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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
巡礼の支度 想造育成機関_アトモス学園
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24.実践訓練

 午後一時。演習場には新入生全員がきっちり集まっている。

 メルシオネ教官も時刻ピッタリにやって来て、目視で全員がいるのを素早く確認してから話を始めた。


「定刻になりましたし、始めさせていただきましょうか。先ほどの放送でもお伝えした通り、ここからはイマジネート能力を使って実際に戦いを経験してもらいます」


 そうは言ったものの、演習場内に魔物の類はないし、代わりになるような的もない。

 もしかして、オリーブ丘陵の方へ足を伸ばすのかと思いきや、


「ここにクジの入った箱を用意しました。皆さんにはこの箱から一枚取っていただき、書かれてある数字が同じ人と練習試合をする、このような流れになります」


 ……まさか生徒同士の練習試合とは。イマジネーターの能力を振るうのはまず魔物、と思っていただけにちょっとビックリだ。

 そもそも、まだ勝手が分からないオレたちが対人戦なんてやって大丈夫なのだろうか? ……いや、むしろ能力の弱い今やっておくべきとかなのだろうか。


「イマジネーター同士の実戦となると、技も多彩になるのは必定です。低級の魔物を倒すよりも考えることが増え、訓練として相応しいものとなるでしょう。……あまり能力が強くなり過ぎた後だと、こういう演習がリスキーになるから今しかない、という裏もありますがね」


 ――やっぱりか。


 イマジネートは魔物を討つための力……それも、古典的な闘技や魔法より強力なものだ。

 対人戦は今のうちに経験しておく、というのが大事なのだろう。イマジネートがどれだけ危険なものかも身を以て知ることが出来るし。


「なお、イマジネート能力が発現出来なかった人も一人いますので、その代わりは私が務めます。と言っても、攻撃は一切しませんので安心してください」


 ……あ、そうか。レメディオくんはイマジネート出来なかったからこの訓練には参加出来ないんだな。

 だから参加者数が奇数になり、メルシオネ教官が入らざるを得ないわけだ。


「では皆さん、この箱を――」


 と、メルシオネ教官が言い終わらないうちに、すっと手を挙げた人物がいた。


「おや、バランくん。どうしました?」

「教官、無作為に相手を選ぶのもいいんですが、こちらから相手を指定しても構いませんか?」

「……ふむ。バランくんの能力は中々優秀ですし、相手によっては危険かもしれませんね。……誰を指定したいのです?」

「それはもちろん――」


 ――ん? ひょっとして……。


「そこにいる、ダイン=アグナスくんですよ」

「えー……」


 嫌な予感が当たってしまい、オレは露骨に嫌そうな表情を浮かべてしまう。

 まあバランくんにとっては嬉しくない反応だ、


「おい、お気に召さないのか。せっかくこちらが指名してやってるっていうのに」

「せっかくって言われてもなあ……」


 上流階級らしい振る舞いというか、ナチュラルにこちらを下に見ているというか……彼にとってはそれが普通なんだろうけどさ。

 あまり深く関わると面倒臭そうな手合いなんだよなあ、こういうのって。


「そうですね……ダインくんとなら問題ありませんよ。彼の方が納得するかは別として……」

「ふん、怖気づいたならいいんだけどな?」


 安い挑発だ。イラっとはするけれど、あまり買いたくない喧嘩なんだよな。


「あ、アニキに勝てそうにないからビビってんすよ、絶対」


 バランくん――もうバランでいいや――のすぐ後ろにいるのはレメディオだ。エスカーが語っていた通り、どうも彼はバランの腰巾着らしい。昔からそういう力関係なんだろうな。

 しかし、どうするか……メルシオネ教官も止めるつもりはなさそうだ。例えばオレが絶対嫌だと拒絶したら、多分バランは勝ち誇った素振りを見せながらも内心苛立ち、他の相手にそのイライラをぶつける……なんてことが想像出来た。

 ……はあ。それなら一番いいのはやっぱり、オレがガス抜きになることか。


「仕方ない、ご指名通りオレが相手になるよ。期待に沿えるかは分からねえけど……」

「ふん、それでいいんだよ。素直に俺に従え」

「従うってか、戦うんだが……」


 うるさいな、と怒られる。……ううん、理不尽だ。

 これでバランが滅茶苦茶強くてボコボコにされたら最悪だなあ……。まあ、あまりネガティブな方向には考えないでおこう。


「大丈夫? 乗っちゃったけど」


 イオナが心配して声を掛けてくれる。


「あくまで訓練だし、もしボロ負けでもメルシオネ教官がちゃんと止めてくれるだろ」

「んー、そうだねえ……」


 納得はしていなさそうな言い方だが、イオナはそれ以上突っ込んでは来なかった。


「ふふ、面白そうだから早めに終わらせて観戦するか」

「エスカー、早めに終わらせる前提なんだ……凄い自信だね」


 呆れたようにルカが言う。いや本当、絶対勝てると思っているその自信が少し欲しい。

 いや、まさかマラソンのときみたく、早々に白旗でも上げる気なのか? まさかな……。


「さ、他の皆さんはクジを取りに来てください。誰とも合わない人が出てきますが、合わなかった人同士で戦ってくださいね」


 生徒たちはメルシオネ教官の前にぞろぞろと列を作り、五分ほどで全員がクジを引き終えた。

 そしてクジに書かれた数字を見て、自分の相手となる同じ数字の生徒を探していく。この作業にもまた五分ほどが掛かり。


「はい、これで準備は完了ですね。他の組とは十分な距離をとって……そうです。私がカウントをとるので、ゼロになったら始めてください」


 メルシオネ教官の言葉に、皆静かに頷く。演習場内には緊張感が漂ってきた。

 教官の相手は、どうやらイオナに決まったようだ。彼女もアドバンテージのある強者だし最適だろう。

 エスカーは……って、あれ? ルカと組になってるぞ。


「五、四、三、二……」


 おっと、余所見をしてる場合じゃなかった。今は目の前の相手……バランに集中しよう。


「一……始め!」


 実戦訓練が、こうして幕を開ける。

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