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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
巡礼の支度 想造育成機関_アトモス学園
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31.オリエンテーション②

 ルートがかち合うのを嫌ったか、各チームそれぞれ出発した方向はバラバラだった。ただ、拠点の東側はすぐアトモス学園の管轄外になってしまうようなので、そちらへ向かったチームは一つもない。

 丘陵の西側――シャロー森林へと至る山間が、このオリエンテーションの探索範囲だ。


「出発したはいいものの、何処を目指すべきかね」


 周辺に他チームの姿が無くなったのを確認してから、オレはとりあえずの方針立案のため皆に問いかける。


「このヒント用紙に書かれてる文言だよね。艶めく赤を掲げしもの……って何のことだろ」

「少なくともこの辺りには、赤いものがないんだよねえ」


 ルカは首を傾げ、イオナは辺りを見回しながら言う。……拠点近くのここは、確かに殺風景というか目立つ物が少ない。

 靴も隠れない程度の歩きやすい草原に、所々まとまって生える花や細い木。遠くの方には木々も生い茂っているが、かなりの距離がありそうだ。


「シャロー森林……あの森の奥地までは流石に範囲外だろうけど、手前側は探索出来るよな」

「そうだね。森の入口あたりはアトモス学園の管轄だったはずだよ」


 イオナが同調してくれたところに、テスタマイザーからの声が響く。


『オリエンテーションの範囲についてはこちらで詳しいマップを出せます。全員に共有しておきましょう』


 マルがそう言った後、何やらカタカタと機械を操作する音がした。

 最後に一際大きな打鍵音が聞こえると、オレたちのテスタマイザーに画像が表示される。


「おー……凄いもんだね」


 エスカーが感嘆の声を漏らす。オレや他の皆も彼と同じように驚いていた。

 簡略化されてはいるものの、オリーブ丘陵一帯の地形が記され、その外側にはオリエンテーションの範囲内外を示す赤線がぐるりと囲ってある。

 更にはオレたちの現在地が、赤い点で表示されていた。


「こうして見ると、拠点はやっぱり範囲のほとんど東端なんだね。そしてシャロー森林の入口までちゃんと範囲の中だと……」

「助かるよ、マル。……ってことは、森林を目指すのがベターだろうな」

「ん? ダイン、何か分かったの?」


 ルカが聞いてくるので、オレは頷いて、


「艶めくっていうワードをどんなものに対して使うのかって考えると、それくらいしか浮かばなかったんだよ。ルカ以外は分かってるんじゃないか?」

「あっ、バカにして……」


 頬を膨らませてルカは怒るが、実際他の面々はあれしかないな、という顔をしている。

 エスカーが言いたそうにしているけれど、ここは加わったばかりのフェイに振っておこうか。


「フェイ、君は何だと思った?」

「そうですねえ……艶というと光沢のあるような、綺麗な色ってイメージですし……果物かな? と」

「オレもそう思った。赤い果物……中でもメジャーなものはリンゴだろう」


 林檎なら、艶めくという表現も適切だ。

 そして、リンゴの木が生えていそうな場所となると、シャロー森林方面……というわけである。


「ぼ、ボクもそれくらい予想はついてたよ」

「本当かな? 目が泳いでるけど」

「うるさいエスカー」


 グーパンチをお見舞いしようとするルカと、それをひょいと躱すエスカー。微笑ましい光景だ。

 ほぼ全員がリンゴという解答を出してくれたのは嬉しいものの、現段階ではあくまで予想。これが正解かどうかは、行って確かめるしかない。


「というわけで、ちょっと遠いがまずはシャロー森林方面へ行くとしよう。異存はないか?」

「特にないよー。リーダーはダインだから大人しく従います!」

「多少面白がってるだろ、イオナ……」

「ふふ」


 こんなにも様にならないリーダーは中々いないと我ながら思う。

 まだバランの方が、他人に対しての当たりはともかくリーダーシップはありそうだよなあ。

 シャロー森林を目的地に定め、オレたちは再び歩き出した。遠くの方にも、オレたちと同じように森林を目指しているチームが見える。バランのチームではないようで、積極的に攻撃してやろうという意思もないようだ。そこは安心だな。

 出来ることなら、他チームとの戦闘は避けたい。勝つにせよ負けるにせよ、魔力と時間の無駄遣いになるのは目に見えているから。


「そうだ。オレたち四人は互いの能力を知ってるんだけど、フェイのはまだ知らないな。戦闘になった場合のことを考えて、出来ることの共有もしておこう」

「あら……そうでしたねえ。私の能力は『片翼の天使(リグレッサー)』というものだったんですけど……簡単に言えば治療、でしょうか」

「治療か。オレたちの中じゃ回復や補助みたいなサポート系の能力持ちはいなかったからありがたいよ」


 信用していなかったわけじゃないが、学園側で決めたチーム分けはちゃんと考えられた上でのものなんだな。

 深刻な役割の重複がないようにはなっているのだと思う。

 フェイに能力を答えてもらったので、オレたちも彼女に各々の能力を説明する。

 もしかしたら事前に情報は得ているかもしれないが、オペレーターのマルにとってもおさらいにはなっただろう。 


「各人の立ち回りも、これでしっかり見えてくるな。後は戦闘になったら――っと」


 そんな風に考えていた矢先、オレたちの前に立ち塞がる影があった。

 しなやかな体躯で草原を素早く駆け、獲物に襲い掛かる捕食者。

 その体つきからして間違いなく、ただの獣ではない。


「魔物か……!」


 お誂え向きに、魔物の方からやって来るとは。

 狼の姿をしているのだから、こいつは恐らく。


『キラーウルフ、見た目の通り狼の魔物です。脅威度は低級ですが、ただの狼とは違って非常に獰猛で、かつ強靭な肉体を持っていますから、油断はしないでください』


 マルが的確な説明をオレたちにくれる。

 キラーウルフ……あの発達した脚での走りは非常に速く、普通の人には逃げ切ることなどほぼ不可能だろう。

 オレたちも、高速で逃げる術を持っているわけじゃない。ルカくらいは何とかなるかもしれないが……逃走は得策じゃないな。

 戦って、倒す。それが手っ取り早い。


「幸い相手は三体だけ。こっちは五人、数的にも有利だし負けたりはしないだろ。大事なのは、消耗しないようにってことだ」


 オリエンテーションは始まったばかり。ここで下手を打っていたら、重要な局面で響いてくる。

 現れる障害を、如何に効率良く捌いていくか……チームで息を合わせ、一つ一つ適切に対処していかねばならない。


「いけるな、皆」

「うん、頑張ろ!」

「ボクも大丈夫!」

「やるっきゃないねえ」

「精一杯力添えしますね……!」


 オレの声掛けに、全員が応えてくれる。

 準備はオッケー、ならばかかるとしよう。


「キラーウルフ三体、迅速に仕留めるぞ!」

「「おーっ!」」

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