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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
巡礼の支度 想造育成機関_アトモス学園
43/71

39.チーム結成を祝して

 オリエンテーションが無事に終了し、オレたちはオリーブ丘陵からアトモス学園へと帰り着く。

 遠出だったので、到着した頃にはもう夕方五時近くになっていて、生徒たちは当然の如く疲労困憊だった。

 時間は微妙だったが、オレたちは少しの間だけ休憩をとり、昨日と同じく六時に食堂へ集まることに決める。マルも誘ったのだが、オペレーターとしての仕事もあるので自分は後で食べると、集合するのは断られた。ただ、テスタマイザー越しになら話はしてもいいとのことだった。

 寮七階の自室で何十分かだけくつろいだ後、食堂へ向かう。先にいたのはイオナとフェイで、エスカーとルカの二人は僅かに時間を過ぎたくらいでやって来た。

 五人になると、今まで使ってきた四人掛けのテーブルでは足りないので、六人掛けのテーブルを見つけてそこを使わせてもらう。……以降はここが指定席になりそうだな。

 ルカの提案で、今宵の食事は趣向を変えることになった。各人が自分の料理だけを買ってくるのではなく、パーティのように色々な料理を取って来て並べ、好きに食べようという提案だ。やりたいことは大体分かったが、オレも特に異議はないし他の皆も乗り気だ。めでたい日には、こういうのもアリだろう。


「と、いうわけで。ダインチームの結成を祝して……カンパイ!」


 勢いこんでルカが言い、オレたちもやや照れながらグラスを上げる。ダインチームって言わなくてもいいんだけどなあ。

 ……まあ、チーム結成とオリエンテーションで一位になったことへの祝賀会というのは良い提案だと思う。これから一年間、このメンバーで共に活動していくことになるのだし。


「イオナから事前に仄めかされてたから、複数人でする訓練ってのは予想がついてたが……まさかこのチームで一年やってくことになるとは」

「あはは……私も上級生の話を聞いてて、ね。最初の一年はチームでってのも実は知ってたんだけど、そこまで言うとネタバレが過ぎるかと思って。あ、でもリーダーがあんな簡単に決まっちゃうのは知らなかったよ? 後で相談して決めるのかと」

「いや、マジでヒント用紙を取りに行っただけで決まるのは予想外だろ……今からでもイオナに変えられねえかな」

「私は絶対リーダーの器じゃないよお」


 イオナが手をぶんぶんと振って否定する。そうは言うけれど、彼女には主体性があるし人を惹きつけるような魅力もあって、十分素質ありだと思う。

 他にはフェイも冷静な判断がいつでも出来そうだし、候補にはなるか。……エスカーとルカは多分ダメだな。


『ダインさんがリーダーなのは良かったと思いますよ。多分、今日みたいな選択をすぐに実行出来るような人は中々いませんから。希少性があります』

「ちゃんと来てくれて嬉しいけど、マル。それは評価してるのかどうなのか」

『面白い人だなとは』

「あのな……」


 マルの言葉に、他のメンバーも笑っている。面白いってのは共通認識なのか? それは不服なのだが。


「でも、難しい判断でも責任を持って動いてくれてるから、凄いなと思うわ……あ、少し砕けた話し方になっちゃった」

「もうチームメンバーなんだから、敬語とかは抜きにしても構わないよ、フェイ。とりあえず、その言葉はありがたく受け取っておくかな」

「ふふ、そう? だったらこちらもありがたく受け取っておくわね」


 まず、ルカはともかくイオナもエスカーも、最初から結構ずけずけと接してきたし。むしろフェイの方が慎まし過ぎるくらいだ。

 同じ百期生、同じチーム。多少の礼節は必要にしたって、要らぬ壁は作らずにいきたい。


『私はこの話し方が普通なので、お気になさらず』

「了解。名前くらいは呼び捨てでも構わないからな」

『考慮はしておきますよ』


 これはあんまり考慮しないやつだな、多分。


「……しかし、滑り出しは良かったものの、チーム制ねえ。連帯責任と考えると気楽じゃいられないな」

「誰かがポカしたら皆が減点ってコトだもんね。逆に良いことすれば皆が加点だけどさ」


 ルカが言いながら頷く。良い面もあるし悪い面もあるのは当然なのだが、オレの性格上迷惑をかけないかな、なんて気持ちが強く出てしまう。

 ただ、眉間に皺を寄せているオレに対して、


「ダインがリーダーなら大丈夫だよ。それに、減点されたってすぐに挽回すればいい。全部を自分が担うより、助け合っていけるチーム制の方が私は良いな」


 イオナはそう言って笑った。

 何というか……やっぱりそれは、女神様の笑顔のような眩しさで。


「……んじゃ、せいぜい支えて貰うとするか。オレがやらかしても、文句言わず一緒に挽回してくれ」

「文句は言うでしょ、流石に」

「うん、文句は言うね」


 エスカーとルカが当然のようにそう返してきた。

 まあ、そりゃそうだって感じだけどさ。


「チームが結成されて、いよいよイマジネーターとして活動出来る感じになってきたし、明日は魔物退治とかかねえ」

「私もそんな気がするな。……あ、あと座学の説明がまだだね」

「座学……う、それを聞いただけでボク、頭が」

「大丈夫? ルカが早速足を引っ張らなければいいけど」

「そういうエスカーはどうなのさ」

「大丈夫でしょ」


 エスカーなら座学は得意そうな感じがする。ルカが不得意なのも容易に察せられるな。

 それにしても、座学か。改めて考えてみると、イマジネーターを養成する学園で行う座学ってどんなものなんだろう。


「基本は歴史のイマジネーターに絡んだ歴史の講義をするはずだよ。後はね……魔法の講義があったかな」

「あー……」


 確かに、メルシオネ教官が教えてくれているのはイマジネーターとしての総合的な実戦訓練であり、魔法の使い方という限定的な勉強は出来ていない。

 主として用いるのがブースターによるイマジネートといえども、闘技や魔法も戦っていく上では必要な技術だ。特に魔法はイマジネートの原点とも言えるものだし、切っても切れない関係だろう。


「私は魔法の講義、楽しみにしてるわ。前線で戦うようなタイプじゃないし……色んな魔法が使えたら戦いでも実生活でも便利そうだしねえ」


 頬に手を当てながら、フェイは嬉しそうに言う。そうだな、魔法をよく使いそうなイオナやフェイに関しては特に、学びたい分野だと思う。

 オレも武器によって能力を変えられるなんて不思議なスタイルだし、覚えておけば役に立つ場面はありそうだ。


「はあ……減点されないよう頑張るね」


 皆が期待を膨らませる中、ルカだけは沈んだ表情でそう零すのだった。


 和気あいあいとした空気の中、祝賀会と称した夕食は長々と続き、終わったのは夜八時になる頃だった。

 新入生はほとんどが食事を済ませて部屋へ戻っており、今は上級生の姿がちらほら窺える。食事時間が被らないよう気にかけてくれてるのかもしれない。

 流石にこれ以上は場を占領しすぎだろうということで、オレたちはこの辺りで解散することになった。テスタマイザーの連絡先をちゃんと共有しておいてから。

 大浴場を利用してみようかという話もちらと出たが、最終的には各自の判断になり、オレは自室へと戻ることにした。女子はもしかしたら皆で行ったのかもしれない。

 部屋へ戻るのとほぼ同時に、テスタマイザーに通知が入る。……イオナの推察が当たっていて、明日は座学の説明があるというお知らせだった。

 支給されている教科書を持参し、午前十時にA棟の一番講義室へ集合、か。入学にあたって教科書は事前に送付されてきていたので、中身はパラパラ読んでみたりしていたが、アレの出番がようやく来るのだな。

 そう言えば、入学式にA棟で起こした戦闘の跡は修復されているのかなとふいに気になった。行くときに確認しておくかな。

 ともあれ……今日も目いっぱい疲れた。とても充実した疲れだ。魔物との戦いもあったし、イマジネーターとしての道を順調に進んでいる感じはする。

 また、手に入れた素材は時間があるうちにカインズ商工会で換金しなくちゃな……などとあれこれ考えつつ、オレは夜の時間を気ままに過ごし、そして眠りについた。


 今日も悪夢が訪れることは、やはりなかった。

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