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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
巡礼の支度 想造育成機関_アトモス学園
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63.目標追跡

 メルシオネ教官が、午前の部終了時点での中間報告を発表するのを聞いてから、オレたちはいち早く拠点を発った。

 発表によると、午前中にブラッドベアを討伐出来たのはバランチームのみ。

 そして指定時間の正午までに一時帰還を果たせたのは、オレたちのチームのみ。

 昼食の出来に関しては、まだ調理中のチームもあったので判定中だが、少なくともバランチームよりはオレたちの方が遥か上と見ていい。

 いつもオレたち――とりわけオレを目の敵にしているバランと、今のところは互角かそれ以上かなという印象だ。


「後は無事にブラッドベアを見つけて、討伐出来るかだな」

「十匹の討伐って依頼が来たワケだし、森を歩いてればすぐ出くわすと思ってたんだけどなあ」


 頭の後ろで腕を組みながら、ルカが残念そうに言う。

 彼女も午前中に討伐を終わらせようという意気だったしな。食材調達メインで捜索していたとはいえ、今まで熊らしき存在の影すら目にしていないのはむず痒いのだろう。


「動物の熊なら臆病だから、人の気配がしたら離れていきそうだけど、魔物の場合は分からないねえ。俺たちこそが最上の餌なんだろうし」

「怖いこと言うな……まあでも、実際その通りだ。人から逃げていってるとは思いたくないところだが」


 バランチームはどの辺りでブラッドベアを発見したのやら。

 ……あいつには貸しがあったし、ここらで返してもらうのが良かったか? いや、何のことだとすっ呆けられる可能性もあったかもしれない。

 案外義理堅い奴な気もしているけれど……あくまでオレの主観だしな。


「――ん?」


 ふと、歩く先に何かが落ちているのに気付く。

 地面は落ち葉ばかりなので、他のものがあれば何となく目立って見えるのだ。


「こいつは……」


 近づいたオレたちは、それが猪の死骸であることを認める。

 その死骸には、鋭い爪で斬り裂かれた深い傷が刻まれ、腹部は食い散らかされていた。


「ねえ、これって」

「ああ……十中八九間違いないだろう」


 魔物ではないただの猪とはいえ、一撃でこれだけの傷を負わせて仕留めている。

 腹部に突き立てられた牙の痕も併せて、襲撃したのが相当大柄なヤツだったのは確かだ。

 この大きさ、動物の熊ではない。


「まだ血が固まりきってないし、この近くにいそうだねえ……目標のブラッドベア」

「……だな」


 獲物を狩った以上、この場から離れていっていることだろうが、そこまで遠のいてはいないはず。

 どうにかして見つけ出したいところだ。


「マル、反応の探知を頼めるか?」

『言われなくともやってます。生体反応は細かいのがちらほらあるので、マナ反応とも併用しての探知を……ちょっとだけ時間をください』

「分かった。その間にルカ、能力でマナの流れを確認してほしい」

「オッケー、やってみる」


 オレの指示を受け、ルカはすぐに限定スキルを行使する。

 使用感はもちろん本人にしか分からないことだが、その目に薄っすら魔力の光が見えることから、視覚的にマナを捉えられるようになるのだろう。

 それがどこまでハッキリ映るか、だ。


「……んん……」


 しばらくゆっくりと時計回りに身体を動かしていったルカは、オレたちが進んでいた方向より少し西側を向いたところで、


「……こっち側に、移動した痕跡があるかも」


 そう報告して、多分ねと付け足した。まだ使いこなせていない能力なので、自信はあまりないようだ。

 ただ、方角に目星を付けられただけでも大きい。


「サンキュ、ルカ。確証がなくても、とりあえず道を絞れたなら……」


 その道をしっかり調べ、ブラッドベアの痕跡を更に見つけられれば可能性は高まる。


「……あれ、血だね」


 一番に発見したのはエスカーだった。落ち葉の上に、僅かだが血が付着している……よく気付いたものだ。

 その発見の後すぐに、


『微弱ですが、マナ反応が北西方角に動いているのが確認出来ます。ルカさんの言う通りの方角ですね』


 マルからの報告もあり、全ての情報が一つの道を指し示した。

 これだけの材料が揃えば、向かう方角は北西で確定だろう。


「よし……ブラッドベアを追跡するぞ」


 オレの言葉に全員が頷き、歩き出す。

 そして先へと進むこと十分ほど。……とうとう探していたその影を、捉えることが叶うのだった。


「いた……!」


 声を抑えはしたものの、興奮を隠しきれない感じでルカが言う。

 三メートルに届くかという巨大な体躯、まるで血のように紅い体毛、先ほどの獲物のものらしき血が付いた鋭い爪……。

 あいつが、ブラッドベアだ。


「まだこっちには気付いてないのかしら」

「多分。アドバンテージを取りたいもんだが……」


 オレの呟きに、エスカーがポンと肩を叩いてきて、


「一打目は任せなよ」


 と言うので、オレはその言葉を信用することにした。

 軽やかに、そして静かに高所をとったエスカーは、そのままブラッドベアに狙いを澄ませる。


「――氷刃」


 刃は、発動後も時間をかけてその体積を大きくしていった。

 エスカーの能力は、仕込みの時間があれば一打を強力なものにも出来るようだ。

 オリエンテーションの際にも、時間差で大きな氷刃を敵に落としていたしな。


『グオオ……!?』


 片手剣ほどの大きさに成長した氷刃を飛ばし、それは見事ブラッドベアの頭部に命中する。

 しかし、刃はぶつかった瞬間に砕けてしまい、僅かな傷を負わせるに留まった。


「ひゅう、硬いね」


 出血はしているものの、薄皮を裂いたという程度だ。ダメージを与えたとは言えない。

 エスカーの一撃でこれなら、中々の強敵だろうな。

 ……だが。


「――ブライトレイ!」


 続けざま、イオナの攻撃がブラッドベアに襲い掛かる。

 細く凝縮された光線。危険を察した敵は素早く身を捩じるが、左の肩口あたりに光線が直撃し、貫通した。


『グアオォッ!』


 物理攻撃が通り辛ければ、魔法攻撃で。

 フェイの補助もあったので、イオナのブラストレイは効果抜群だった。

 噴き出す血を止めようとするように、傷口を押さえるブラッドベア。

 ヤツは息を荒げながらこちらを睨み、そして咆哮した。


『オオオォオンッ!!』


 空気が震え、体がビリビリ痺れる感覚に陥る。

 吼えただけでこのプレッシャーとは驚きだが、気圧されてはいられない。


「先手はとった……この勢いのまま勝つぞ!」


 ここからは真っ向勝負。

 どれだけ強力な魔物であろうが、必ず勝利をもぎ取ってみせる。

 

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