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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
巡礼の支度 想造育成機関_アトモス学園
32/71

28.オリーブ丘陵へ

 アトモス学園に入学して三日目。

 この日の朝は遅めの起床だった。何故なら、午前の講義が無かったからである。

 夜になってからテスタマイザーに来た通知。そこには明日の予定が記載されており、午前は自由時間で、午後から再び実戦形式の訓練を行うという内容だった。

 集合場所は演習場。昨日と同じ練習試合をやるわけではないだろうが、果たしてどんな訓練になるのやら。

 朝食は一人で食べようかとも思ったが、図ったようなタイミングでイオナから連絡が来たので、結局一緒にとることになった。

 こういうとき、エスカーやルカも来そうなものだが今回は現れなかった。ルカの方は大方まだ寝てるんだろう。エスカーは知らん。


「午後からの訓練、イオナは何か知ってるか?」

「ううん、全然。特待生ってだけで私は学園の関係者じゃないからねー。第一、私の他にも特待生は何人かいると思うよ」

「それもそうか」


 初日からキャンパス内を案内出来るほど詳しかったり、魔物と普通に亘り合えたりしていたから、実は学園側の事情に詳しい立場なのではと疑問に思っていたが、そうでもないらしい。

 ……特待生、か。でも、イオナ以外に最初からテスタマイザーを持ってたやつがいた覚えもないんだよなあ。

 エスカーやバランは、能力的に特待生でも違和感ないんだけどさ。


「ただ――そうだね。練習試合みたいに、毎年これをやってるっていうのは聞いたことがあるかな」

「と言うのは?」


 少しだけ勿体を付けてから、イオナはあくまで仄めかすような言葉をオレに投げかける。


「イマジネーターは基本、一人きりで行動するもんじゃないってこと」


 まあでも、その言葉だけでも何となく、これから何が始まるかは察せられた。


 その後、午前中は通信機で家に電話を入れたりしつつ自由に過ごした。母は学園生活のことをつぶさに知りたがっていたので、今日までのことを根掘り葉掘り聞き出してきた。思いのほか長話になってしまったのは反省だ。

 昼食はエスカーとルカもやって来て、また四人で食べる。エスカーだけは、もう千ペンドも減っちゃったよとポータルバンクの残高を見ながら嘆いていた。こいつ、結構食べてるもんな。

 そんなこんなで午後一時前。オレたちは揃って演習場に向かう。定刻前には生徒全員が揃った……と思いきや、どうも何人かいないようだ。

 一人二人じゃなく、五人くらいはいないように見えるが。


「皆さんお集まりですね。それでは本日の訓練内容について説明させていただこうかと」

「あの、すみません」


 メルシオネ教官が説明へ移ろうとする前に、おずおずと手を挙げた子がいた。……あの子も入学式の途上で見た子だな。

 藍色をしたボブカットの髪に、片目だけが少し隠れている。常に背筋をピンと伸ばし姿勢を正しているのもあって、シスターっぽく見えるのかもしれない。


「なんでしょう、エレンさん?」


 エレンと呼ばれたその少女は躊躇いがちに、


「見た感じ、まだ全員揃ってないような気がしまして……」


 恐らくこの場にいるほとんどの者が抱いた疑問を、彼女は代表するように問うてくれた。

 そしてメルシオネ教官も、その質問が出ることを予期していたように、


「確かに、昨日よりもここに集まった生徒は減りました。ですが、これで全員です」

「それって――」

「そちらについても、後で説明するつもりですよ。ご安心を」


 集まった生徒が減ったけれど、これで全員。

 いない生徒の中には、昨日イマジネートを発現させられなかったレメディオ=カインズも含まれている。

 これが意味するところは恐らく二通り。少なくとも、個々人でそのどちらかということにはなりそうだが。


「改めて……本日の訓練ですが、この演習場では行いません。皆さんはこれからオリーブ丘陵へ向かうことになります」

「オリーブ丘陵……」

「ええ、学園のすぐ北に広がる丘陵ですね。手つかずの広大な土地ではありますが、この一部をアトモス学園が利用することが星定議会に認められていまして、新入生の訓練などに活用させてもらっているのです」


 コーネリア校長の学園案内でもちらと出てきた話だ。土地を使わせてもらうとなると、確かに議会の承認が必要だったりするのだろう。

 ……オリーブ丘陵か。ここからでも山の稜線がしっかり見えるが、冗談でなく広大な丘陵だ。ロウディシア大陸を二分するといっても過言ではない。

 活用しているのが一部とはいえ、このキャンパス何個分の広さがあるのやら。


「丘陵の中腹あたりに学園が簡易的な拠点を作っているので、まずはそこを目指します。それから皆さんには、一つの課題をこなしてもらうことになります」


 メルシオネ教官は一つ、と言ったところで指を一本立てる。


「課題の内容はずばり……宝探し」


 ――宝探し?


 オレ以外の大体の生徒も、どういう意味だろうとばかりに首を傾げている。


「その昔、学校でやったことがある人もいるんじゃないでしょうか。ヒントを頼りに目的地を目指すオリエンテーションを。今回やってもらうのはそれと同じものです。与えられたヒントを手掛かりとして、丘陵のどこかに隠されたアイテムを回収してくるという」


 ……振り返ってみれば、まだ幼いころにそんなことをさせられた記憶はある。皆で考えてゴールを目指しましょう、なんて言われながら。

 しかし、今回のは規模が違う。目印となるようなものも少ない広大な丘陵の中で、隠されたアイテムを見つけるとなれば……かなりの労力が必要なのではないか。

 少なくとも、一人では――。


「皆さんの中には、そんなの一人で出来るわけがない……と思った人もいるでしょう。そうです、これは個人訓練ではありません。イマジネーターは一人で戦うものではない……仲間とだからこそ、大きな困難に立ち向かっていけるのです」


 ……イオナが言っていた通りの展開か。

 これもまた、新入生へ向けて毎年行われている訓練。


「今回の訓練はチーム制……皆さんには、六人一組のチームとなってこの困難に挑んでもらいたい」


 メルシオネ教官の言葉に、演習場には生徒たちによるざわめきが起こるのであった。

 

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