表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘密の彼氏  作者: 夢遥
PR
8/10

秘密の彼氏

蒼士に一途な美緒の気持ちを知って、蒼馬と付き合うことにした優愛。

蒼馬の誘いで、蒼士のレコーディングに見学に行くけで、帰れといと言われてしまい、CDの発売のポスターを作るため、蒼馬の撮影を見学したのだったがー!?


「ちょっと、聞きたいことがあるんだけど?」

 翌朝、学校に行くと、昇降口で上履きに履き替えている時だった。


 この前、言いがかりをつけてきた先輩達とは、別の先輩達と隣のクラスの女子達がワッとあたしを取り囲んだ。


「みんな、どうしたの?怖い顔してー」

 あたしは、顔をこわばらせながら、みんなを見た。


「昨日、西本さんが蒼士君と一緒に車に乗るところを見かけたんだけど、付き合ってるの!?」

 一番始めに言い出したのは、隣のクラスの子達だった。

「……」


 昨日、撮影が終わった後、車を立たない場所に停めてもらって、蒼馬君と車に乗ったのにー。あの時、見られていたなんて……。


「ねぇ、どうなのよ!?」

 先輩達も、あたしを睨みつけた。

「つ……付き合ってないし。たまたま、同じ方向に行くみたいで、乗せてくれただけだから……」

 あたしは、言葉を選びながら説明した。


 この人達が言っているのは、学校の蒼士君だもの、付き合っていないのは本当のことだ。


「なぁーんだ。そうだったんだ」

 しばらく経ってから、みんな納得した顔で、あたしを見た。

「始めから、おかしいと思ったんだよねぇー。こんな、地味な子が彼女なんて」

「本当本当。でも、蒼士君と一緒に帰るなんて生意気ー!!」

 独りが言うと、次々と口を揃えて言い始めた。


 どうして、そうなるわけ!?本当のことを言ってやりたい。


 でも、双子だって知れたら、蒼馬君が歌っていないこともバレるのも時間の問題だ。そうなると、人気度も下がるかも知れない。


 蒼士君が、心配していたことが的中してしまう。


「とにかく、蒼士君には近づかないでよ!!近づいたら、今度は、何するかわかないから!」

 一斉に、あたしを睨みつけると、さっさと行ってしまった。

 あたしは、ヨタヨタと靴箱に寄りかかった。

 いつも、監視されているようで、これじゃ、身がもたない。

 蒼馬君には、しばらく会わないようにしよう。

 蒼士君とは……。どうすれば、いいのかな?話することもできないなんて、そんなの嫌だ。

 あたしの瞳から、涙が溢れてきた。

 そんなあたしの様子を、近くで蒼士君が見ていたなんて、気づきもしなかった。





「優愛ー。あたし、蒼士君に告白しちゃった!」


 その日の、昼休み。


 いつものように、美緒は蒼士君にお弁当を渡しに行っていた時のこと。


 美緒が、教室に戻ってくるなり、落ち着かない様子で椅子に座った。


 それも、今まで下の名前で呼んだことがなかったのに、『蒼士君』になっていた。


 あたしは、お弁当を食べていた箸を持つ手が止まる。


「そ……そうなんだ。それで、返事はもらえたの?」

 あたしは、恐る恐る聞いてみた。

「それがー」


 きっと、断ってるよね……。

 そう思っていたのに、

「蒼士君、付き合ってもいいって言ってくれたの!」

 美緒は、嬉しそうに満面な笑みを浮かべた。

「えっ……!」

 ポロッと、箸に挟んでいたウインナーを床に落としてしまった。

「ちょ、ちょっと。優愛ー、大丈夫?」

「ご、ごめん。蒼士君って、誰とも付き合わないイメージがあったから、少し驚いちゃって……」

 苦笑いしながら、あたしは、ウインナーを拾った。

「あたしも、てっきりそう思っていたけど、あたしが毎日、お弁当を作って行く一途さに惹かれたみたいなんだよねぇー」

 美緒は、恥ずかしそうに顔を赤らめた。

「……」


 蒼士君がだんだん、遠くなって行くような気がして、キューンと切なくなった。


「それで、今度、デートすることになったんだけど、何処がいいと思う?」

 美緒は、ウキウキしながら聞いてきた。

「……でも、美緒。蒼士君と普通のデートは難しいと思うよ。学校では、芸能人ってことになってるし……。それに、また酷いめにあわされるかも知れない」

「そっかぁー。そうだよね……」

 美緒が、落ち込んだ顔でがっかりと肩を落とした。


 あたしだって、落ち込むよー。


 好きな人が、美緒の彼氏だなんて、これから、どう接したらいいの?





「優愛ちゃん。蒼士に彼女ができたんだって?」


 それから、2、3日が経ってマスコミも落ち着いたので、今日から、徒歩で帰ることになって、自由を満喫しながら、家に向かって歩いている時のことだった。


 蒼馬君からの電話に、あたしは、キュッと唇を噛み締めた。

「そ、そうなの……。友達の美緒と付き合うことになてー」

「蒼士から聞いてる。毎日、弁当作ってくるって。俺もだけど、蒼士は押しに弱いからなー」

 蒼馬君が、笑う。

「……」


 これ以上、2人の話はしたくない……。


「そうだ!外でダブルデートはできないけど、友達を連れて、家においでよ。マンションだから、一般の人も出入りしているし、2人で来れば噂にもならないし」

 電話越しの蒼馬君は、楽しそうだ。

「う、うんー。美緒にも言ってみるね」


 蒼士君の顔を見るのは辛いけど、うちに遊びに行けるなんて、夢みたいだ。



 あたしは、早速、美緒に聞いてみることにした。


「勿論、絶対に行く!」


 美緒は、すぐに返事を返した。


 そして、蒼馬君が空いている日に遊びに行くことになった。



「お邪魔します!」


 案外、近い日に蒼馬君が空いている日があったので、あたしと美緒は、蒼馬君達の家に遊びにきた。


「お茶入れてくるから、座ってて」

 蒼士君が、キッチンの方へ向かった。

「あたし、手伝う……」

 蒼士君の後をついて行こうと、ソファーから立ち上がろうとした時だった。

「蒼士君。手伝わせて!」

 美緒が、蒼士君の後をついて行ってしまった。


「優愛ちゃん。後は、2人に任せて座ってて」

 蒼馬君が、あたしの肩に手をやった。

「う、うん……」

 あたしは、チラッと蒼士君の方を見ながら、ソファーに座った。


 2人は、仲良さそうにお茶の用意をしていた。


 あたしの胸が、キュッと締め付けられる。


「優愛ちゃん。この後、俺の部屋においでよ。頼みたいことがあるんだ」

 蒼馬君が、あたしの耳元で囁いた。

「う、うん。わかったー」

 あたしは、小さく頷く。


 みんなで、お茶してから蒼馬君の部屋へ。


「結構、綺麗にしてるね」

 蒼馬君の部屋は、整理整頓してあって、綺麗に片付けてあった。

「ありがとう。仕事の合間に片付けてるかいがあったよ」

 蒼馬君は、あたしに笑顔を向けた。

「そ、それでー。頼みたいことって何かな?」 あたしは、蒼馬君から目を反らしたまま聞いてみた。

「うん。これなんだけどー」


 蒼馬君は、「ラブヒット」の台本をあたしに見せた。


「セリフ合わせしてほしいんだ。ここなんだけどー」

「わかった。あたしで良かったら、協力するね」

 あたしは、パラパラと台本を捲って見た。


 蒼馬君がセリフ合わせしてほしい所は、主人公の涼が元恋人だった奈留と寄りを戻したい場面。


奈留の役は、今、人気急上昇の瀬名泉ちゃん。あたしより一つ年上の高3の女の子だ。


「じゃあ、ここの場面からお願い」

 蒼馬君は、言ってほしいセリフを指で示した。


「涼のことは、まだ、好きだよ……」

 あたしは、ぎこちなく、台本通りにセリフを合わせた。

「じゃあ、いいだろ?もう一度、やり直そうよ」

 蒼馬君もセリフに合わせて、あたしの肩に手をやった。

「でも……。あたしには、今、付き合っている人が……」


 セリフが一通り言い終わった後、蒼馬君は、もう一度、繰り返した。


「優愛ちゃん。なかなか、良くなってきたね」 蒼馬君は、ニコニコしながらあたしの顔を覗き込む。

「ありがとう」

 蒼馬君に言われて、何だか自信がわいてきた。

「今度は、さっきの続きからお願いしようかな」


 そう言うと、蒼馬君は、あたしを抱き締めた。

「あいつ浮気してるんだぜ!お願いだから、奈留。俺の所に戻ってこいよ」


台本では、抱き締められた後、彼に連れ去られるみたいな感じになっているみたいだ。


 蒼馬君は、あたしをギュッと抱き締める。


「もう、あいつには渡したくないんだ!」

 蒼馬君は、あたしの顔を覗き込んだ。


 さすがは、人気俳優。何だか、本当に涼に言われているような気がしてしまう。


 それに、あまりにも真剣な瞳だったから、こっちまで、ドキッとしてしまった。


「りょ……涼の気持ちは、嬉しい。でも……」


 台本を見ながら、蒼馬君に言った途端。


 急に、蒼馬君の手が、あたしの髪を撫でるように触れた。


 ちょっと、待って。こんなシーンあった?


 あたしが、慌てて、台本を読もうとした瞬間だった。


 蒼馬君が、あたしの唇にキスをしてきた。

「……!!」


 いくら、台本通りでも、キスシーンなんてなかったはずー。


 あたしは、慌てて蒼馬君から離た。


「そ、蒼馬!やめて……」

 慌てて拒否したけど、押し倒されてしまった。


 蒼馬君は、無言のまま、あたしの首筋にキスをする。


「や、やだ!」

 あたしの瞳から、涙が溢れてくる。

あたしは、思いっきり、蒼馬君を突き飛ばすと、部屋から飛び出した。 


「優愛、どうしたの?そんなに慌ててー」

 廊下にいた美緒が、あたしに声をかけた。

「ご、ごめん。美緒……。あたし、用事、思い出したから帰るね」

 あたしは、顔を背けたまま言った。

「えっ、どうして?今から、みんなでゲームでもやろうって、蒼士君と話してたのに……」

 美緒が、驚いた顔であたしを見た。


「どうかしたのか?」

 蒼士君が、あたし達の様子に気づいたのか、部屋から出てきた。

「蒼士君。それがね、優愛が帰るって言っててー」


 今は、蒼士君に顔を見られたくない。


 わざと、顔を背けたのに、蒼士君があたしの顔を覗き込んだ。


「高野ー、悪い。西本の荷物持ってきてくれないかな?」


 美緒は、蒼士君に荷物を頼まれて、部屋へ入って行った。


「西本。こっちー」

 蒼士君に腕を掴まれて、洗面所へ連れてこられた。


「顔、洗った方がいいぞ」

 蒼士君が、タオルを貸してくれた。

「ありがとうー」

 あたしは、蛇口を回して水を出すと、ジャブジャブと顔を洗った。


「蒼馬と何かあったのか?」

 あたしが、顔を洗い終わると、蒼士君は改めて聞いてきた。

 あたしは、黙って左右に首を振る。


「本当にか?じゃあ、どうして泣いてるんだよ」


 蒼士君が、あたしの肩を掴んだ。

「痛っ……!」

 あたしは、顔をしかめる。


「ごめん……。言いたくないなら言わなくていいから」

 蒼士君は、肩から手を離した。



「蒼士くーん、優愛ー!何処ー?」

 美緒が、廊下であたし達を呼ぶ声が聞こえてきた。



「み、美緒が呼んでるー。行かないと」

 ドアを開けた瞬間だった。


 蒼士君が、あたしの腕を掴むと、グイッと引き寄せた。


「ごめん。少しだけ、このままでいいかなー?」

 蒼士君は、静かにそう言った。


 ドキンドキン……。


 あたしの心臓の鼓動が、速くなる。


 また、切ない想いが募ってくる。


 トントン!


「蒼士君ー、優愛。いるの?」 ドアをノックする音がして、ドアの向こうで美緒の声が聞こえてきた。


 あたしは、慌てて蒼士君から離れると、ドアを開けた。


「蒼士君も優愛も、こんな所にいたんだ?」

 美緒は、驚いた顔であたしと蒼士君を交互に見た。


「め、目にゴミが入っちゃって、洗面所貸してもらってたのー」

 あたしは、慌てて言い訳をする。

「なぁーんだ。そうだったんだ?」

 美緒は、ほっとした顔をさせた。


 美緒ー。絶対、疑ってたよね……。


「じゃ……じゃあ、あたし。先に帰るね!」

 美緒から荷物を受け取ると、マンションの外へ出た。


 美緒がいるのに、どうして、あんなことしたのー?


 蒼馬君に抱き締められた時よりも、蒼士君に抱き締めたられた感触がまだ、身体に残っていたー。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ