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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
第一の巡礼 悠久原生世界_エイヴス
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127.各々の報告②

『アニキ……! ああ、本当に良かったす……!』


 全員で拠点に帰還して、ロウディシアとの通信を開始したオレたち。

 さて報告を始めようかという時に、まだオペレーター室に残っていたレメディオが割り込んできてまず発したのがそんな声だった。


「落ち着け……無事という報告は昨日受けていただろう」

『そうっすけど……本っ当に心配してたんすよ……!』


 通信越しに、鼻をすするような音まで聞こえてくる。

 その音で、向こう側にいるレメディオがどんな顔をしているか容易に分かった。


『……あと、他の人たちも』

「ウチらはオマケかい!」


 エステルちゃんの鋭いツッコミが飛ぶ。

 しかし実際、バランのときとは凄い温度差だ。他のメンバーのことも、もう少し慕った方が良いと思うんだがなあ。


「にしてもアレだね、君のすすり泣きがしっかり聞こえるくらいには通信状況も良くなったんだ」

『なっ……馬鹿にするなよ、エスカー……!』

『はいはい、気が済みましたかレメディオさん。……そうなんです、魔術工房イマジナルの方々が奮闘してくださっていて、かなりのスピードで修復が進んでいるんですよ』


 マルがレメディオを押しのけ、通話を変わって状況を知らせてくれる。

 やはり技術的な問題は技術畑の人たちが対処してくれるに限るな。


「この調子だと、明日にはボクたち帰れそうかな?」

『断定はしかねますが、そう思っていただいても結構かと。ただ、流石に朝イチは無理ですよ』

「ふふ、そこまで贅沢は言わないわ」


 明日には、アーテミーで祭も行われる。

 アンドルーさんがちらっと説明してくれたが、その日は基本的に朝から晩まで街中がお祝いムードで、各所に飾り付けがされ出店も沢山並び、まさにお祭り騒ぎになるのだという。


『祭がある、というのはお聞きしています。校長も、エイヴスからお誘いがあったなら参加して行けばいいとのことでしたし、帰還を急ぐ必要はありませんよ』

「ああ、遠慮なく参加させてもらうとするさ。一人、帰りたそうな顔してる奴はいるが……」

「祭への参加は義務じゃないだろう。酷い目に遭ってるんだ、帰りたいと思って何が悪い」


 悪いとは言ってないんだけどな……実のところ、バラン自身も文句を垂れておきながらちょっとは罪悪感があるんじゃないか?


『復旧次第帰還するのも構いませんが……せっかくですし、皆さんと祭に参加してはいかがです』

「ふん……せいぜいこの世界の祭のレベルを確かめるとするさ」


 一体どこへ向けて喧嘩を売ってるんだ、それは。


『と……噂をすれば』

『おう、お疲れさん。コーネリアだ』


 コーネリア校長も通話に参加してくる。

 

「お疲れ様です。校長も忙しく動いてくださっているようで」

『俺はここでどっしり構えてるだけさ。動いてるってんなら、ジャンヌさんの方がそうだろうよ』


 まあ、常に異世界を調査しているジャンヌさんと比べてしまうと負けているのかもしれないが。

 あの人はちょっと関わっただけで超人クラスだと直感したほどだからなあ。


『そんで……今日のところはどうだった』

「はい。本日は大きな騒動も無く、私たちは千年王国の拠点調査を行う班と、エルフの里の復旧作業を手伝う班に分かれて活動しました。それで――」


 活動内容について、メルシオネ教官は二、三分ほどで簡潔に説明していく。

 その間、コーネリア校長も他の人も口を挟むことなく静かに聞いていた。


「――以上が本日の報告になります」

『……そうか、犠牲者は里のエルフだけじゃなかったか……』


 全てを聞き終え、コーネリア校長は嘆息を漏らす。

 これまでは、過激な思想を持つ者が誘いこまれ、餌食となったのだと推測されていたが、それに加えて無辜の住民までもが犠牲になっていたというのはなおさら心の痛む話だ。

 校長だけでなく、隣でマルも溜め息を吐くのが確かに聞こえた。


『実は今朝、セラフィス教会の方から連絡があってな』

「教会から?」


 反応したのはイオナとエレンちゃんだ。

 そうだった、エレンちゃんも教会のシスターだったよな。イオナのことばかり頭にあって失念気味だった。


『ああ。あちらさんからの助言というか注意というか……イレギュラーの発生数或いはイレギュラー化してしまった人数の把握に努めてもらいたいとのことだ』

「……奇遇なことに、先ほどイオナさんも気にしていましたね。ちなみに、その理由については?」

『何でも、イレギュラーの発生数ってのは尺度なんだと。発生する数が多いほど、その世界の危険度が高まる……』

「そんな関連性が? ……分かりました、一応調べられる限りは調べてみますが、千年王国が口を開かない以上期待は薄いと考えてください」

『流石に数をキッチリ掴めるとは思っちゃいねえさ。とりあえず頭には入れておいてくれ』


 イレギュラーの発生数が、世界の危機――イオナが話してくれた終末の発生確率と相関関係にある?

 つまり、イレギュラーが大量に出現してしまうような世界は、それだけ終末に至る危険性が高いギリギリの世界だということなのか。

 ……いや、純粋な数だけには留まらないな。千年王国は複数の人間を実験材料にして、一体の強力なイレギュラーを造り出していた。

 そんな事例もあるゆえに、セラフィス教会はイレギュラー化してしまった人数という表現もしたんだろう。


「……イオナ」

「……ん」


 目配せをすると、イオナは申し訳なさげに頷く。

 やはり彼女は、この関係性についても認識していたらしい。

 さっきは明かさなかったが、教会が情報を開示したから、実は私も知っていたと仕草で教えてくれたようだった。


『千年王国の拠点については、エイヴスとの接続が修復してから技術職の奴らに調査してもらう予定だから、今は成果が無くとも構わん。ま、聞く限りじゃ大した情報は得られなさそうだがな』

「了解しました。引き続き調査したものか考えていましたが、そういうことなら止めておきましょう。明日は祭もありますし、街で待機とします」

『それがいい。人も賑わうだろうし、何か起きちまった際には被害が大きくなりそうだからな。……ま、純粋に楽しむのも大事だが』


 何か起きた時……か。

 そうならないよう祈りたいが、浮かれている瞬間が一番の隙なのは事実だ。

 千年王国の奴らも当初、ディオンさんへ勧誘を行った際に返答期限を祭の日までとしていたようだし、そこで事を起こそうとしていた可能性は十分あり得た。

 オレでも予想出来るくらいだし、その点はアンドルーさんサイドも重々承知しているのだろうが。


『ともかく、明日一日はそちらで警戒しつつ過ごしてくれ。修復作業等の完了次第連絡はするつもりだから、そこで改めて打合わせしよう』

「はい、よろしくお願いします」


 そして通信は切れる。

 あちらの修復作業については良くも悪くも予定通りだったが、もたらされた情報は重要な意味を持ちそうだった。


「……イレギュラーの発生数が尺度、ですか。これはますます気を抜けませんね」

「ええ。少なくとも明日まで、オレたちでしっかりエイヴスを守りましょう」

「それが私たち対策チームの役目ですものね」


 そう、フェイの言うようにイレギュラー対策チームはイレギュラーそのものを倒せば終いというものではなく。

 その発生が暗示する危機そのものに対処するのを忘れてはならない。

 ひいては、それがイオナの語る戦い……そして夜明けにも通ずる可能性があるんだしな。


「我らも微力ながら、助太刀するでござるよ」

「う、うん。せっかくここにいるわけだからね」

「せやな。助けられた恩はまだ返せてへん感じするし」

「おう! 暴れるだけでいいなら頑張るぞ」


 バランチームも協力的でありがたい。

 リーダーは消極的だが、この勢いの多数派意見には逆らえないだろうさ。


「……ふん」


 ほら、文句は言えない。何だかんだお前も頼りにしてるんだぞ、バラン。


「では、今日もこれで自由時間としましょう。お疲れ様でした」


 昨日と同じように、教官は解散を告げる。これにてひとまずの活動は終了だ。

 さっきの話にもあったように気は抜けないが、明日に備えて英気は養っておかないとな。

 そんなことを思いつつ、オレは拠点を離れ夕食まで適当に時間を潰すのだった。


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