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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
巡礼の支度 想造育成機関_アトモス学園
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18.想造――イマジネート

「テスタマイザーのトップ画面には本とペンのマークがあります。目聡い方は気付いていたでしょうが、これがブースターを出現させるボタンなんですね」


 メルシオネ教官がそう言い、自身のテスタマイザーを操作すると、手元にブースターが出現した。

 生徒たちはおお、と声を漏らす。彼らにしてみれば、ブースターを見るのも昨日コーネリア校長が能力を使ってみせたとき以来だったな。


「――と、そしてこのブースターを使って能力の発現……イマジネートをするわけですが、ただ念じれば起動してくれるというわけでもありません。皆さんの中には苦手な方もいるかもしれませんが、ブースターの起動には魔力が重要になってくるのです」


 昨日、イオナから教わったことだ。

 ブースターに魔力を込めて、自分とのパスを作る。

 そうすることで初めて、ブースターは心象世界を読み取ってくれるのだと。


「魔力をブースターに向けて放ち、それが自身とブースターを繋ぐことをイメージしてください。この繋がりが確立されて初めて、ブースターは心を読み取り変化します。これが出来なければ何も始まりませんからね」


 魔力の扱いにはコツがいるし、学校の授業で少しやったかなというレベルの子が大半だろうとは思う。

 オレだってあのときは困惑した。何とか上手くいったから良かったものの。


「では皆さん……ブースターを出してみてください。全員が出し終えたら、そうですね……綺麗に並んでくれていますから、一列ずつ実践していきましょう」


 今しがた教わったように、オレはテスタマイザーの画面で一番目立っている本とペンのマークに触れる。

 すると瞬時にブースターがオレの胸元辺りに出現した。それを本は左手に、ペンは右手に持つ。


「ちなみにこのブースターは初期装備ですが、魔術工房イマジナルでより高品質な物を購入出来たり、或いは自分好みにカスタムすることも出来るんですよ。イマジネーターとしての活動に慣れるまでは関係のない話かもしれませんが、覚えておくと良いでしょう」


 ブースターの購入とカスタム、か。どこまで性能差が出るのかは分からないが、武器を新調して強くなれるなら、頑張ってお金を貯めてアレを買おう、なんて目標も出来そうだ。

 常に資金と相談にはなるけれど、良い装備で身を固めたいものだな。


「まず、私がお手本を見せます。行きますよ……」


 メルシオネ教官は意識を集中させ、魔力をブースターへ込める。


「――快刀乱麻クルセウス・マギ


 発動とともに、メルシオネ教官を中心にして旋風が巻き起こった。

 立ち込める砂埃に思わず目を覆ってしまう。風が止み、再び教官の方を見やると、彼の手には既に変化した武器が収まっていた。

 それは、金色に輝く細剣。煌びやかなのにも拘らず、優雅さをも兼ね備えたメルシオネ教官らしい得物……。


「……こんな具合に、発動に際して周囲に影響が出てしまうこともあるので何組かに分けて行うわけです。皆さん自身も、なるべく制御することを意識して能力を発動させてもらえれば……難しいとは思いますがね」


 能力発現によって周りに迷惑がかかるかもしれない――それを目の前で分かりやすく見せられたので、生徒たちから笑顔が消え、緊張感のある顔つきに変わった。

 終始穏やかな物言いだが、こうしてちゃんと生徒に注意を促して集中させている。上手いやり方をする人だ。


「さ、やってみましょうか。まずは最前列の五人から」


 早めに演習場へ来ていたものの、オレたちは三人とも前で講義を受けたいという性格じゃなかったので後ろの方……八列目にいた。

 オレたちがやってみせるのは結構後になりそうだから、それまでは個々の能力を見物させてもらうとしよう。

 最前列にいた五人の生徒は、一斉にブースターへと力を込め始める。

 そして、時間には差があったものの全員が能力の発現に成功した。

 出てきたモノも大したバリエーションだ。斧のようにちゃんとした武器を出したヤツもいれば、目の前に泥が発生したヤツもいる。

 半透明の蛇を出して本人がビックリしていたりもしたし、透明な壁を出現させた女の子までいた。


「きゃああ! 私、蛇苦手なの!」

「苦手意識も心の内ですからね……それが力になってしまう場合もあるんですよ。落ち着いて、魔力をブースターから切り離してください」


 メルシオネ教官が優しく諭すものの、具象化された蛇は意思を持っているかの如くスルスルと這っていく。

 余程恐怖心を持っているのか、蛇の口から伸びた牙は異様な長さを誇っている。暴走するとちょっと危なそうだ。


「ふっ」


 制御不能と即座に判断したメルシオネ教官は、細剣を蛇に向かって突き出した。

 その切先は、蛇にギリギリ届かなかった――はずなのに。蛇の体には大きな穴が空き、そのまま雲散霧消してしまったのだった。


 ――見た目通りの武器じゃあないわけだ。


「申し訳ない、なるべく自己制御でとは思っていましたが難しそうでしたので」

「は、はいぃ……ありがとうございます」


 蛇を生み出してしまった女の子は震える声で教官に感謝を伝え、そして震える手でブースターを回収する。


「私もうオペレーターになろうかな……」


 彼女の、そんな悲痛の声も聞こえてくるのだった。


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