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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
巡礼の支度 想造育成機関_アトモス学園
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13.学園案内②

 外へ出て、オレたちはA棟とB棟の間にある道を進んでいく。B棟の東には入学式を行ったホールがあったが、そこはもう割愛だ。

 進む先は北。遠くの方にはなだらかな丘陵が見える。


「向かって左手側に見えてくるのが演習場だ。本来ならお前たちが退避するはずだった場所だな」

「もう、校長先生。反省してますってば」

「反省しろとまでは言ってないんだが、やっぱ悪いことしたとは思ってるのか?」

「う……むう~」


 ……イオナのヤツ、すっかり手玉に取られてるな。

 それはさておき、演習場だ。かなり広大なスペースがとられていて、地面は土だがしっかりと整備されて滑らかだ。

 これなら五十人規模で訓練を行っても何ら不足はなさそうだと思える。

 奥の方には小さな物置があり、中には整備道具が入っているそうだ。訓練を終えたら生徒と教官で出来る限り地面を均しておくことになっているという。

 まあ、中等学校でだって校内の掃除はあったし、体育の授業で出した道具は片付けさせられた。これは当たり前のルールだろう。


「そんで、少し進んで右手側にあるのはC棟。あそこは外部の企業が入ってるのと、生徒たちが行っている部活動の部室、それに生徒会室が入ってる」

「外部の企業、ですか?」

「ああ。一つは魔術工房イマジナルの出張所。イマジネーターである以上、ブースターなんかの整備や新調はすぐ出来た方がいいだろ? あの出張所にも職人が常駐してくれてるから、いつでも装備を整えられるってことさ」

「そうか、イマジネーターの道具はアトモス学園で製造されてるわけじゃないですもんね」

「ウチはあくまでイマジネーターが所属する機関だからな。……そしてもう一つが、カインズ商工会の出張所だ。名前を聞いたことくらいはあると思うが、この世界の商売を円滑化させるための組織で、端的に言えばモノの売買を行っている。素材を買い取り、必要な所に販売して経済を回してるわけだな。ここまで言えば、出張所がある理由も分かるだろう」

「魔物を倒して手に入れた素材を売ったり、一般的な装備や道具を買ったりするため、ですか」

「その通り。どっちも頻繁に世話になる相手だから、関係は良好にしておくのが吉だぞ」


 魔術工房イマジナルに、カインズ商工会か。コーネリア校長の言うように、良き取引相手と出来るように努めたいものだ。


「あと、部活もあるんですね。イマジネーター稼業だけでかなり忙しいかと思ってましたけど」

「むしろ、だからこそ他で息抜きが必要ってことさ。随分昔に生徒側から打診があって始まったそうでな、今は四つの部がある。フットボール部に文芸部、美術部に……後はスイーツ同好会だったな」


 息抜きとして部活が必要、と言われると確かにそうだなと納得出来た。しかし、三つ目までは割とメジャーな部活動だが……スイーツ同好会なんてものまであるのか。


「最初の土曜日に各部活動の勧誘日もあるから、興味があれば顔を出してみるといい。今のところで気になった部活はあるか?」

「んー……多少絵を描くのは好きですけど。部に入ってやるほどじゃないからなあ」

「へえ、意外。ダインって絵が好きなんだ」

「気持ちを落ち着けるのにいいんだよ。そういうイオナは気になった部活、あるのか?」

「私? うーん、やっぱり……スイーツ同好会?」


 言うかなとは思った。甘味の魔力にはやはり女子として惹かれるものがあるのだろう。

 実を言えば、オレも甘い物は好きだし……それこそ部に入るほどではないが、色々食べに行くのは面白いんだろうなとは感じている。


「おや、校長先生じゃないか。……そちらは新入生かな?」


 話をしていると、C棟から誰かが出てきた。教職員ではない……上級生のようだ。


「おう、シエラか。ちょっと新入生二人の施設案内をな。そっちは生徒会の仕事か?」

「この人数で回していると、中々楽にならないからねえ。しかし、ふむ。二人だけの施設案内か」


 この女性、生徒会に所属している人なのか。なるほど仕事の出来るハイスペック人間という印象は受ける。

 基本は黒だが所々が白いメッシュの髪は肩より少し下辺りまで伸ばしており、端の方が僅かにカールしている。

 鮮やかな赤い目はやや吊り上がり気味で、鼻筋が通っており、まるで彫刻作品のような綺麗さだ。

 服装自由なこの学園で、カジュアル系ではあるがスーツを着ているのも、彼女のそうした印象を強めていた。


「ウワサじゃ新入生なのに魔物を退治してしまった子たちがいたとか……どうも本当だったみたいだね?」

「相変わらず察しがいいこった。ま、それで散歩がてら俺が案内してるわけだよ」

「フフ、そちらも相変わらずの人の好さで。……自己紹介が遅れてしまったが、九十七期生のシエラ=ホーバーだ。生徒会長を務めている。二人とも、入学おめでとう」

「あ……ありがとうございます。ダイン=アグナスです」

「イオナ=ピルグリムです。よろしくお願いします」


 シエラさんに倣って、オレたちもおずおずと自己紹介を返した。……九十七期生、つまりオレたちより三つも上か。

 イマジネーターとして三年以上耐え抜いている精鋭で、しかも生徒会長とは。

 先輩はオレたち二人を代わる代わる見つめていたが、


「イオナ、か。面白い名前だね」

「あはは……面白いはあんまり言われたことないですけど、まあ色々言われます」

「ネガティブなことは気にしなくていいさ。その名前は大事にすべきだろう」

「ええと、どうもです」


 名前で苦労してきただろうことをすぐ察してそんなことを言えるのは、気配りが出来るというか……人の心を掴むのが得意なのかもしれないな。生徒会長をやっているほどなのだし。


「こちらも少し休憩にと思って外に出て来てみたが、二人に会えて良かったよ。そうだな……もし生徒会に関心を持ってくれるならいつでも来てくれ。イベントの企画・予算管理や部活動の費用割り当て、備品の管理などなど……忙しいゆえ人手は常に募集しているからね」

「ま、まあ……検討しときます」

「私も同じく……」


 いきなりの勧誘はちょっとビックリするが、まあ悪い人ではなさそうだ。

 オレは生憎、生徒会でやっていける自信がないから期待には沿えないだろうが。

 シエラさんは、仕事に戻るからといってまたC棟へと引き返していった。彼女との話が、図らずとも生徒会の説明になってくれたな。


「生徒会長を買って出てるだけあって、あいつは学園内でもトップクラスに優秀だ。ここで会っておけたのは良かったかもな。生徒会のことじゃなくとも、何か困ったことがあれば相談に乗ってくれるだろうさ」

「見た目からして何でもこなせそうな人でしたもんね。三つも上だと、相談すること自体がハードル高そうですけど」

「ねー。まあ、いつかそういう機会もあるかくらいに思っておけばいいかな」


 頼れる知り合いが一人増えたというだけでも、ありがたいことだ。

 人との交流が苦手とはいえ、学園生活を送る上で人脈の太さはとても重要なものだろう。


「とにかく、これでC棟の案内も終わりだな。次が最後のD棟……生徒たちが休息する場所、つまり寮だ」


 オレたちイマジネーターが寝食を共にする寮、そこが案内の終着点か。

 C棟の外壁に取り付けられた時計を見ると、時刻は三時になろうかというところ。施設案内以降の予定はなさそうだし、そのまま寮でゆっくりする、というのがいいかもしれない。

 ただ、昼食をとれなかったのは痛い。黙ってはいるが、結構お腹は空いてしまっている。少し待てば夕食の時間にはなるけども。


「そうだ、二人とも腹が減ってるだろ? もうすぐ夕食だが、まあ軽食くらいは出すように頼んでやろう」


 ……マジですか。

 流石は校長先生だと、オレの中での彼の評価が一段階上がるのだった。


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