303.そして元の世界へ
午後一時半ごろ、アルカード星書院から発車した列車はアトモス学園へ到着する。
一週間ぶりに帰ってくる学び舎。エイヴスの時もそうだったが、やはり感慨深いものがあった。
結局、列車の中では寝られなかった。バランチーム……特にエステルちゃんが旅の一部始終を聞きたがったし、オレたちも話し始めれば最後まで言いたくなってしまう性分だったので、ずっと話通しになってしまったのだ。
終いにはユベールさんが即興で曲を奏で始めたりしたので、寝られるわけもなし、だ。
それはともかく。学園の門を抜ければ、ジャンヌさんたちがまた暖かく迎えてくれる。
コーネリア校長にアーロンさん、マルにレメディオ、それにトーマスさんもいて、オレたちにおかえりを告げてくれた。
レメディオは相変わらず涙ぐんでいる……アニキ思いなヤツだなあ。
「イレギュラー対策チーム、ただいま帰還しました」
「同じく無事帰還しました。……こちらは何チームと言えばいいのか分かりませんが」
後に続いたバランの口振りは少々皮肉っぽい。
自分たちも毎度協力しているのだから、対策チームにあたるのではとでも言いたげだ。
まあ実際、それくらい働いてくれてはいるものな。
「フ……最後まで同行させてもらったが、心躍る冒険と戦い……貴重な経験をさせてもらえたこと、本当に感謝しているよ……」
「私も、非常に有意義な一週間を過ごさせてもらいましたわ。またご一緒したいものですわね」
先輩方にそう言ってもらえるのは大変光栄だ。
特殊な案件でなくとも、一緒に何か依頼をこなす機会などがあれば嬉しい。
「さて、お前たちは今回も期待通り、ワールドスクリプト:イース・ミュールの危機を救ってくれた。対策チームの仕事も板に付き始めてきたな」
「まだ二度目ですけどね。……って、頻繁に起きるのはそれはそれでヤバいですけど」
「そういうこった。二度も世界を救えたってことは、対策チームの名に恥じない働きが出来てるってことなんだよ」
「ストレートに褒めてきますね……」
「そりゃ、イマジネーターとしてこれ以上ないくらいの活躍だからな」
世界を救う……確かにイマジネーターとして、というよりも一つの行いとして最上級のことを成しているのだろう。
オレたちは、幼き頃の憧れをこんなにも早く体現出来ている。
「とりわけ今回は、新規のワールドスクリプト……転移した先がどうなるかも分からん状況だったんだ。それで予定していた期間より早く任務完了とくれば、文句無しだろう」
「うんうん、二週間以上かかる可能性だって考慮していたからね。それを一週間で片付けてくれたんだから、
「と、いうことで! 今回も君たちには相応の加点を検討しているから、楽しみにしていたまえよ」
「おー、流石ジャンヌさん! 話が分かりますね」
ジャンヌさんの言葉に、イオナが笑顔で請け合う。
エイヴスの時はオレたちが五十点、バランチームが三十点の加点だったし、同じくらいはプラスされそうだ。
ここまでくるともう、他のチームはオレたちに追いつけなくなりそうだな……よっぽどこちらがサボらない限りは。
「それから、本件の報告だが……まずは昼食をとってくるといい。それから一チームずつ来てもらうことにしよう」
「午後二時半にダインチーム、その三十分後にバランチームとするか。……ユベールとシャーロットからも一応報告はもらっとくかね」
「じゃあ二人は午後三時半だね。そのスケジュールでいいかい?」
特に問題もないので、オレたちは了解する。
もう二時前だし、食堂もほとんど貸し切り状態だろう。
「場所は前と同じくB棟の会議室だ。じゃ、よろしく頼むぜ」
「了解です」
そこでひとまず解散の運びとなり、オレたちは腹ごしらえのためそのまま食堂へ向かうことにした。
マルのほか、今回はレメディオとトーマスさんも付いてきて、かなりの大所帯だ。
混んでる時間帯じゃなくて本当によかった。
「ほっほ、皆お疲れ様! お腹空いてるでしょう。特にダインくんたちは食堂の味が恋しくなってきてたんじゃないかい?」
「一週間以上も異世界に滞在してたそうだねえ。おばさんたちビックリだよ」
食堂に入るなり、ナオさんとルトさんがにこやかに話しかけてくれる。
この空気も久々だなあ、と思ったり。……それに鼻腔をくすぐる美味しい料理の匂いも。
「今日のお代は?」
とエスカーが聞くと、
「はは、アンタも分かってるねえ。もちろんタダにしといてあげるよ。夜もね」
「そうこなくちゃ」
……全く、ノリのいい人たちなことだ。
食堂に雪崩れ込んだ計十五名の生徒とオペレーターは、思い思いの料理を取っていく。
そして全員が着席した頃合いで、ユベールさんがこう告げるのだった。
「明日も労いの場は用意されているけれど、今日はこちらで自分たちを労うこととしよう。それくらいの働きをしたのだからね……」
「おー!」
いつも音頭を取っているルカは、ユベールさんの口上に同調する。
「みな、お疲れ様。……存分に食べ、休み、明日の式典にも元気で臨むとしよう……」
「ま、その前に講義を受けなくてはなりませんけれど」
シャーロットさんが横やりを入れるのに、ユベールさんは少しだけ切なげに笑う。
成績が悪いようには思えないけれど、アレかな。座学が苦手なタイプなのかもしれない。
「あ、バランもう食べてる!」
「フン、付き合う必要もないだろう……それにお前たち、二時半からの報告だとそれほど余裕はないぞ」
「た、確かに」
冷静に返され、ルカはハッとしてオレたちに視線を向けてくる。
……まあ、別に昼間っから乾杯だの何だのをする必要もないだろう。
「さっさと食べちまおう。報告に遅れるわけにはいかないし」
「はーい」
ということで、ユベールさんには悪いがさっさと食事に手を付けさせてもらう。
美味しくて安心感のある味を喜びつつ、オレたちは二時過ぎにはちゃんと食事を終え、B棟の会議室へと向かうのだった。




