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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
第一の巡礼 悠久原生世界_エイヴス
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125.探求・研究・世界の危急③

 イレギュラー発生が示す危機が顕在化したときに起こる災厄。

 教会が終末と呼称したそれは、具体的な中身は分からないものの、そのニュアンスだけで相当ヤバいことなのだと思わされた。


「世界の終わりか……小さな世界とはいえ、エイヴス全体が滅んじまうような事態って、どんなのだよ……」

「私も流石に想像つかないなあ。むしろ、オーバーなんじゃないの? って思いたいくらい」


 セラフィス教会が被害を過大に見積もっているかもしれない、か。

 しかし、過小に見積もっていてはいざと言う時対応出来ないし、大げさなくらいが妥当なんだろうが。


「だから、終末という事象が起きた上でそれを乗り越えられたのなら、見事解決ってハッキリ言えるんだけど」

「そうなっちまったら、解決どころか生きて帰ることすら難しそうだぞ……」


 世界が滅ぶ。

 そんな最悪の事態を前に、どう立ち向かえばいいというのか。

 自分や仲間の命を守りつつ、何とかロウディシアへ逃げ帰る……ということすらも難題なのではないか。


「そこまでの事態にはならないと信じたいけどね。だって、千年王国はエイヴスを支配したいって言ってたし、滅んじゃったらどうしようもないもの」

「確かに、目的は支配であって滅亡じゃないもんな……」


 ……だったら、王国はあくまで道具としてイレギュラーを使っただけで、やはり問題の本質ではない?

 奴らがイレギュラーを利用した結果として、別の何かが起きる可能性があるとか……どうなんだろう。


「はあ、結局考えこんじまうだけか。手掛かりらしい物も出てこねえし」

「そこは敵さんの周到なところだねえ……大体調べ終わったから、一旦広間に戻ろっか」

「そうだな。成果無しって報告しに行くか」


 これでバランの方が凄い発見でもしていたらちょっと悔しいが。

 もしそうなっても、運が無かったんだと思うことにしよう。

 手ぶらのまま広間に戻ると、そこには既に教官とバランたちがいた。

 すぐに表情を窺ってみたものの、全員芳しい結果は得られていないように見えた。


「そちらはどうでしたか?」

「駄目でした。手掛かりになりそうなものは全部処分されてる感じで」

「こちらもおおむね同様です。組織としてのセキュリティ意識の高さには驚かされますね……もちろん、我々が技術面では素人だからというのもあるでしょうが」


 教官は残念だと肩を落とす。


「ただ……窓から施設の裏手が見えまして、そこに何かを焼いた痕跡が残っていました。なのでそれを確認しようかと」

「燃え残った物でもあればいいですけどねえ……」


 ここに来て手掛かりゼロ、というのは辛い。

 せめて一つでも、手土産に出来るものがほしいところだ。

 施設を出たオレたちは、メルシオネ教官の先導で裏手に回る。

 すると、何かを燃やした後から土や落ち葉を被せて隠蔽したような痕跡が確かにあった。

 覆っているものを慎重に取り除いてみたものの、僅かに残っていたものも大方真っ黒焦げの燃え滓になっている。

 結構色々な物を燃やしたのだろう、黒ずんだ部分は多いのだが……やっぱり納得のいく手掛かりは拾えない、か。


「……む。これは」


 諦めかけていたそのとき、メルシオネ教官が何かを発見する。

 摘まみ上げてみせたのは……焼け焦げた衣服だ。


「もしかして、それ……」

「恐らくは……ここへ連れて来られた人たちの衣服でしょう」


 エルフ族の再興という甘言に誘われ、ここへ来てしまった里のエルフたち。

 彼らは皆、非道な実験によって無残に命奪われ――そしてイレギュラーという異形と化した……。


「一体どれくらいのエルフが、犠牲になってしもうたんやろうか……」

「マレー族長は何人か消息を絶ったって言ってたけど……やっぱりその全員が、殺されちゃったのかな」

「奴らの目的がそのイレギュラーとやらの作製だったなら、生かしておく意味も無いだろう」


 バランの一言は辛辣だが、同時に的確でもある。

 イレギュラーを生み出す材料として以外に、エルフたちが集められた意味は無いのだ。

 ……数人で済んだことを良かったと思うべきかどうか。

 いや、命は失われているのだ。良かったなどとはとても言えないよな。


「――え?」


 それは、イオナの声だった。

 彼女も手を休めずに焼け残りが無いか調べていて、どうやら何かを見つけ出した様子だった。

 土を払い、摘まみ上げた一片の切れ端。

 それは、メルシオネ教官が見つけたのと同じ衣服の焼け残りに思えたのだが……。


「あれ? 里におるエルフの人らって、こんな素材の服着とったっけ……」

「……いいえ、彼らは森の中で採れる綿などの素材を使った簡素なものしか着ていませんでした。彩色なども無いに等しかったはずです。しかし、これは……」

「アーテミーの人が着てるような服、ですよね……?」


 声を震わせながら、イオナが投げかける。

 つまり、この燃やされた服はアーテミーの人間が着ていた服ではないのか――と。

 弾かれるように地面へ顔を近づけて、他にも似たようなものが無いかを探し始めるオレたち。

 すると、ほどなくして別の布切れももう一枚、土の中から拾い上げられた。


「……じゃあ、何だ。殺されたのは里のエルフだけじゃないってことか……?」


 またしても、ストレートに言ってのけたのはバランだった。

 信じたくない可能性。だが、ここに焼け残った衣服がそれを指し示しているのは間違いなく。


「私たちが対峙した、あのイレギュラー……」


 悲しみとも怒りともつかぬ表情を浮かべ、イオナは呟いた。


「……あの化物のために、そんなに多くの人が犠牲になったって言うの……?」


 それは、この場にいる全員の気持ちを代弁するかのような嘆きだった。

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