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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
第一の巡礼 悠久原生世界_エイヴス
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115.嵐が過ぎ去って

「あっちの瓦礫の下に誰かいます!」

「あそこ、放っておいたら燃え広がりそう!」

「まずは通り道を作りましょ!」


 打ち壊され、残骸だらけとなったアンパッサの里に大声が響き渡る。

 オレたちは里の方々に散って、懸命に救助活動を行っていた。

 戦いの最中はそれこそ無我夢中で気付かなかったが、逃げ遅れた人は大勢いた。

 里の中が静かになったので隠れ場所から顔を出した人や、或いは住んでいる家が倒壊して下敷きになってしまった人。

 そんな人たちを助けていくと、いつの間にか十を越える人数になっていた。


「ダインくん、あの家は……」

「マレー族長の、ですね……!」


 ディオンさんと共に行動していたオレは、族長の家が全壊しているのを発見する。

 急いで建物跡へと駆け寄り、人の気配がないか確認すると、


「……う……」


 建物の裏手で、微かに呻き声がするのを聞き取った。


「マレー族長!」


 声がした裏手側には、マレー族長が瓦礫に下半身を挟まれた状態で倒れていた。

 不幸中の幸いと言うべきか、瓦礫同士がぶつかり合った結果僅かに隙間が生じており、族長はその間にすっぱりと挟まっているだけのようだ。

 なのでオレたちは速やかに、瓦礫を崩してしまわないよう慎重に族長を引っ張り出した。


「……すまぬ、助かった」

「いえ……マレー族長がご無事で良かったです」


 ディオンさんは言いながら、回復魔法をかける。

 初級にも拘らずほぼ完璧に近いほど傷が癒えたところからも、魔術師としての能力の高さが伺えた。


「よもや、里にあのような怪物が襲ってくるとは……想像もしておらんかった」

「我々も同じですよ。しかしご安心を……災いの元となる者たちは、彼らが捕らえてくださったので」

「……何と? それは本当か」


 ここで頷いてよいものか迷ったが、ディオンさんも胸を張れと言わんばかりにこちらを見つめてくる。

 なのでオレは、肯定の証に頷いておいた。


「……外部の者に救われるとは。それも、アーテミーどころか異国の者たちというのは奇妙な話だ……」

「それもまた時代の移り変わり、と言えるんじゃないでしょうかね」


 閉鎖的なコミュニティから、開かれた関係性へ。

 凄惨な事件ではあったが、これがエイヴスを変えていく一つのきっかけになれば、得るものはあったと言えるのだけど。


「……変わらねばならぬ、か」


 マレー族長の呟き。

 その一言が、この先の未来を表しているようだった。


 ……イレギュラーの討伐から一時間ほどは、救助活動に奔走したと思う。

 最終的に助け出せた人は十四人。かなり危険な場所で負傷していた人もいたし、成果は十分だったと自負している。

 前に一度訪れているし、オレたちが外部の存在だという認識は広まっていただろうが、救助した際にありがとうという言葉もくれたし、少なからず彼らが寛容になったらしいことも良かった。


「お疲れさまでした、皆さん」


 救助活動が一段落したところで、メルシオネ教官を中心にオレたちは集合する。

 救助者は怪我をしていない里の者に任せ、今後のことは族長に判断を委ねることになったそうだ。

 さっきの感じなら、族長もアーテミーに協力を要請することだろう。

 それを皮切りに、色々な交流が深まってくれればオレたちとしても嬉しい限りだが。


「落ち着いたところで、改めてですが謝罪させてください。この度は本当に申し訳ありませんでした……まさに敵の本拠地へという場面で捕まってしまうとは」

「あのフードの男たちが一枚上手だったというだけです、お気になさらず。……それにしても本当に、彼らは何者なんでしょうね」

「はい。革新派じゃないというのも捕まった際に初めて気付いたので……街に戻って尋問しなければ」

「その正体次第では、ロウディシアも動かなければならなくなるかもしれませんね……」


 彼らがエイヴスの外からやって来た者だというのは正しい気がする。

 あの中には一人としてエルフ族がいなかったし、かといってアーテミーの人間でもなく、そしてずば抜けた技術力を有しているのだ。

 エイヴスという小さな世界で自然に出来上がる組織だとは到底思えない……だとしたら、上位世界であるロウディシアとの繋がりも考えなくてはならないだろう。

 もしかしたら、奴らはロウディシアに大きな波乱を巻き起こす存在かもしれない。


「しつこいようですが、皆さんには彼らの正体に心当たりは無いのですよね?」

「ええ、少なくとも我々には。ただもしかすると、国内で知っている者がいる可能性もありますから、まずは報告ですね」

「もし情報があれば、どうかこちらにも教えていただければ」


 その頼みにメルシオネ教官は善処しますとだけ答える。

 彼も一介の教員にしか過ぎないので、さっきと同様確定的なことは口に出来ないわけで。


「しかし、あの集団の技術力も気になりますが……皆さんの戦いぶりも目を見張るものがありました」


 ロウディシアとの交流が長いとはいえ、実際にイマジネーターが戦うところを間近で見たのはディオンさんも初めてのようだ。

 テルさんも色々羨ましがっていたし、ディオンさんだって同じ気持ちになるのは当然か。


「特にフェイさんの……魔法というのか、かなり特異ですね。最初はてっきり回復かと思いましたが、まるで時間が巻き戻っているような感じでした。色々と応用が利きそうですし、魔術師としては原理が気になるところで……」

「わ、私も原理というのは分かっていなくて……ごめんなさいね、ディオンさん」


 魔術師の性というやつなのか、早口になってフェイに語り掛けるディオンさん。

 ただ、能力の具体的な説明などは出来ず、フェイは申し訳なさそうに謝っていた。

 自分の心が能力として具現化するんです、なんて説明では満足してくれなさそうだし、相手をするなら魔術工房とか、専門の人じゃなきゃ無理だろうな。


「……失礼しました、そういうものには目がないものでして。この場で出来ることは全て終えましたし、戻りましょうか。アーテミーへ」

「そうですね。あの集団のこともありますし、バランくんのことに転送と通信の修復状況……確認したいことは沢山ありますからね」

「こちらも今後のことを考えなくては。祭のこともまだ片付いていないのに、頭の痛い話だ」


 そう言って溜め息は吐くけれど、ディオンさんの口角は僅かに上がっている。

 自らの予言……危惧していたものが一つ過ぎ去り、彼もきっと安堵しているのだ。


「お腹も空いたし、帰ったらまずはご飯だね!」


 緊張感のないルカの台詞にオレたちは笑ったが、言われてみれば確かに、腹は減ってるな。

 一所懸命働いた分、さっさと帰って美食の数々をたらふくいただくとしますか。

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