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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
巡礼の支度 想造育成機関_アトモス学園
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48.森の中を進んで

 森の中に踏み入ってからまだ五分ほどだが、周囲の木々はどんどんと数を増やしており、晴空はもう上部の枝葉によってかなり遮られている。

 鬱蒼とした森林……これでもまだシャロー森林の入口でしかないのは恐ろしい限りだ。

 今のオレたちには、浅いところで魔物を倒すだけでも精一杯だろう。


「いやあ、雰囲気のある森だよね……」

「あれ? もしかしてイオナさん、怖がってるの?」

「怖がってませんよ、エスカーさん?」


 そう返しつつも、イオナはきょろきょろと辺りを見回している。

 しばらく沈黙した後に観念して、


「……私こういうところ苦手です、はい。暗くてオバケが出そうだもん」

『ゴースト系の魔物が出るような地域ではないですが』

「そういうのじゃなくて、雰囲気がね! 苦手なものは苦手なんだよお」

「へえ……意外だなあ」


 そういうルカは平気そうだ。ちょっとくらいは怖がったりしてるかなと思ったのだけど。

 薄暗いこの環境に腰が引けているのは、どうもイオナだけらしいな。


「きみのイマジネートで常に明るくしておいたら?」

「ずっと使ってたら疲れちゃうよ……エスカーもそれくらい分かるでしょう。とにかく、さっさと十匹倒して帰りたいなあ」

「早く見つかるように祈ろう」


 今のところ、足跡は時々見つかるといった程度だ。大量の落ち葉で地面が露出している場所が少ないのと、雨や他の生物の痕跡などで魔物の足跡が判別し辛くなっているのが痛い。完全に途絶えてしまうようなことはないので、まだ追えてはいるが。


「……お?」


 前方から、微かに音が聞こえてくる。落ち葉を踏みしめる音……近づいてきているようだ。

 オレたちは即座に警戒態勢をとり、その正体を見極めようとする。

 やがて現れたのは、


「……蟻の魔物だ!」


 体長は一メートルほどだろうか、普通の生物ではあり得ない大きさの蟻型魔物。

 その外皮は黒と紫の斑模様で、如何にも毒を持っていますという見た目をしている。


『ポイズンアント……その名の通り、毒を有する蟻の魔物ですね。大顎が発達していて、牙にも毒がありますが、尻尾の針にも毒があるので気を付けてください』

「ありがとう、マル。つまりは前も後ろも危ねえってことだな」

「近づかずに倒したいところねえ」


 ポイズンアントは二匹。それほど強い魔物ではないらしいので、落ち着いて対処すれば苦労はしないはず。

 ……ただ、魔物の状態が若干気になる。こいつらは、オレたちの気配を感じて近づいてきたのではなく、こちらへ向かってきた結果鉢合わせしたように思えた。


 ――考えるのは後、か。


「目標の魔物じゃねえし、温存しつつ討伐するぞ」

「よっし、やるか!」


 ルカを筆頭に、オレたちはブースターでイマジネートを発現させる。

 オレの武器はとりあえず、最初は剣と盾にしておくのがベターだな。


『ギイィ……ッ』


 二匹のポイズンアントは、オレたちが武器を構えるのを見て敵意を露わにした。

 脚での移動速度はそれほどでもないが、跳躍によって一気に距離を縮めてくる。


「させるかよ……!」


 オレが皆の前に出て、盾で飛び掛かり攻撃を防ぐ。

 魔力の流れを変えれば、防壁の位置を調整することも可能なようで、やや前方に防壁を張ることでガードの厚みを増すことが出来た。


「いいね!」


 弾き返されたポイズンアントを、エスカーの氷刃が強襲した。

 細い関節の継ぎ目部分を刃が貫き、一匹が真っ二つになる。暫くは苦しそうに動いていたが、すぐにそれも無くなった。


「――フラッド」


 残り一匹目掛け、フェイが発動した水魔法が飛んでいく。高密度の水鉄砲はポイズンアントを更に遠くまで吹き飛ばした。

 そしてそこに、


「これでおしまいっと!」


 木の上に登ってタイミングを窺っていたルカが、ひょいと飛び降りてポイズンアントを踏み抜いた。

 強化された一撃は、硬い殻すらも砕いて潰す。安定の力で捩じ伏せる戦闘スタイルだ。


「お疲れ、毒を喰らったりもしてないな」

「大丈夫、問題無いよ」


 足元に付いてしまった返り血を振り払いながら、ルカが言う。


「予期せぬ戦闘だったけど、とりあえず――」


 オレは収集品の獲得画面をタッチし、資源を回収する。

 得られたのはポイズンアントの毒針が二つ。それから微量なマナだ。


「昨日集めた収集品も含めて、休みのうちにまとめてカインズ商工会に売却しておこうと思うけど、それで構わないか?」

「ちゃんと売却代金も記載して貰えれば大丈夫だよ」

「ハイハイ、きっちりやるさ」


 オレが取り分を多くしてないかはしっかり確認したい、ということだな。

 エスカーの言い分も尤もだし、そこは信用してないのか、なんて返すのも大人げない。きちんと明細を作るようにしよう。


「……それにしても」


 ポイズンアントの亡骸があった場所に目を向けながら、オレは呟く。


「今の魔物、ちょっと様子が変だったな」

「そう? ボクは分かんなかったけど」


 ルカがそう言って首を傾げるのに、


「そうだなあ……奥の方から逃げて来てる感じはしたかも」

「ああ、オレもイオナと同じように感じた。まるで向こうに、命を脅かすような危ねえ奴がいるみたいに」

「それって……」


 ごくりと生唾を呑み込むルカ。……そう、多分この先に凶暴な魔物がいる。

 これまで辿って来た痕跡が続いていることと合わせると……十中八九、間違いはないはずだ。


「オレたちの討伐目標は、向こうにいるってことだろうな」


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