15.5 幕間_コーネリア
夜の帳が下りて――。
今日の仕事に一区切りをつけ、残った書類を脇へ除けた後、アトモス学園の校長コーネリア=セントリオはとある相手と連絡を取っていた。
かれこれ五分ほど会話は続き、その内容はほとんどが今日行われた入学式についてだった。
「……そうですかい。ま、貴方がそう言うんなら大丈夫でしょう」
送話口の向こうにいる相手はもちろんだと笑う。
コーネリアも、別に相手のことを信頼していないわけではなかった。
その人は、彼をして憧れを抱き続けている人物だったのだから。
「しかし……スポットも残らなかったし、あれはやっぱり王国の仕業ですかね」
相手はしばらく沈黙した後、断定は出来ないが恐らくは、とだけ口にした。
あの人に断定出来ないなら、こちらが分かるはずもない。探りを入れるだけ無駄だろうとコーネリアは判断する。
「……ええ。それじゃあまた」
別れの挨拶を交わし、通話は終わる。受話器を通話機に戻して、コーネリアは一つ溜め息を吐いた。
対等でいい、とは言われているものの、彼にとって相手の人物はまだ雲の上に近い存在であり、会話をするのにはそれなりに神経を使うのだ。
豪胆に見える彼の、それは意外な一面だった。
「はあ。まずは一日……だな」
椅子をくるりと半回転させ、後ろにあった窓から夜空を眺める。
雲一つ無く、月の映える綺麗な夜空。
コーネリアは、運命論のような考え方が嫌いな人間だった。全て物事はそうなるように出来ている――そんな諦めにも似た思考は全力で否定したい、そういう風に生きてきた男だったのだ。
……けれど。
「……今日の出来事が運命だって言うんなら……それはそれで面白いんじゃねえかと思うけどよ」
静かに目を閉じ、コーネリアは微笑する。
この劇的な邂逅が、やがて大きなうねりとなっていくのならば。
どんなに運命だと絶望したくなるような困難も、乗り越えていける。
そう、信じたくなった。
「斯くして子羊と預言者は出会った、と。さあ……ここからが頑張りどころだ。俺や学園……いや、生きとし生けるもの全ての――か」
そうして、夜は更けていく……。




