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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
第一の巡礼 悠久原生世界_エイヴス
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120.分担の三日目

「朝だぜ~っ!」


 エイヴス三日目の朝も、気持ちいい目覚めとはいかなかった。

 部屋に轟いたのはテッドくんの威勢のいい声だ。昨日は爆睡していて三人がかりで起こしたというのに、今日は先に起きてくるとは……。

 というか、別に今朝はオレたちを起こす理由無くないか?


「おはよう……朝から元気だな、テッドくん」

「ごめんごめん、気持ちの良い朝だったからつい」

「ついってなあ。まあ時間も時間だから構わないけど」


 時計を見ると、時刻は午前八時ちょうどを差している。

 昨日は少し早かったし、もしかしたらテッドくんはこのくらいに起きて朝を知らせるニワトリみたいなものなのかもしれないな?


「くそっ……最悪の朝だ」


 頭が痛むのか、手で側頭部を押さえながらバランが上半身を起こす。

 テッドくんの一声が響いたんだろうな、きっと。


「ベッドも硬いし、朝は大声で起こされるし……早く帰らせてくれ」

「おはよう、バラン。文句から始まるのはいいけど、ベッドに寝れてるだけマシなんだぞ」


 オレは元々ソファで寝ているし、昨日はサラルが気を利かせて……というか遠慮して、バランにベッドを譲っていた。

 それをさも当然のように考えるのは駄目だろう。サラルに少しは感謝しておきなさい。


「どうせやることもないんだ。好きに寝かせてくれればいいものを……」

「ところが、そういうワケでもないんだよねえ」


 そこでエスカーが伸びをしながらこちらへやって来る。

 バランは彼の顔を見て、露骨に舌打ちを決めた。この二人、タイプは違えど両方とも喧嘩腰だからなあ。


「エスカー殿、もしやそれは復旧の助力でござるか?」


 サラルも起きてきて、エスカーの言葉に対して質問を返す。

 それに頷いたエスカーは、


「教官が今日の予定は大体決めててね。また話があると思うよ」

「ちっ、面倒だな……」


 いっそバランは自由行動にしてもいいんじゃないか?

 ……ただ、勝手に動かれても不安な部分はあるよなあ。


「皆、おはよう。ちゃんと起きてて偉いね」


 隣の部屋からイオナがやって来て、他の女子もそれに続く。

 あちらも先に起きて、部屋で色々準備していたらしい。

 テッドくんの声もしっかり届いていたようだ。


「まあ、テッド殿はいつもこういう感じでござるよ」


 と評するサラル。学生寮で彼とテッドくんは隣室で、朝に通りかかるとよく元気な声が漏れ聞こえてくるのだとか。

 結構遮音性のある部屋だと感じていたんだが、それを貫通するとは……恐るべし。


「で……肝心の教官はどこだ?」


 賑やかなのが耳障りなのか、しかめっ面を隠そうともせずバランは呟く。

 メルシオネ教官はオレたちと同じ部屋で寝ているのだが、その姿は確かにない。

 まあ、オレたちより早く活動を始めているのは間違いないし、大方アンドルー邸に赴いているのだろう。

 予想に違わず、数分もすれば教官は拠点に戻ってきて、


「皆さん、おはようございます。今日の方針についてアンドルー邸で打ち合わせを行ってきました」


 と報告をくれたのだった。

 バランチームにはこれが初めての説明となるが、エイヴスに留まっているオレたちがやれることは主に二つ。

 千年王国という組織について調査することと、被害を受けたアンパッサの里の復旧作業を手伝うことだ。

 昨夜、教官も検討していたが、これはバランチームにも手伝ってもらうことになったとのこと。

 教官は千年王国の調査をする班になるとして……オレとバランチームの総勢十人がどういう風に分かれるか、だな。


「調査にあたっては、昨日のような戦闘は発生しないでしょうし、バランスは考慮不要です。むしろ復旧作業の方が、自分に何が出来るか考えて向かうべきでしょう」

「道理でござるな」


 調査地点はあの施設だけになりそうだし、専門家でもないオレたちが何人いても大きな進展というのは望めないだろう。

 力仕事ならやれるし、どちらかと言えばオレは里の復旧に精を出した方が良さげだとは思う。

 ただ――。


「私は調査に加わりたいです。イレギュラーを生み出してしまう恐ろしい組織があるなら、自分の目でしっかり調べて知っておきたいと思うので」


 真剣な面持ちでイオナはそう口にする。預言者という運命を背負う彼女にとって、千年王国という『悪』は戦うべき対象なのだ。

 その災厄を乗り越えれば、新たな夜明けがやって来て……彼女は定められた死を回避することが出来るかもしれないから。


「じゃあ、オレも調査に同行させてもらいますかね。千年王国のことはやっぱり気になるし、仮にもイレギュラー対策チームのリーダーとしては見ておかないと」


 リーダーとして、なんてのは格好付けすぎかとも思ったが、イオナに付いて行きたいなんていうのもどうかと思うし、まだマシだろう。

 幸い、ツッコミを入れられるようなことはなかった。


「流石はリーダー、責任感があるねえ。なら俺は復旧作業を手伝うとしますか」

「拙者も復旧作業に回ろう。力仕事の出来る者が必要になるであろうからな」

「俺も難しいことは分かんないから、力仕事にする!」


 エスカーとサラル、それにテッドくんは復旧作業のメンバーに立候補し、


「私は回復魔法で救護とか出来るかなと思うので……里の方に行こうかなと」

「私も同じように手伝えると思うわ。エステルちゃんは?」

「ウチは回復魔法からっきし。珍しいモンには興味あるから、調査にお供しよかなあ」


 女性陣ではエレンちゃんとフェイが復旧の手伝いを、エステルちゃんが調査への同行を希望した。

 残るはルカとバランだったが、


「……俺は王国の調査がしたい。奴らが親父の名前を出してきたのが薄気味悪いからな」


 バランはそんな理由から、調査メンバーに加わる意思を示す。

 ……確かに、有名人とは言え自分の父親の名前を口にされるのは怖いだろうな。

 千年王国が犯罪集団ならば、世界の秩序を守る星定議会を目の敵のように思っていても変ではないのだし、議長のヨーゼフ=カーファ氏を要注意人物とみなしている可能性はある。

 無論、ヨーゼフ氏も千年王国の存在は認識しているのに違いないが、息子としても知っておきたいのだろう。父親が教えてこなかったその組織の存在、そして狙いを。


「了解しました。……ルカさんが最後ですが、どうしますか?」


 残ったルカにメルシオネ教官が話を振る。

 するとそれまでぼうっとしていた彼女は慌てた様子で、


「あっ、えーっと……ボクは復旧作業に行こうかな。能力的にもそっちの方が役立ちそうだし」


 照れたように頭を掻きながらそう返すのだった。


「これでメンバー分けは完了ですね。素早い判断、ありがとうございます」


 最終的に、調査メンバーは教官を筆頭にオレとイオナ、エステルちゃんにバラン。復旧メンバーは他の全員という感じになった。

 五人と六人なので、まあ程よいバランスになったんじゃないだろうか。


「それではこの分担で本日は動くとしましょう。復旧作業にあたってくれる方々は、テルさんとともに里へ向かうことになりますので、食後も邸宅に残って彼を待っていてください」


 教官の指示に、エスカーたちは了解したと返事する。


「……というわけで、さっそくアンドルー邸へ向かうとしましょう。朝食をいただいてから、活動開始です」


 オレたちも了解と返し、教官に続いて拠点を発つ。

 エイヴス遠征三日目、今日も張り切っていこうじゃないか。

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