案件にはなる。


『ちなみに、四日前に遠征したコリンシアも二十年以上前に発見された世界ですが、ランクは『平和』扱いです。エイヴスは前回より強い魔物が出現すると考えた方が良いかと』

「ああ、幸い討伐すべき魔物は一体だけだし、慎重に探させてもらうさ」


 依頼を複数請けていたりすると、大胆に動いて対象の魔物たちを探し回るのが効率的だろうが、今回は別だ。

 初めて訪れる場所ということもあるし、危険度もワンランク上。細心の注意を払い、エイヴスの地理を把握しながら依頼をこなしたい。

 受付の女性に、エイヴスへ向かう申請を出してから、オレたちはしばらく近くのソファに座って待機する。

 これも初めて来たときは意識しなかったが、イマジネーターがなるべく快適に待てるよう、ソファがあったり軽食をとれるスペースがあったりするようだ。

 司書のアンナさんは奥の操作室でずっと作業をしているとのことだった。この星書院のトップにあたる役職なので、転送の権限は彼女にあり、最後のボタンか何かも彼女が操作するのが決まりになっているらしい。

 責任の大きな仕事だ。


「そういや、アンナさんって珍しいよね。長命種の人はあんまり都会が好きじゃないみたいなのに」

「ああ……エルフの里って結構閉鎖的なんだっけか」


 オレが言うと、イオナは頷いて、


「昔から外との交流には消極的な人が多いから、ハーフの人でも見かけるのは少ないもんね。昔から司書をやってくれてるってメルシオネ教官は話してたけど、どういう経緯だったんだろうなあ」

「私も少し気になるわ。機会があれば聞いてみたいものねえ……」


 閉鎖的な種族の人が、異世界への道を繋ぐ仕事をしてるってことだもんな。どういう巡り合わせだったのか、確かに興味はある。

 まあ、まだ一度話しただけの関係性だ。もっとイマジネーターとして活動して、交流を深めていったら話を聞く機会も訪れるかもしれない。


「教官も写真が趣味だって知られてたし、話好きではあるのかも」

「仲良くなったら、楽しくお話出来るようになるかもしれないわねえ」


 実際そうなったとして、仕事時間に話しかけるような迷惑はかけないようにしてほしいとは思うが。

 そんな話をしているうちに、申請していた転送が承認され、名前が呼ばれる。

 初期ランクの五級ライセンス所持者だけは簡単に異世界遠征の注意点を列挙され、それが済んでから転送室への案内という流れだった。


「なお、本日ワールドスクリプト:エイヴスには他のイマジネーターも遠征に向かっております。その点ご了承ください」

「あ……そうなんですね」


 遠征先で不慮の衝突――たとえば同じ魔物を討伐しようとしていた者同士が誤爆してしまうなど――が起きにくいよう、遠征先に他のイマジネーターがいるかどうかを毎回通知してくれるらしい。

 必要があれば、相手が秘匿を希望していない限りは人物の特定も出来るようで、一応誰がいるのかを聞いてみると、


「少々お待ちください。……現在エイヴスへ遠征しているのはバラン=カーファ様ほか四名のチームとのことです」

「……って、またかち合うのかよ」


 お馴染みの名前が出てきて、オレも他のメンバーも思わず溜め息や苦笑いが漏れてしまうのだった。

 やり取りが終わり、オレたちは受付を過ぎて奥にある転送室への扉を開く。

 書物と光の漂う、荘厳な空間――ここに来るのは二度目だが、やはり息を呑むような光景だ。

 この空間に、無数の世界が、その入口が収蔵されている……。


「ここにある無数の本の中に、平和な世界もあればすっごく危険な世界もあるって思うと、ドキドキするなあ」


 本棚を見上げながら、そう話すルカ。彼女の言うドキドキとは、未知の世界への好奇心でもあり、また未知の脅威への恐怖心でもあるのだろう。

 知らないということには、そういう二つの側面があるものだ。

 ……やがて、一冊の本が転移門のところへ下りてきた。

 これが異世界エイヴスのワールドスクリプト……。


『ワールドスクリプト:エイヴス、準備完了しました。イマジネーターの皆さんはいつでも出発可能です』


 お決まりなのだろう、前回聞いたのと同様のアナウンスが室内に響く。

 オレたちは互いに目配せをして、テスタマイザーからコネクターを取り出した。


「……よし、そんじゃ向かうとしよう。異世界エイヴスへ」


 目の前に浮かぶ本めがけ、オレはコネクターを突きつけるように差し出す。

 細い光の筋がコネクターとワールドスクリプトを繋ぎ、そしてオレの体は粒子へ変換され、異世界へと転送されてゆくのだった――。


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