27.5 校長と教官
「――という次第で、ダインくんが見事勝利を収めたわけですが」
夜の定例報告で、メルシオネ=ゴードンはコーネリア=セントリオ校長へ今日の練習試合について語っていた。
初めのうちは全生徒のことをまんべんなく報告していたメルシオネも、やはりダイン=アグナスとバラン=カーファの戦いについては詳細な語り口になってしまう。
どちらも優秀な能力を持ち、そしてそれを腐らせないセンスも兼ね備えていたからである。
「ふむ、そこは予想通りか。バランも中々のやり手ではあるみたいだが、な」
「そうですね、成長が楽しみです。……真っ直ぐ育ってくれればいいのですが」
そこでメルシオネの表情が曇る。
「ま、お前にとっちゃ請負人ギルドと星定議会は信用ならん組織だろうさ。だが、子どもまでそうとは限らん。しっかり導いてやればいい」
「……はい。そのつもりです」
コーネリアの言葉に、メルシオネは本心からそう答えた。
今の自分はアトモス学園の教官であり、イマジネーターを導いていく人間なのだから、と。
「それにしても、今年の生徒は色々と特殊ですね。入学式早々魔物の襲撃に遭ったこともそうですし、能力の底が見えない子もいますし……上手く言えませんが、何かがありそうな」
「……何か、ね」
それが具体的に何なのかはもちろん分からない。
けれどもメルシオネには、漠然とそんな予感があったのだ。
そして、コーネリアは彼の予感を否定したりはしなかった。
「お前もまだ二十三歳、イマジネーターとして活躍出来る年齢だ。そういう奴が鋭い感覚を持ってくれているのは頼りになると思ってる」
「……校長」
「気を張らずとも、問題は向こうからいずれやって来るだろう。そのときには自然と全てが分かる……だから、とりあえず待っといてくれ」
そう言われてしまっては、メルシオネとしては分かりましたと返すしかなかった。
予感の先――待ち受ける何かの正体を知りたくとも。
「なあに、世界の平和を護るのがイマジネーターだ。俺たちなら、どんな困難でも超えて行けるさ」
メルシオネの不安そうな顔を見て、コーネリアは大きな声で言い、豪快に笑う。
信頼する男のそうした姿に、メルシオネも結局は釣られて笑ってしまうのだった。




