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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
巡礼の支度 想造育成機関_アトモス学園
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32.オリエンテーション③

 キラーウルフの群れは既にこちらを獲物と認識していて、涎を垂らしながら真っ赤な目で睨みつけてきている。

 どう攻めてくるかは分からないが、人数の優位を武器にごり押しで倒せればありがたいところ。


「――門を開く者(アルニオン)!」


 オレは早速能力を解放し、黒い霧から武器を現出させる。

 イオナ、ルカ、エスカー、フェイ。四人の役回りを考えたとき、足りないものは何か。

 イオナは魔法攻撃、ルカとエスカーは物理攻撃、そしてフェイは補助……攻撃と支援は足りているのだから、オレが担う役割は一つ。


「……これだ!」


 右手には剣、左手には盾……仲間を護る黒の守護者。

 正直、防御メインでの戦いにそこまで自信はないが、このチームには護り手が必要だ。

 幸運なことに、オレには武器によってステータスが変わる便利な限定スキルがある。盾を持つスタイルなら、防御系の能力が向上してくれるはず……!


『ガルル……!』


 キラーウルフはオレたちが散開するのを見て動き出す。あちらも散らばるかと思いきや、三体固まってルカの方へ突進を始める。

 こいつら、一人ずつ確実に仕留めるつもりか。案外頭が回るもんだな。

 ……けれど。


「させねえ……!」


 オレはルカとキラーウルフの間に割って入り、盾をしっかりと構える。飛び掛かって来たウルフは三匹とも、盾に弾かれて後方へ飛び退いた。


「あ、ありがと!」

「問題ない! 狙われてると思ったら近くに来てくれ」

「了解!」


 ルカはこくりと頷き、自身もイマジネートを発動する。

 勇猛たる翼(リィンフォース)だったか……攻撃役としては申し分ない能力だよな。


「喰らえーっ!」


 上空へ跳躍したルカは、落下する勢いのまま踵落としをお見舞いする。身体能力全てが強化されているらしく、小柄な彼の攻撃でもキラーウルフの脳天が砕けるほどの威力となっていた。

 ドゴン、と痛烈な音が響き、深く沈み込んだ頭蓋。急所への力強い一撃は、それだけで命を刈り取るのに十分だった。


「へへん、まずは一匹!」


 ニヤリと笑い、オレに向かってピースサインをするルカ。初討伐に気持ちが舞い上がるのは分かるが、まだ気を抜くもんじゃないぞ。


「これは負けてられないねえ」


 少し距離をとっていたエスカーも対抗意識を燃やしたようで、キラーウルフの一体に狙いを定めて急接近する。

 あいつの能力は氷霧幻影コキュートス……冷気や氷そのものを発生させて攻撃するような能力だから、ルカよりは離れた位置で戦うのが基本になりそうだ。


「――氷刃」


 エスカーが手を斜め上に振り上げると、その軌跡に沿うようにして三つの氷の刃が生成されていく。

 そして手をキラーウルフの方へ勢い良く突き出した直後、氷刃は一気にウルフへ向かって飛んでいった。


『ギャオォンッ!』


 刃のうち二本が両目に突き刺さり、キラーウルフは仰け反りながら鳴き声を上げる。

 しかし、これで終わりではない。奴の死神はすぐそこまで迫っていた。


「……これでおしまいだ」


 視界を奪われ動けなくなったウルフの頭上に、ゆっくりと生成されていたもう一つの刃。

 その大きさゆえに、先に放った刃よりも時間がかかったそれが今、標的目掛け墜落する。


『ギャッ……』


 断末魔の叫びすらも上げることが叶わない。

 まるでギロチンのような氷刃は、キラーウルフの首をスッパリと切断してしまった。

 ゴロリと転がった頭……その瞳にはもう、当然ながら生気は宿っていない。

 鮮やかな処刑、だった。


「二人とも調子良いねー!」


 自らもイマジネートによって光の杖を発現させつつ、イオナはルカとエスカーの戦いぶりに称賛を送る。

 そんな彼女に、最後の一匹がほとんど捨て鉢になって攻撃を仕掛けた。


「単純過ぎだぜ!」


 直線的な攻撃を、オレは盾でガードする。さっきのように吹き飛ぶことがなかったので、動きを止めたキラーウルフに追撃の一閃を見舞った。


『ギャンッ!』


 片手剣だと一撃で致命傷までは与えられないが、相手を怯ませるには十分だ。首筋に深い傷を負ったキラーウルフは血を噴き出しながら後ろへ飛び退くが、もう足はフラフラとしていた。


「ダインも頼もしいね。……じゃあ、やりますか」


 イオナが杖を構えると、その先端に光が集束していく。

 彼女は静かに目を閉じ……そして、光が消えるのと同時にカッと見開いた。


「――ブライトレイ!」


 杖先から放たれた一筋の光が、あっという間にキラーウルフの体を貫き――彼方まで伸びて、消える。

 光線によって串刺しにされたキラーウルフは、もはや自身がどうなったのかすら分からなかったことだろう。

 ドサリと倒れる亡骸。その体には、頭の先から尾にかけて細い穴が穿たれていた。光は、正確にウルフの命を撃ち抜いていったのだ。

 恐るべき直線範囲攻撃だった。


「バッチシ、だね!」


 一撃の下に敵を沈めたイオナは、ビシッと指を立てて勝利を喜ぶ。

 いやはや、誰も彼も頼もしくてありがたい限りだ。このチームだと、オレはかなり楽が出来るんじゃないか? ……してやろうってわけじゃないが。


「皆さんお強いですねえ……私なんて出る幕もないくらい」

「はは……オレもただ突っ込んでくる敵を止めてただけだったけどな。フェイの真価はもっと強い敵と戦う時だろう」

「だったらいいんですけど」


 少なくとも、キラーウルフ三匹程度では補助や回復も必要なかった。もっと大勢で攻めてこられたり、もっと強力な奴が来た時にこそ欲しくなるだろう。


「……お?」


 戦闘が終わると、テスタマイザーから通知音が聞こえてきた。

 何事かと思って画面を見ると、戦利品を取得可能という通知が出ていた。


『今しがた戦闘で倒したキラーウルフから、獲得可能な戦利品を自動入手する機能ですね。使うことに何らデメリットはありませんので、この通知が出たら必ず獲得しておくべきでしょう』

「そうか、これが収集機能なわけだ」


 先日メルシオネ教官が説明していた機能。こちらも早速試す機会が訪れてくれた。

 

「この取得ってところをタッチすればいいんだな……」


 取得ボタンをタッチすると、前方に倒れていたキラーウルフの骸が淡い光に包まれる。

 そして徐々にその姿が薄ぼんやりとしていき……やがて完全に消滅した。

 代わりに、テスタマイザーに小気味良い通知音が響いて。

 戦利品を入手したことを知らせるメッセージが届くのだった。


「ウルフの毛皮が二つ、牙が三つ、骨が一つ……か。結構手に入った方かな?」

「じゃない? 綺麗な倒し方をすればもっと取得出来るかもしれないけど、そこまで気に掛ける人はいないと思うよ」

「相手は魔物だしな。……というか、オレが代表して取って良かったのか?」

「ボクは別に大丈夫だよ。売却するなら後で分配すれば問題ないし、何かに使いたい人がいるならそれでも後で相談すればいいでしょ」

「俺もそういう方針で異存なし。まず、素材としての利用法はまだ分かんないしね」


 まあ、皆の言う通りだ。回収するのがオレであることだけ文句がないのなら、方針としてはルカの言ったままのことをしようとオレも思っている。

 このオリエンテーションで得た素材は特に必要がなければカインズ商工会で売却し、公平に分配する……それがベストだろう。


「……っと。素材に気を取られてたけど、マナも回収されてるんだな。これも全部オレのところに来てるのか?」

『あ、そうなりますね。集魔器の機能も同時に発動するので、ワンタッチでマナも回収されてます。ええと、これについてはチームで公平分配する設定があるかと』

「どれどれ……」


 マルに言われ、設定画面を確認してみると、なるほどマナ回収時の分配設定という項目があった。

 回収者一括、という設定がデフォルトだったので、これは公平に変えておこう。

 それと、貯蔵されたマナは後から他者へ分配することも可能なようで、今しがた全部取ってしまった分も公平に分けておく。

 アイテムは誰が持っていてもいいだろうが、力の元であるマナはひとまず分配しておくべきだろう。


「よし。……ちなみにこれ、限界値が百で、キラーウルフ三匹倒すと十ポイント貯まったけど、具体的にどのくらいのマナなんだ?」

『個々人の魔力消費効率にもよりますが……一般的には十ポイントでランク一の魔法を一度使えるくらいのものだと思ってもらえれば』


 つまり、回収した分全部を使ってやっと最下級魔法が一回か。最大まで貯めても、上位の魔法を放てる分があるかどうか、というレベルだな。

 状況に応じて、サポート役のフェイに譲渡して回復魔法を使ってもらうとかも選択肢としてアリか。


「魔物を倒した後の流れはこれで掴めた。余裕を持って勝てるならメリットは結構ありそうだし、全部を避けていかなくてもいいかもな」

「バランスが大事だね。最大効率目指していこ!」


 魔物を倒すことがイマジネーターの意義だし、能力の成長や資金獲得にも繋がるのだから勝てる魔物には挑んでいきたい。

 イオナの言葉に全員が頷き、オレたちはヒントの場所と魔物の二つを探しながら進んでいくのだった。


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