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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
巡礼の支度 想造育成機関_アトモス学園
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29.チーム制

 学園を北口から出て歩くこと一時間。

 オレたちはようやくオリーブ丘陵の中腹にある拠点まで辿り着いた。

 ここから訓練が始まるというのに、既に音を上げている生徒もちらほらいる。

 楽な道のりではなかったから、普段から体を動かしていないとキツいのはそうだろうな。

 拠点のある場所はまだ原っぱという表現が妥当で、木々もそれほど多くは生えていない。ここから西側に向かうと徐々に樹木が増え、森へと移り変わっていくのだ。

 なお、西に広がる森林地帯にはまた別に、シャロー森林という名が付いている。こちらも相当の広さを誇っており、まだ知られざる秘境があるのではとも言われていたりするとか。

 長命種――エルフの里があるからあまり不用意に近づくと良くないようだけれど。

 あと、確かムツキ兄弟の出身地であるイザヤ村も森林の周辺にあった気がする。


「まずはお疲れさまでした。そうですね……少しだけ休憩を入れましょうか」


 メルシオネ教官が休憩という単語を口にしたとき、何人かの女子がやったと声を上げた。

 かなり足に来ていたんだろう……先が思いやられるが。


「ただ、その前にチーム分けをしようと思います。後の休憩時間を、チームの交流にあてていただければ」


 休憩時間の上手い利用法だ。オレたちはまだ入学三日目、チームを組んだところで素性を知らないヤツはどうしても加わるし、雑談でもして互いを知っておくべきだろう。

 ……というか、もしやチーム分けは各自で自由にやるんじゃなく、教官が選ぶのか?


「では、学園側で決めさせていただいたチーム分けを発表するので、呼ばれたメンバーで集合していってください。読み上げていきますね……」


 正確には、教官ではなくアトモス学園として決めたチーム分けらしい。昨日の能力測定の結果などから総合的に判断されているのだろう……多分。


「……バラン=カーファ、サラル=ムツキ、テッド=マルテ、エレン=ラビン、エステル=プリム。以上五名で集まってください」


 呼ばれたメンバーは指示通りに集合する。バランが動かないので、残りの四人が仕方なく近づいていった形だ。

 彼らと同じように、他のチームも読み上げられていく。そして、


「次……ダイン=アグナス、イオナ=ピルグリム、ルカ=アクトン、エスカー=イリオット、フェイ=マティア。以上五名です」


 おや、これは偶然なのかどうか、既に交流のある人間四人が同じチームになるとは。

 どちらかと言えば、こういう場合引き離されそうなものだが……このメンバーでいた方が連携出来ると思ってくれたのだろうか。

 しかし、フェイ=マティアという子だけはよく知らないな。どんな子だったっけ。


「どうも、フェイ=マティアと言います。よろしくお願いしますね」


 元々オレたち四人で集まっていたところに、彼女がやって来る。物腰の柔らかな少女だ。

 透き通るように青く、背中まで伸びたロングヘア。とても温和な顔立ちで、優しい笑顔が似合っている。

 同年代の女の子にしては身長が高めか、イオナよりも少し上だ。……ちゃん付けするよりはさん付けしたいような、大人びた雰囲気を纏う子だった。


「ああ、よろしく。ダイン=アグナスだ」


 とりあえず、オレたちも一人一人自己紹介していく。……新入生の中では目立っているオレたちなので、もう彼女はよく知っているようだったが。


「仲の良さそうなグループだったので嬉しいです。私がお邪魔になるかどうかが心配ですけれど……」

「そんなことないさ。フェイちゃん……フェイでいいかな? オレたちもほぼ入学してからの付き合いだし、互いのことはほとんど知らないくらいだ。そう変わらないよ」

「唯一、ボクとダインが昔接点あるくらいじゃない?」


 唯一、というところを強調しなくてもいいと思うが、事実それくらいだろう。


「あらあ……そうなんですね。でしたら私も皆さんと上手くお付き合いできるよう、頑張ります」

「まあ、こういうのは自然なのが一番だと思うよ」


 意気込むフェイに、イオナはそう返す。交友関係というものは実際、意識的に頑張るものではなく自然に積み重なっていくものだろう。

 このオリエンテーションを通じて、知らず打ち解けられるんじゃないかと思う。


「俺たちの中じゃ一番落ち着きがありそうだし、今日の訓練での活躍には期待しておこうかな」

「ボクたちは落ち着きがないって?」

「きみは特にないでしょ」

「むきーっ!」


 エスカーとルカが早速じゃれ合い、フェイさんはそれを羨ましそうに眺めている。……羨ましがるのはいいけれど、多分きみの性格的にいいコントにはならないと思うぞ。


「うふふ……せっかく褒めて貰ったことですし、このチーム分けで一つ疑問に思っていることをお話しても?」

「ん――ああ、話してみてくれ」


 現段階でおかしな点についてはオレも気付いている……というか、大半の生徒は違和感を抱いているだろう。

 フェイが代表してそれを口にしてくれるなら、大人しく聞いてみよう。


「はい。メルシオネ教官はこちらへ来る前、演習場でこう仰っていましたよね。皆さんには六人一組のチームとなって困難に挑んでもらいたい、と。ですけど、私たちは今五人一組のチームになっている……あと一人足りないんです」

「あ、そうだよね」


 ルカは指摘されてようやく気付いたらしいが、フェイの言うようにオレたちは五人一組のチームにされている。

 演習場で話していた六人一組というのはどこへ行った……と言いたいところだが。


「これで、()()()()()面々のチーム分けは完了しました。そして皆さん、疑問に感じたはずです。さっきは六人一組と言ったはずなのに、と。……実はあと一人ずつ、加わるべきメンバーがいます。イマジネーターの活動を補佐するために、必要不可欠な存在がね」


 ……そう、ようやくここで話が繋がるわけだ。

 いなくなった新入生たちについて、後で説明すると言っていた理由。


『……ええと、繋がりました?』

「うおっと」


 突然テスタマイザーから画像と音声が表示されたので、驚いてしまう。

 なるほど、こういう登場の仕方をするわけか。


『初めまして、オペレーターのマル=ペトラです。出来る限り皆さんのお役に立てるようサポートしますので、ヨロシク……です』

「……ああ、よろしくお願いするよ」


 イマジネーターのように前線に立つわけでは無く、学園内でイマジネーターたちのナビゲートをする補佐的存在……オペレーター。

 チーム最後の一人は、このオペレーターということだ。


「俺のところはお前になったのか、レメディオ」

『は、はい……。なった以上は全力でサポートさせてもらいます、アニキ!』

「ふん……くれぐれも間違った指示は出すなよ」

『き、気を付けますんで……!』


 予想通り、レメディオはイマジネーターになれずオペレーターに転向したらしい。

 昨日の今日ですぐ転向出来るとは思ってなかったのだが、学園側も柔軟に対応してるんだな。

 能力が使えないか、或いはその能力で戦う覚悟の出来なかった者たち。

 そういう者たちがオペレーターに回り、今回オレたちをサポートしてくれるようだった。


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