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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
巡礼の支度 想造育成機関_アトモス学園
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50.巨大鼠との戦い②

「……これで片付いたな。お疲れさん」


 戦闘を終え、散開していたオレたちは一ヶ所に集合する。

 仲間の元へ歩きつつ、収集品獲得を選択してみると、ちゃんと今倒した三匹の素材とマナとが収集された。

 ファットラットの毛皮が二つ、牙が一つ……と。ある程度場所が離れても、しっかり収集してくれるみたいだな。


「結構手こずっちゃったや」

「昨日のウルフとかさっきのポイズンアントよりも強かったね。ちょっとヒヤヒヤしちゃった」


 敵の強さは、これまでに戦った魔物たち――と言ってもほんの数種類だが――より攻防速の全てが上だった。

 イマジネート能力を単純に使うだけでは大きなダメージを与えられない。自分たちがまだまだ未熟な証左でもあるが、それはともかく戦術はしっかり考えないといけなさそうだ。


「目標としてはあと七匹。進むべき方向も間違っちゃいなさそうだし、奥にはまだいるんだろうが……」

「あの魔物たち、適度に連携をとってたねえ。群れを形成しているとしたら、その数がいくらなのかが気になるところかな」


 エスカーが冷静に分析してくれる。

 そう、倒す必要があるのは残り七匹なのだが、進んだ先にどれくらいのファットラットが潜んでいるのかは、行ってみないと分からない。

 ひょっとすると、十匹以上の大群がいる可能性だってあるのだ。あの強さの奴が二桁にもなる群れを作っているとこちらがかなり不利になるし、より一層用心して進むべきだろう。

 出来ることなら、戦闘になる前に群れの数を把握しておきたいところだ。


「苦戦する状況だと、フェイの補助魔法が重要になりそうだな。さっきもルカにかけてたけど、前と後じゃ威力が段違いだったし」

「うん。あんなデカいのを吹っ飛ばせちゃったから正直ビックリしちゃった。凄いよ、フェイ」

「うふふ、そう言って貰えると嬉しいわ。次からも的確なタイミングで補助をかけられたらいいのだけれど」

「ああ、頼りにしてる」


 オレの言葉に、フェイは微笑で返してくれた。


「さて……進みたいところではあるが」


 森林の更に奥。嫌な気配は更に強まっている。

 けれど、その気配にまだ動きがあるような感覚があった。

 ……一つのグループは退治したものの、偵察部隊のような奴らは他にもいるのか。


「……なあルカ、お前って確かマナの流れを読める限定スキルがあったんだっけか」

「あ、そうだね。まだ練度が全然だから大雑把なものだけど……」

「近くにさっきの残党がいる気がする。感知出来たりしないか?」

「了解、やってみるよ」


 ルカは静かに目を閉じ、精神を集中させる。

 その間、彼の髪が僅かになびいた感じがした。体から魔力が滲み出ているのだろう。


「――ホントに近くのことしか掴めないけど……」


 言いながら、ルカは前方やや右側を指差す。


「あの辺りに、二つくらいマナが滞留しているのを感じる」

「オッケー。良い能力だ」

「う、うん。ありがと」


 照れた顔を浮かべるルカを横目に、オレはなるべく気配を殺しながら近づいていく。

 エスカーもオレの動きに合わせ、木の上に登り迎撃態勢をとってくれた。


 ――そこか。


 ここまで接近すれば、オレにも魔物の存在を察知出来た。

 無策に飛び込むことはせず、ここは魔法の講義での経験を活かす。


「――ダーク!」


 闇属性のランク一魔法、ダーク。

 それはオレのイマジネート能力に似て、黒い霧を生じさせる魔法だった。

 霧は相手へのダメージもあるにはあるが、どちらかと言えば視界を奪う効果の方が優秀だ。

 更に言えば、闇属性はオレと相性がいい。


『キキィ……!?』


 突然周囲が闇に覆われ、木陰に隠れていたファットラットは混乱して鳴き声を上げる。

 敵の数は二匹――あちらが動けない間に、オレは先手を打つ。


「はあぁッ!」


 黒き両手剣での一閃。視界が真っ暗闇になっていたファットラットには避けることなど叶わなかった。

 頭部を切断、とまではいかなかったものの、斬撃は首を深々と斬り裂き、ファットラットは鮮血を迸らせる。

 しばらく前脚をジタバタとさせたそいつは、やがて動きを鈍らせながらぐらりと傾いで、地面に倒れた。

 これで一匹。先制攻撃で十分にアドバンテージが取れたな。


「――氷弾」


 ダークによる闇が晴れたところに、エスカーの技が飛び込んでいく。

 今まで使っていた刃や矢と違い、細かな氷の粒が大量にファットラットへ襲い掛かっていった。

 大きな威力は無いものの、無数の氷粒がファットラットの体を傷つけていく。

 度重なる攻撃に為す術もない敵は、これですっかりパニック状態になった。


『キイィ……!』


 とにかく危険を退けようと、ファットラットは大振りに前脚を動かした。

 オレが後方へ飛び退くと、奴は攻撃に転じるわけでもなく身を翻す。


「逃げるつもりだな……!」


 出来ればここで勝負を付けたかったが、向こうも命懸けの逃走だ、かなりの速度で転がっていく。


「追うしかないか……周囲には気を付けながら進むぞ!」

「オッケー!」


 倒した一匹の素材回収は忘れずにしておいて、オレたちは逃げ去るファットラットの後を追う。

 エスカーの攻撃が効いているのか、敵の移動速度はだんだんと遅くなっている様子だった。


「ダイン、前!」


 ルカが前方を指差しながら声を上げる。

 ファットラットが行き着いた先――そこにはやはりというべきか、奴の仲間が群れを成していた。


「……多いな」


 巨樹の下、陣取っていたファットラットの数は五。逃げ延びた奴も含めれば、合計六匹になる。

 討伐数としてはピッタリの数なのだが、オレたちの人数よりも多いのは厄介だな。

 ……それに。


「どうもヤバそうな奴がいるね?」


 エスカーが見据える先……群れの中央に、他の個体よりも一回り大きなファットラットがいた。

 体長二メートルほどはあろうかという、恐らくは群れのボスがど真ん中で睨みを利かせている。

 オレたちから逃げたファットラットは、そのボスの元へとゆっくり向かっていくのだった。


『……キィッ!?』


 その直後。

 悲鳴とともに、傷ついたファットラットは物凄い勢いで吹っ飛ばされた。

 何が起きたのかを理解するまでに少し時間がかかってしまったが――ボス個体がそいつを薙ぎ払ったのだ。

 それは多分、敗走してきた仲間への懲罰……死という最上級の罰だった。


「マジか……あのボスはかなり強そうだ」

「だろうね。そしてきっと、こいつがいるせいで村の畑は継続して襲われてる」

「ボスの指示でマナを集めてるってわけだね……!」


 エスカーの推測に、イオナが同意を示す。

 あの巨大なファットラットに他の個体が付き従っているところからして、それで間違いないだろう。

 ここにいる奴らを全て倒せば依頼の目的は完璧に達成されるわけだが、しかし。

 ボス級個体というのは些か一ツ星依頼の範囲を超えている気もするな……!


「どうあれ、あちらさんも敵意は剥き出しだ……今更逃げるわけにもいかねえ。ここでキッチリ倒して依頼を完遂するぞ、皆!」

「「おおッ!」」


 まさにボス戦、強敵だが負けるわけにはいかない。

 村のためにも、オレたち自身のためにも、絶対に勝利を掴んでみせる。


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