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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
巡礼の支度 想造育成機関_アトモス学園
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26.勝者と敗者と

 その後、練習試合は最長三十分ほど続けられた。戦力差の明確な組だと一瞬で決着することが多かったが、拮抗していたり、或いは回復能力を有しているような相手だと長引く傾向があった。最後の組などはお互いに試合を諦めてしまい、メルシオネ教官もどちらが勝利だとはハッキリ宣言出来ず、どちらもお疲れ様でした、と労いの言葉をかけるほかなかった。

 オレとバランの試合が白熱していたのは言うまでも無いが、それ以降にも注目された試合がエスカーとルカの戦いだ。……いや、注目というより迷惑をかけていたという方が正しいかもしれない。二人のイマジネート能力は高い移動性能や広い影響力を有しており、それゆえ戦闘範囲がやたらと広がってしまったのだ。

 身体能力を強化して駆け回るルカに、エスカーは氷の礫を連射して応戦する。周囲の生徒は物凄い速さで走ってくるルカや、それを追うようにして発射される氷塊のために試合を中断せざるをえなくなったのである。結局、ルカがエスカーの胸元に拳を突き出して勝利、とはなったようだが。


「上手くいかないもんだねえ」

「かなり鬱陶しかったよ? 本人と同じで」

「ナチュラルに悪口を言うな、きみも……」

「エスカーへの評価はダインとボク、一緒だからね」


 あと、多分イオナも一緒だろう。心外だなあとは呟いていたが、関わってきたときから胡散臭かったんだから自業自得だ。

 めげずに絡んでくるところは評価しているけれど。


「コホン。えー、長丁場になりましたが大変お疲れさまでした。これでイマジネート能力についての理解は深められたかと思います。他のイマジネーターと敵対するという状況は、現実には発生しないでしょうが、だからこそ良い経験になると考え毎年行わせてもらっているのです」


 このエキシビジョンマッチは恒例なのか。先輩方もこんな風に同期と戦っているわけだ。

 つまるところ、学園に入学して二日目には、誰が強いか誰が弱いかがある程度見えてきてしまうということでもある。

 ……イマジネート能力を知るだけじゃなく、自分がどれくらいの強さなのかを意識すること。

 それもまた、この訓練で大事な要素かもしれないな。


「なお、今回行った練習試合の結果ですが……」


 むむ……この勝敗が成績に関わってきたりするのだろうか。そもそも成績の概念がまだ曖昧なのだが。


「勝者には千ペンド、敗者には七百ペンドを支給させてもらいます。本日中にはバンクの資金に反映されるはずなので、確認しておくと良いでしょう」


 マジか。それは嬉しい誤算だ、頑張ってバランに勝った甲斐がある。

 ……と喜びながらバランの方をちらと見ると、アイツもオレの方に顔を向けていたので視線がバッチリ交錯してしまった。……めっちゃ睨まれてる。


「めでたく勝利を飾れた方は、少し豪華な夕食にしても良いかもしれませんね。負けてしまった方も七百ペンドは支給されますから、やはり食事をランクアップさせても良いかと」


 どちらにしても、一食分以上の価値はある。節約するも良し、教官の言うように美味しい夕食にありつくのも良し、だ。

 勝利の報酬で食う飯、という響きは魅力的だよなあ。


「それでは、本日の講義はここまでといたします。後は皆さん、またゆっくり体を休めていただければ。……明日の講義については、テスタマイザーで一斉連絡いたしますので確認しておいてくださいね」


 次の予定は放送で、というパターンが多かったが、今回はテスタマイザーか。通知が来るから大丈夫だとは思うが、スルーしないようにしないとな。

 メルシオネ教官が解散を告げ、生徒たちは礼をした後バラバラに散っていった。……バランが最後にこっちへ一瞥をくれたが、気にしないでおこう。突っかかられなかっただけマシだ。

 オレは一旦イオナたちと合流して試合の感想を述べ合った後、夕食までは個々でのんびりすることで話をまとめた。時刻はまだ午後三時で、食事時にはまだ早い。


「そんじゃ六時だね」

「おう。遅刻するなよ、ルカ」

「朝じゃないから大丈夫だよっ」


 ルカはべーっと舌を出して駆けていく。……やけに可愛らしい仕草をするな、アイツ。

 まあ、疲れてベッドに潜り込んだまま寝過ごす、ということもあり得るから、本当に心配はしてるんだが。


「ふふ、私も疲れちゃった。今すぐ寝たいってほどじゃあないけどね」

「教官相手だったわけだもんな。いかに能力を使わないとはいえ」

「そうそう。身軽過ぎてびっくりしちゃう」


 イオナはメルシオネ教官と手合わせし、一撃でも当てれば勝ちと言われたので必死に追い駆け回ったが、結局かすりもしなかったらしい。

 レベルが違い過ぎたし、あれで負けになって貰えるお金が減るのは理不尽だと嘆いていた。

 

「はあ。三百ペンドくらいしか違わないしって思っとくしかないや。そっちはおめでとうね」

「代わりに敵視されたけどな? こっちは重たい三百ペンドなこった……」


 その重たさを噛みしめて、ありがたく夕食をいただくことにしよう。

 オレたちは演習場を後にし、解散の運びとなる。

 午前、午後と続けて体を動かしたし、オレは夕食まで部屋でのんびりさせてもらうことにするのだった。



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