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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
巡礼の支度 想造育成機関_アトモス学園
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12.学園案内

 校長室はB棟にあったので、オレたちはこのままB棟から案内を受けることになった。

 ガイドのコーネリア校長は、書類から解放されたせいか少し楽しげだ。


「俺が仕事してる校長室の隣には職員室がある。さっき新入生を誘導してくれたメルシオネや他にも数名、ここで色々準備してるのさ」

「数名? 結構少ないんですね」

「少数精鋭なもんでな……というのもあるが、実は生徒数がそこまで多くないんだよ。新入生は毎年五十人ほど採用するんだが、三年経つ頃にゃ五割いなくなってるし、五年目になれば更にそこから五割はいなくなっちまう。今在籍しているのは百四十人くらいか」


 要するに、一番上の五年生まで残るのはほんの十数名。

 教職員が苦労して育成しても、それだけしかイマジネーターとして大成しないのは辛い現実だな……。


「座学は最低限でいいし、何なら四年目以降は座学もない。その頃にゃ、学生というより職業になってるわけさ。イマジネーターの特殊なところだな」

「若いうちしかなれない職業、ですもんね」

「そういうこった」


 その能力を四十過ぎても使えるこの人は、本当に凄いのだろうけど。

 職員室を通り過ぎて、オレたちは二階へ。歩きながら、ここには放送室や賞状・トロフィーなどの記念品置き場、講義用の備品倉庫などがあると説明された。

 そして、一階には応接室と会議室があった。魔物退治の依頼やイマジネーターの広報活動など、外部からの訪問客は結構多いようだ。派遣されるイマジネーターが話を聞くこともあるとのことだったので、オレたちに関係がない部屋、というわけでもないようだった。


「B棟はこんなもんだ。ここは主に職員用の建物だからな、お前たちにとってはここから先の方がよく使う場所になる」


 B棟を出て、オレたちはA棟へ。さっき歩いてきた道を引き返す形だ。

 あのときも奇異の目は向けられていたが、そこへ更にコーネリア校長が加わったものだから、尚更注目度が上がっているようだった。ああ、視線が痛い……。

 そんな心など知る由も無く――或いは知っていて楽しんでいるのか? コーネリア校長はゆったりとしたペースで歩を進めていく。


「よし、到着だ」


 A棟の中へ入り、ようやく視線がなくなったので胸を撫で下ろす。

 オレたちの戦った跡を見て、コーネリア校長はよくこれくらいで抑えてくれたなと改めて感謝をくれた。


「一階は医務室と測定室、トレーニングルームがある。トレーニングルームは言わずもがなとして、測定室は専用の装置で細かく能力を計測できるところだと思ってくれればいい」

「体力とか魔力とか、数値化出来るんだって」

「へえ……」


 自分の力量が明確な数値で分かるというのはありがたいな。魔物についての事前情報を得ておけば、自分が敵う相手なのかを判断する物差しになる。


「これにも簡易的な測定機能は備わってるんだがな。こうやって――」


 コーネリア校長はそう言いながら、左腕のデバイスを操作する。

 間近で見ると、本体そのものは小さめなのだが、そこから半透明のスクリーンのようなものが浮かび上がっており、そこに指を触れて操作しているらしい。なので見た目よりは幾分操作し易そうだった。

 測定開始を示す電子音がデバイスから鳴った後、彼の体に青白い光が輪のように生じ、それが頭から足先まで数回往復して、今度は完了を示すらしい電子音が響いた。


 コーネリア=セントリオ 年齢:45 性別:男性

 想造能力:武具の王(ケントゥリオ)……練度:S

 

 体力値    ……680 A

 魔力値    ……370 C

 想造値    ……380 C

 攻撃値    ……660 A

 魔法攻撃値  ……340 C

 防御値    ……610 A

 魔法耐性値  ……470 B

 敏捷値    ……530 B


 能力総合ランク:B


 ……半透明なテレビのモニター状のものがデバイスから出力され、オレたちにもコーネリア校長の能力値――ステータスが確認出来た。

 これ以降も幾つか毒への耐性など細々とした特性は続いたのだが、多岐に亘るし全てを把握するのは不可能というものだった。


「と、まあこんな具合だ。簡易的なんで下一桁は切り捨てられてる。……悲しいかな、この歳になるともうBランクまで落ちちまってるんだよな」

「いやいや、同年代でそこまでの人はいないと思いますよ……?」


 イオナがそうツッコミを入れる。オレはまず基準を知らないのだが、彼女の言うようにどのステータスも基本的にかなり高いことは分かる。

 聞くと、どうも最低ランクはEで、最高はSまであるらしい。コーネリア校長は全盛期、ギリギリSに届く水準まで達していたのだとか。それは確かに凄い。


「歳には勝てないわけだが、果たしていつまで前線に出られるかね。いつでも辞められるよう、次期校長のアタリも付けておかないと」

「そういうの、生徒の前で言います……?」

「ははは、それもそうだ」


 この人もこの人で、竹を割ったような性格をしているな。

 校長という重大な役職の割に、とても話しやすい人なのはいいことかもしれないが。

 A棟にもエレベーターはあるものの、スムーズに回れるようにとコーネリア校長は階段で上階へ向かう。

 二階はほぼ丸々生徒用の講義室で、同じ内装のものが計三室あった。四年生以降は座学がないと言っていたし、各期生で一室ずつということだろう。

 一年目は大勢いるが、三年目の講義室はガラガラ……という絵面が想像出来て、ちょっと悲しくなってしまった。

 それから、端には一つ生徒用の会議室もあるとのことだが、こちらの利用頻度は少ないようだ。


「三階は資料室、それから依頼掲示室ってのがある。魔物討伐の依頼が貼り出されたりしてるんだが、今じゃこのデバイスで受諾や報告が出来るようになってるんだよな。便利な世の中になった」

「じゃあ、ここはもうあんまり利用されてないんですか?」

「アナログな方が分かりやすいってヤツもいるし、一番のメリットは難易度やアドバイスを受付に聞けるってとこだろう。後は、資料室にしか出さない依頼もたまにある。情報をあんまり広めたくないものとかな」


 デジタルにはデジタルの、アナログにはアナログのいいところがあるということか。

 アドバイスが聞けるんなら、最初のうちはこちらを利用するべきなのかもしれない。


「で……最後の階だな」


 階段を上り終え、四階に到着する。

 そこはこれまでの階層と違い、一つの部屋が全てを占めているようだった。


「ここにあるのはオペレーションルームだ。あまり知られていないんだが、イマジネーターとして活動する際には基本的にオペレーターというガイド役が付くんだ。ここでオペレーターが指示を出したり情報を提供したりすることで、イマジネーターは円滑に任務を遂行出来るって寸法さ」

「そんな役割の人がいるんですね……確かに知らなかったな」

「現地にいないからこそ、状況を俯瞰的に見て適切な解を示すことも出来る。オペレーターも非常に重要な役割を担ってるんだ」


 危険な状況に追い込まれ、イマジネーターの思考がパニックに陥っても、その危機から脱する道を提示してくれる。

 優秀なオペレーターがいれば、イマジネーターも安心というわけだな。


「ちなみに、オペレーターもこの学園の生徒だ。最初からオペレーター希望という者もいるし、創具で能力を発現させられずオペレーターに転向する者もいる。いずれにせよ、オペレーターも仲間の一人だという認識はしっかり持ってほしい」

「ええ、もちろん。さっき話してくださった、多くを護れる道……オペレーターの手腕で救われるイマジネーターの命も沢山あるでしょうから」

「……ははは、良いことを言う」


 オレの感想を、コーネリア校長は気に入ってくれたようだった。

 至極当たり前のこと……とは思ったが、前線に立たない人をそれだけで下に見るようなヤツは一定数いるのかもしれない。

 その言葉一つが、命を救ってくれるかもしれないのに。


「ダインって、そういう適性もあるのかもね」

「どうかねえ。他人を動かすってのは苦手だしさ」

「ああ、そんな感じはするかも」


 イオナは腕組みをしながらうんうんと頷く。……オレはそういう風に見えるのか、やっぱり。


「……さ、A棟はこれで以上だ。あともう少し、我慢して付き合ってくれよ」

「いや、全然我慢じゃないですって。お願いします」


 コーネリア校長の説明を聞きながらの案内は、見識も広がって素直に面白い。

 イレギュラーな展開だが、これはこれで良かったという気持ちになっている。


「おう。お次はC棟だ、行くとしよう」


 ニヤリと笑うコーネリア校長に笑みを返す。

 そしてオレたちはA棟を後にし、次の場所へと向かった。

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