秘密の彼氏
蒼馬のドラマのセリフ合わせの練習に付き合った優愛だったが、台本には載っていないキスシーンを、突然、蒼馬にされて傷つく優愛だったけどー!?
蒼馬君に、あんなことされた以来、逢わない日が続いて一週間が経とうとしていた。
蒼士君から、蒼馬君が謝っていたことを聞いたけど、蒼馬君からのメールは音沙汰なし。
蒼士君から聞いた話では、今、やっているドラマの他に、新番組のドラマの出演も決まって、忙しいみたいだとは聞いた。
お昼休み。お弁当を食べて、一息ついていたら、美緒が心配な顔で教室に入ってきた。
「美緒、どうしたの?」
「蒼士君が、あたしをかばって足を怪我しちゃって……」
美緒は、泣きそうな顔であたしを見た。
「えっ、どうしてそんなことに……」
話を聞くと、この前、あたしに言いがかりをつけてきた隣のクラスの子達が、今度は、美緒に被害があったらしい。
あたしより、酷いめに遭いそうになったらしく、ちょうど、蒼士君が止めに入った時に足を怪我したらしい。
「優愛ー。どうしよう……。あたしのせいだ」
美緒は、自分を責めた。
「美緒のせいじゃないよ。蒼士君が助けたいって思ったから、助けたんだし……」
あたしの時だって、そうだった。倉庫に閉じ込められたあたしを助けに来てくれたのは、蒼士君だった。
クールに見えて、優しいところもあるんだよね……。
何だか、心配になってトイレに行く振りをして、保健室に様子を見に行った。
「失礼しまーす」
あたしは、ノックをしてから保健室に入って行った。
保健室の先生は、いないみたいで、シーンとしていた。
蒼士君はというと、カーテンの隙間からベッドに寝ているが見えた。
ケガしたのは足だけだし、寝ていないと思っていたあたしは、慌ててカーテンを開けた。
「蒼士君ー!?」
美緒の話では、足をケガしたって言っていたけど、まさか、他の所もケガしているんじゃー!?
「んー。西本……?」
蒼士君は、眠そうにあたしの方を振り向いた。
何だー。眠っていただけかぁー。
あたしは、ほっとさせると、蒼士君を見た。
「どうした?」
「み、美緒から、蒼士君がケガしたって聞いたものだから……」
「高野も大げさだなー。ちょっと、足をくじいただけなのに」
そう言って、蒼士君がケガした足の方を見せた。
「美緒が、血相かえてたから、捻挫して動けないのかと思ったぁー」
あたしは、ほっと胸をなで下ろした。
「へぇー。そんなに心配してくれてたんだ?」
「べ、別に。友達として、美緒が泣いている顔を見たくないだけだから!」
何だか、いつになくむきになってしまう。
「とにかく、もうすぐ、授業が始まるし。美緒に心配させないためにも、授業に出た……」
あたしが、続きを言おうとした時だった。
いきなり、蒼士君が、あたしの腕を掴むと、グイッと引き寄せられた。
「……!!」
蒼士君の腕の中で、寝るような形になって、慌てて離れようとしたけど、びくともしない。
どうしたの?蒼士君……。
家に遊びに行った時もおかしかったけど、今日もこんなこと突然するなんて……。
その時、ガラッとドアが開いて、保健室の先生が入ってきた。
蒼士君の手が緩んだ隙に、あたしは慌てて離れる。
「あら。まだ、いたの?ケガも酷くないんだし、次の授業は出なさいよ」
先生が、ガラッとカーテンを開けた。
「はいはい」
「返事は、1回!」
先生は、軽く蒼士君を睨んだ。
あたしと蒼士君は、保健室を出ると、美緒が保健室の前に立っていた。
「美緒ー」
あたしは、ドキッとする。
まさか、蒼士君と抱き合っていたとこ、見られていたんじゃー!?
「や……やだなぁー。どうしたの?こんな所でー。中に入ればよかったのに……」
あたしは、
やっとの思いで話かけた。
「今、来たとこだったんだけど、入ろうと思っていたら、急に2人が出てきたから、びっくりしちゃったー」
「そ、そうなんだ?あたしは、頭痛の薬を貰いに来たんだけど、授業が始まるからって、先生に追い出されちゃって」
何だか、後ろめたくて、嘘をついてしまった。
「蒼士君も?」
美緒は、心配そうに言う。
「足をくじいただけだから、仕方がないよ」
蒼士君は、少し、足を引きずりながら、ケロッとした顔で言った。
「ごめんね、蒼士君ー。あたしのせいで……」
美緒は、しおらしく謝ると、
「蒼士君の足が治るまで、変わりにあたしがサポートするね!」
と、蒼士君の横に立つと、身体を支えてあげた。
2人の姿を見て、キュッと胸が締め付けられる。
「あ、あたし……。先に行ってるね」
あたしは、2人に背を向けながら言うと、教室へ戻った。
まだ、2人でいるところを見るのも辛いのに、どうして、あたしのこと抱き締めたりするのー?
あたしには、蒼馬君がいるって知っているのに……。
あたしは、複雑な気持ちで、携帯を取り出した。
こんな時は、蒼馬君に電話しよう。
蒼馬君の声を聴いたら、蒼士君のことなんて忘れられるよね?
しばらく、逢わない日も続いているから、余計に心が乱れるのかも。
そう思って、電話をしても、蒼馬君は出ることはなかった。
忙しいみたいだって、蒼士君が言っていたし、電話に出られないのもおかしくない。
その日の夜。美緒から携帯に電話がかかってきた。
「優愛!テレビ観た?」
電話の向こうで、美緒は慌てた声で言った。
「まだ、観てないけど……」
「観てないならいいの……。じゃあね」
さっきまで、慌てた様子だったのに、いきなり美緒に電話を切られて、不審に思ったあたしは、テレビのスイッチをつけた。
「泉ちゃんと熱愛発覚した蒼士君ですが……」
テレビに映っていたのは、帽子とサングラスで隠した蒼馬君が、マスコミに追われながら、車に乗るところだった。
「……」
泉ちゃんって、ドラマの共演で一緒だった子だよね……。
ショックなはずなのに、どうしてだろう、平気な顔でテレビを観ている自分がいたー。




