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【W/S】―世界終焉の物語は学園生活とともに―  作者: 灰土おやつ
第一の巡礼 悠久原生世界_エイヴス
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109.アジトの激闘

「――ブラスト!」


 戦闘が始まるや否や、右端にいた長身の女が無属性魔法を放ってくる。

 発動までが速い割に、目に見えて飛んでくる魔力の弾が大きい。

 魔法はオレたちのど真ん中に着弾、爆発する。その範囲も想定より大きく、回避はしたものの体に熱を感じた。


「そちらは右側の二人を、私たちは左側の二人を受け持ちましょう!」


 ちょうど左右に分かれたところで、メルシオネ教官がテルさんに向けて指示を出し、テルさんはこくりと頷く。

 オレたちはメルシオネ教官に付き、バランチームはテルさんに付く陣形だ。

 左側……先ほどまでディオンさんを盾にしていたリーダー格の男、そして物静かな背の低い女の二人だな。

 サラルたちが相手をするのは、屈強そうな体躯の男と、魔法を打ってきた背の高い女だ。分担するにしても、注意は払っておかなければ。


「この人数差は優位だけど、はてさてどうなるかねえ」


 口ではそう言うものの、エスカーは余裕の表情だ。足を掬われなきゃいいが、あいつは何だかんだ無難に勝っちまうからなあ。


「――パワーゲイン、クイックゲイン」


 後方の女は、リーダーの男に補助魔法を掛け続けている。

 恐らく回復なども出来そうだし、後回しにすると厄介かもしれないが、位置的に攻め込み辛い。

 エスカーの言う通り数的優位はこちらにあるし、誰かのマークが外れたときに攻めるのがベターか。


「ハハッ、遅いぞ!」


 補助魔法を受けて力、速度ともに向上した男がこちらへ突撃してくる。

 もう一本短刀を持っていたようで、いつのまにか両の手に得物があった。


「むっ……!」

「さっきのお返しだ」


 まず狙われたのはエスカーだった。不意打ちの仕返しにと、二刀流での素早い連撃で襲ってくる。

 エスカーはその速さに多少驚きはしたものの、全てを的確に捌いていく。


「――ふん!」

「おっと」


 短刀での連撃を対処している最中、男はいきなり蹴りを見舞ってきたので、これはエスカーもやや慌て気味に防御せざるを得なかった。

 腕をクロスさせて威力を軽減し、そのまま後方へ退がる。


「ぼうっとするなよ?」

「きゃっ!?」


 そこで男は瞬時に狙いを切り替え、イオナに短刀を投げてきた。

 予想していなかった攻撃にイオナは驚いたものの、ギリギリのところで短刀を躱す。

 ……まさか投げナイフとしても用いてくるとは。手にはまた短刀が二本あるし、予備を何本も用意しているのは間違いなさそうだ。


「戦い慣れしていますね……」


 メルシオネ教官が敵をそう評する。

 今のように、相手の隙を突く戦法などを当然のようにやってのけられるのは、確かに戦闘慣れしているような感はある。

 オレたちにはまだ圧倒的に足りないもの……だな。


「私があの男を足止めします。皆さんは後方の女性に意識を」

「……はい!」


 教官は指示を出すと、男に向かっていく。

 男はニタリと歯を見せ、教官の初撃を軽々受けた。


「中々の手練れと見た。だが、ついてこられるかな」

「さあ、どうでしょうね」


 高速で繰り広げられる攻防。斬りこみ、受け止め、突き、回避する。

 僅か数秒の間に、二人の間で五回六回と斬撃の軌跡が描かれる。

 しかも、あれだけの手数なのにほとんど移動していないのは、全てをなるべく少ない動きで対処しているからだ……ハイレベルな攻防だった。

 互角にも思える二人だが、どちらかと言えば敵の男の方は動きが大振りに見える。

 その奢りゆえか、意識が攻めに行きがちなのかもしれない。

 教官はあくまで冷静に攻撃をいなし……付け入る隙を探し続けているようだ。

 そして、その鋭い視線がついに男の隙を捉える。


「――二重刃ジ・ラミナ

「ぐお……っ!」

「……浅いか!」


 能力発動による刀身の複製。

 突然放たれた技に対応しきれず、男は脇腹に浅いながらも傷を負う。

 慌てて飛び退く彼に対して、後方の女は魔法を使おうとする。この状況からすれば当然、回復魔法だろうが――。


「させないぞっ!」


 能力を活かした跳躍で、ルカは女に飛び蹴りを放つ。

 女はそれに気づいて右へ動き、ルカの攻撃を回避したが、魔法は中断することになった。


「いいね――氷槍」


 ルカの攻撃にそうコメントしつつ、エスカーも続いた。

 リーダー格の男と魔法使いの女の直線状に立っていた彼は、時間を掛けてそこそこの大きさにしていた氷の槍をぶん投げる。

 男は難なくそれを躱したが、後ろの女は男自体が遮蔽物になっていたため気付くのが遅れる。

 回避行動はとったものの、間に合わずに右腕を槍が掠め、傷口から噴き出した血が床を汚した。


「……ふん、お前たち全員その奇怪な技を使えるというわけか」

「ええ、異国の技術です」


 男は舌打ちをして、女のところまで退がっていく。


「――ワイドヒール」


 庇われながらの詠唱で、回復魔法を発動させて二人は傷を癒す。

 だが、固まったならむしろそれが狙い時だ……!


「――サンダー!」


 イオナが魔法で雷を生じさせ、敵二人めがけて落とす。


「くっ――プロテクト!」


 それを女は防御魔法によって辛くも防ぐ。しかし、攻撃の手は緩めない。


「うおお……!」


 オレもただじっとしているわけじゃなく、ちゃんと展開を見定めながら攻めるときは攻める。

 防御魔法の切れ目を狙い、全速力で近づいて二人に斬り込む。

 そのタイミングに合わせて、メルシオネ教官も別方向から攻撃を仕掛けてくれた。


「舐めるな……ッ!」


 オレと教官の挟撃を、男は両手の短剣で何とか受け止める。

 ただ、一人を捌くのに片手しか使えない以上、力で圧せばこちらに分がある。

 ――と。


「……吹き飛ばせ――ストーム!」


 直後、途轍もない勢いの風が二人の周囲から発せられ、オレとメルシオネ教官は軽々と吹き飛ばされた。

 ランク三の風魔法――この瞬間に攻められることを見越して、防御のすぐ後から詠唱を始めていたわけか……!

 中級に分類される魔法だ、ただ押し返されただけではなく、オレの体には軽くではあるが無数の裂傷が生じている。

 風魔法はこういう斬り刻まれる系統のダメージが多いのが恐ろしいところだな……。


 ――けど、まだだ。


「流石に、多勢に無勢って奴だよね」

「申し訳ないけど……ねっ!」


 そう、今のは単発で終わる攻撃ではない。

 後にエスカーとルカが続く波状攻撃なのだ。

 無論、先の一撃で倒すつもりではあったけれど、不測の事態は想定して目配せで連携をとっていた。

 オレと教官が仕掛けている間にフェイから補助魔法を貰っていた二人は、オレたちが吹き飛ばされたのを見てすぐに動き、相手に時間を与えないまま次の攻撃へ繋げてくれたのだった。


「ぐあ……ッ!」

「ああっ!」


 男にはエスカーの氷刃が閃き、肩口から鮮血を噴き出し。

 女にはルカの拳がクリーンヒットし、壁まで飛ばされてばたりと倒れる。

 敵の強さは相当だったものの……やはり人数が物を言う結果となったな。


「――オレたちの勝ちだ」


 ヒリヒリと痛む傷口を押さえつつ、オレはそう勝利を宣言するのだった。


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