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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
巡礼の支度 想造育成機関_アトモス学園
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53.そして帰り着く

 森林から農村グロリヤへと帰還したオレたちは、真っ直ぐ村長宅へと向かった。

 出発時は綺麗だった服もすっかり汚れていたので、上がり込むのは憚られたのだが、村長はまるで気にせずにオレたちを招き入れてくれた。

 再び応接室にテーブルを挟んで向かい合い、依頼の達成を報告する。違うところと言えば、家事の落ち着いた奥さんも同席していたことくらいか。


「いや、本当に助かったわい! 帰りもこんなに早く、それに負傷もしとらんとは」

「この人、ずっと心配して家の中を歩き回ってたんですよ」

「これ、それは言わんでもいいじゃろう」


 奥さんの暴露に、村長はタジタジの様子だった。きっと普段から尻に敷かれているんだろうな。


「しかし、ボス個体を中心とした群れが出来上がっておったとは。それで継続的に畑が荒らされておったんじゃろうな」

「そのボスを倒したんで、被害はこれ以上出ないんじゃないかと思います。少なくとも、ファットラットによる被害は」

「うむ、そうじゃのう。改めて礼を言わせてもらおう……感謝しておる、イマジネーターさんがた」


 村長はぺこりと頭を下げる。……村の一番偉い人にこんなことをされると流石に畏れ多いが。

 今はそれだけのことをしたと、誇りに思っておくとしようか。

 その後、村長と奥さんはお祝いに食事をとっていかないかと提案してくれたのだが、生憎今日は訓練の兼ね合いで依頼をしに来ている。

 時計を見ると、既に時刻は三時半になろうかというところだったし、すぐに帰らなければ期限に間に合いそうもなかった。

 事情を説明すると、村長はすぐに納得してくれる。そして、今度くるときには必ずごちそうしようと約束してくれた。

 とても優しい人たちで心が温まる。ぜひまた来て、村の食材で作った美味しい料理をいただこうとオレは心に誓うのだった。


「よし……学園へ帰還だ」

「凱旋だね!」


 ルカがにっこりと笑う。凱旋とまでは言えるか分からないが、大仕事をやり遂げたのはまあ確かだろう。

 これだけ頑張ったなら、他のチームよりは上に立っていたいと思う。

 村を発ったオレたちは早歩きで駅に向かい、ちょうどホームに停まっていた列車に飛び乗る。その列車がグロリヤ駅を出発したのは午後三時四十分。乗り継ぎが上手くいっても、学園に帰り着くのはギリギリだ。

 少しだけ焦りを感じながらも、後は大人しく列車に揺られるしかない。大丈夫だろと自分に言い聞かせながら、オレたちは駄弁り、或いは車窓からの景色に目を向け過ごすのだった。


「……到着!」


 学園前の駅に着き、列車を降りたイオナの開口一番の言葉だった。

 テスタマイザーの時計を見ると、時刻は四時五十分になっている。


「急ぐぞ!」


 オレが発破をかけ、全員でどたどたとキャンパス内を走り抜ける。

 A棟に入り、階段を駆け上がり、そして三階の依頼掲示室へと飛び込んだ。


「はあ、間に合った!」


 時計を見ながらの突入。時刻は四時五十五分。

 期限が午後五時なので、ギリギリ五分前に戻ってこれたわけだ。……危なかった。


「ダインチームですね、おかえりなさい。お疲れ様です……と労いたいところですが、まずは報告を」

「そ、そうか……!」


 メルシオネ教官に言われてハッとする。完了報告を終わらせていないから、急ぎ受付へ……フィンクスさんに報告する必要があるのだ。


「というか、報告自体はテスタマイザーでしたら良かったんじゃ?」

「気付いたら言ってくれよ、エスカー!」


 ゴメンゴメンと笑うエスカー。こいつ、オレが焦るところを期待してたとか言わないよな?

 いずれにしても、帰還が間に合ってなければ報告を先にしていても訓練としては駄目だっただろうし、今もたつくかどうかは大した影響もないんだけどさ。


「ほい、完了報告ちゃんと受け付けたで。……お、これは凄いなァ」


 テスタマイザーの記録を確認したフィンクスさんがちょっとだけ驚いてくれる。

 討伐したファットラット十匹の内、一匹が強い個体であることも記録に残っているのだ。


「教官、ちょいこれ見てみ」

「どうしました?」


 フィンクスさんがメルシオネ教官を呼び、その記録を確認する。

 すると珍しく、教官は目を大きく――日頃の彼からすれば大きく見開いて、驚きを示した。


「ほう……これはボス級の個体ですね。入学してまだ四日目のイマジネーターには荷が重かったはずですが」

「強かったけど、何とか倒しましたよ。群れを形成してましたし、逃げるのも難しそうだったんで」

「ふふ、やはりダインチーム。中々やりますね」


 やはり、という副詞を付けられると胸がドキリとする。

 メルシオネ教官は、どうもオレたちのチームを結構評価してくれているらしい。


「この内容なら、時間いっぱいになったのも頷けます。元々農村への移動にもかなりかかりますし」

「往復だけで二時間以上かかってますからねー」


 イオナが言いながら頷く。

 実質、ファットラットを倒すため森を探索していたのは四十分程度だったわけだ。移動時間の方が長いな。


「実のところ、他チームは既に報告まで終わって解散していて、皆さんは最後のチームなのですが……ふむ。農村の方から感謝を告げる連絡も来ていますし、いいでしょう。依頼の評点を一点追加することにします」

「え――追加?」


 一瞬、耳を疑った。

 まさか、そんなことを言われるとまでは予想していなかったからだ。

 受注段階でも、他の依頼より多い三点だった。それがプラスされ、四点になる……。


「やった! さっすが教官!」


 ルカが喜びを爆発させ、両手を挙げて飛び跳ねた。

 他のメンバーも、そこまで大げさでは無かったものの、皆嬉しそうな反応だ。


「報酬金は依頼者から支払われるものなので固定ですが、評点は学園で設定されているものですからね。皆さんが討伐したボスラットは一ツ星依頼の範疇からは少し外れている……そう判断しての正当な修正ですよ」

「はは……ありがとうございます、メルシオネ教官」


 一ツ星のレベルを超えた魔物を、オレたちは討伐し遂せたのだ。

 教官からお墨付きを貰えたことで、更に嬉しくなった。


「初めての依頼、この上ない成功で教える立場としても鼻が高いですよ。……とにかく、長時間お疲れさまでした。今日はこの場で解散としますので、後は休息をとってください」

「はい、お疲れさまでした!」


 イオナが元気よく言い、オレたちもそれに倣ってからお辞儀をする。

 緊張の中臨んだイマジネーターとしての初仕事。

 それはこうして大成功な結末で、終わりを迎えたのだった……。


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