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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
巡礼の支度 想造育成機関_アトモス学園
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68.心境は複雑

 魔術工房を出た後、オレたちは昼食までの間のんびりとキャンパス内を散策して過ごした。

 普段は何気なく移動しているだけの前庭なども、適度な感覚でベンチが設置されたりしていて小休憩に使えることに気付かされる。

 手入れされた花壇の花々を眺めながら、サンドイッチとコーヒーでランチというのも悪くないのかもしれない。

 入学式を行ったホールは、平時は閉め切られているようで生徒は立ち入れなかった。何かしらイベントがあるときはそこが使われるのだが、時には有名歌手が歌いに来たこともあるのだとか。学校の行事以外でそんな使われ方もするんだなと驚かされる。イマジネーターへの福利厚生の一環、なのかな。

 そんなこんなで時刻も正午を回り、オレたちは一路食堂へと向かう。

 部活の勧誘会は午後一時からということもあって、休みの今日でも早めに昼食をとりに来ている人は多かった。

 幸い、いつもの席は埋まっていなかったので、オレとルカはそこを確保して料理を選ぶのだった。


「寮生活なんて初めてだけど、ずっと学園の中だからホントに休みって感覚にはなり辛いなあ」

「言えてる。ここに来るまでの休みと言えば、家で家族と団らんしたり、買い物に出たりだったしさ。……けど、別にいつでも街には行っていいみたいだから、慣れてきたら以前のように過ごしたりしてるのかもな」

「あは、そうかも」


 まだ入りたてだからあまり遠出しないようにと勝手に思っているだけで、多分そのうち普通に街へ繰り出すようになる。

 オンオフはしっかり切り替えて生活していきたいものだ。


「……でもさ」

「ん?」

「こうして一日中一緒にいると、その……デートしてるみたいじゃない?」

「それは――」


 無いだろ、と言いかけたところでハッとする。

 ほとんど無意識にルカをまた男の子扱いしかけていることに。

 傍から見れば、朝からずっと二人きりでいる男女はカップルのように見えるかもしれない。

 ルカの服装は相変わらず男モノっぽくはあるのだが。


「……バカ言ってるのは構わんけど、そろそろ来るぞ」

「む、来るって何がさ」


 フォークをこちらへ向けながら、不服そうにルカが言う。

 そんな彼女の背後から、


「やっほー。換金作業お疲れさまでした」


 ほら、来た。


「あ――イオナ」

「今日は上級生の人たちも早いね。席取ってくれててありがと」


 言うが早いか、イオナはオレの隣の席に腰を下ろす。それを見てルカは更に顔をしかめた。


「別に、皆のために取ってたわけじゃ」

「ま、結果的に皆集まるだろうから同じさ」


 そう話している間にも、フェイやエスカーがやって来る。

 結局、ものの数分でいつものメンバーが揃うのだった。


「ちぇっ」


 ルカは唇を尖らせて悔しそうにする。

 ……さっきの言葉、冗談じゃなかったのか? ううむ、まさかなあ。


「しかし、素材は思ったほどの金額にならなかったね?」

「低ランクの魔物ばっかりだったんだ、仕方ないさ。ああそうだ、お前が納得する明細もちゃんとくれたぜ」

「ん? ……ああ、こんな風にレシートくれるんだ」


 商工会で貰った素材売却時のレシートをエスカーに渡す。口元に手を当ててそれにしばらく視線を落としていた彼は、最後にこんなもんかと溜め息を吐いてレシートを返してきたのだった。


「上位になりゃ売却単価も上がってくって話だからさ。まあ頑張ろう」

「そうだねえ。良い生活するために、若いうちに苦労しとかなきゃ」


 エスカーは肩を竦めながら鼻で笑った。


「ところで、皆はこの後部活動の勧誘会に行ったりするのかしら?」


 切り出したのはフェイだ。ここでもルカは、まずいぞというような顔をしている。


「俺はパスだね。休めるときは好きに過ごしたい派だし、さして興味のあるものもなさそうだから」

「私は行くつもりだよ。入らないにしても、知っておくのは悪くないかなって」

「あら。私も行ってみようと思ってたから、ご一緒させてもらいたいわ」


 ……となると、エスカー以外は全員顔を出してみようということらしい。

 とりあえず話の成行を見守っていたが、


「ルカとダインは?」


 イオナがそう振ってきたので、


「ああ、オレたちも行ってみる予定だ。イオナと同じく、入るかどうかはさておきな」


 素直にそう告げることにした。


「じゃ、四人一緒に見に行こ! 入れそうな部活があったらいいけどなあ」

「はあ……そうだね、皆で楽しむぞっ」


 気持ちを切り替えるように声を大きくして、ルカは拳を突き上げる。

 さっきの発言があった手前、オレはホッとするやら何やら、複雑な心境になるのだった。

 ざわついたランチタイムが終わると、エスカーだけは自室に戻っていき、オレたち四人はそのまま演習場へ向かう運びになる。

 上級生たちはさっさと食事を済ませていなくなっており、先に会場で新入生たちを手ぐすね引いて待っているようだ。


「確か、今ある部活は四つだったよね?」

「ああ。ただ、朝ちらっと見たときに生徒会もブースを準備してたから、紹介はそれを含めて五つあるだろうな」

「シエラさんか。うーん、そういうお仕事にも興味が無くはないけど……イマジネーター活動と両立する自信がないからなあ」


 イオナ、生徒会自体には興味があったのか。初日にシエラさんから誘われたとき、遠慮気味だったから苦手かと思っていたけれど。

 ただあの人の勢いに圧倒されていただけ、という感じだったのかもな。


「ま、全部見てから考えりゃいいさ……よし、到着だ」


 辿り着いた演習場には五つのテントが左右に設営されており、真ん中の奥側には舞台が設えられている。

 それぞれの部活が一つずつ、あの舞台に上がって活動内容を紹介していくのだろう。


「上級生たちの部活動紹介、拝見させてもらうとしようぜ」


 集まった数多くの新入生たちに混じり、オレたちもその始まりの時を待つのだった。


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