表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
第一の巡礼 悠久原生世界_エイヴス
PR
160/173

154.王国の配下たち

 遺跡の魔術式が発動する前は、その熱気によってとてもじゃないが進めなかった火山道。

 それが今、降り注いだ水のマナのおかげで難なく歩けるようになっていた。

 大地を這うような炎も、今はどこにも見当たらない。

 これなら終末ノ獣が潜んでいる火口まで、何とか辿り着けそうだった。


「はあ……とは言っても、火山なんだよねえ」


 ルカが目的地に目を向けながら溜め息混じりに呟く。

 ……終末ノ獣が一瞬にして造り上げたものではあるが、火山の標高は決して低くはなかった。

 火口部分に到着するまでどれくらいかかるだろうか。頑張って上ったとして、一時間くらいは必要そうだ。


「上るだけならまだマシだと思うよ?」


 ルカの愚痴に対して、エスカーはそう返し、


「多分、一番の問題は――」


 気配を探るように目を細めると、


「――来た、かな?」


 その言葉とほぼ同時に、吹き付ける一陣の風を感じた。

 この風は……。


「……まさか、あんな手を残していやがるとはな」


 上空から、オレたちの眼前に降り立った四人の男女。

 千年王国の構成員たち……!


「あの途轍もないバケモノを召喚すれば終わりだと思ってたんだが。余計な仕事を増やしてくれる」

「……そう簡単に世界を壊させてたまるか」


 オレの啖呵に、四人のまとめ役らしいシニカル男が舌打ちを返す。


「フン、だからイマジネーターは気に入らん。下らない正義感ばかり振りかざしやがって」

「自分勝手な連中よりはマシだろうが」

「そうですね、私もダインくんに同意です。生きるためとはいえ、何をしても許されるわけではないでしょう」

「それが下らないと言ってるんだよ」


 吐き捨てるように言い、構成員たちは揃ってブースターを取り出した。


「今、ディオン様は獣の掌握に集中している。ここから先は一歩たりとも進ません」

「……獣の掌握だって?」

「おっと、口が滑ったか」


 男はまた舌打ちをしながら呟く。


「まあ、隠すほどのことでもないさ。あれほどのバケモノだ、我々でも完全な従属なぞ出来はしない。最低限、こちらに牙を剥かぬよう刷り込めればいいのだが、エネルギーを蓄え始めた段階でも命令を跳ね除けるほどの力を有していた」


 そこに、と男は続けた。


「あの訳の分からん術式が発動し、終末ノ獣のエネルギーが一時奪われた。予想外ではあったが、ある意味それはこちらにとってもラッキーだったということだ。獣が弱った状態なら、ディオン様が命令を刷り込むことも恐らく可能になる」

「負け惜しみみたいにも聞こえるけど?」

「そう思っていてくれれば早く世界が滅ぼせるさ」


 エスカーの挑発にも涼しい顔を崩さない男。

 元々ポーカーフェイスなんだろうが、それでもあの余裕なら、奴の言葉は真実である可能性が高い。

 苦し紛れの台詞だとは考えない方がいいな。


「ほどなく獣への刷り込みは完了するでしょう。私たちはそれまで時間を稼ぐのが仕事……」

「ガハハ、まあお前たちなど俺たちだけで始末しちまえるがな」

「……それはやってみなくちゃ分からないよ」


 冷たく言い放ち、イオナはテスタマイザーからブースターを出現させる。

 それを合図のようにして、オレや他の面々も同じく戦闘の構えに入った。


「……すみません、教官」

「どうしました、イオナさん」

「今、こちらは六人で相手は四人です。戦闘力に開きはあるかもしれませんけど、私たちは目的地に急いで辿り着かなきゃいけない」

「それは……」


 オレにもイオナの言わんとしていることは分かった。

 しかし、それはリスクの大きな選択だ。


「いずれにせよ、世界が滅ぼされちゃったら俺たちもお終いだし、いいんじゃない? 彼女の提案に乗っても」

「……教官としては、頷き難いところですが」

「私も異存はありません。ルカちゃんは?」

「ボクも無いよ。そのときそのときで最善のことをする、それだけだもの」


 どうやらチームメンバーの気持ちは一緒らしい。こういうときにはちゃっかり団結するんだものな。

 ……その気持ちに異を唱える気にも、オレはなれない。


「……仕方ありません。終末ノ獣を止められなければ負けなのは事実。心苦しいですが、ここは皆さんにお任せします」

「そうこなくちゃ」

「ただ、必要なのは足止めです。自身の無事を最優先に考え、撤退を念頭に置いて戦ってください」

「ええ、分かってます」


 イオナの言葉に、メルシオネ教官は妥協して頷いた。

 ……危険な賭けのようだが、これでとりあえず作戦は決まりだ。


「何をゴチャゴチャと話し込んでいる? そんなに隙だらけだと――」


 男はブースターを双剣に変化させると、流れるような体捌きでこちらへ襲い掛かる。


「――むッ!」


 それをメルシオネ教官も素早い動作で受け流した。

 細剣の妙というべきか、ことに攻撃の威力を殺すという点で技が光る。


「今です!」

「はい!」


 一瞬の油断を突くようにして、オレとメルシオネ教官は全力で駆け出す。

 ここで戦力を分散するとは思わなかったのか、残った三人は呆気に取られた様子で初動が遅れていた。


「この――」

「――クラッグス!」


 オレたちの左右に岩の壁が突き出て、敵の射線を遮る。

 機転を利かせてくれたイオナとフェイに感謝だ。


「アンタたちの相手は、私たちで十分だよ」

「小娘どもが……!」


 挑発も存外効果的だったようで、時間稼ぎというのはどこへやら、四人組はすぐオレと教官の追跡を諦めたようだ。

 二人だけではどうせ止められない、という余裕もあるんだろうか。それは驕りだと言ってやりたいところだな。


「……無事でいてくれよ」


 ぽつりと、そんな呟きだけを置き土産にして。

 オレと教官はディオン=マナリーと終末ノ獣が待つ山頂を目指し、険しい斜面を上っていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ