秘密の彼氏
蒼士君に、アプローチを開始した美緒。優愛は、複雑な気持ちで応援するー。
これからの、優愛と蒼士の接点も……!?
翌日、さっそく美緒は、蒼士君の為にお弁当を作ってきた。
「優愛、どうしよう。いつ、渡そうー」
お昼休みになってすぐのこと、美緒はお弁当を抱えながら、教室をウロウロしていた。
そんな美緒を見ていたら、可愛く思えて、何だか笑ってしまう。
「何、笑ってるのよ。真面目に考えて」
美緒が、唇を尖らせた。
「ごめんごめん。あ、ほら。今がいいんじゃない?」
蒼士君が、席を立って教室から出て行こうとしていた。
「あ、本当だ!行ってくる」
美緒は、急いで蒼士君の後から教室を出て行った。
「はぁー」
美緒が教室を出て行った後、あたしは、大きな溜め息をついた。
美緒を応援するのも、何だか、胸の奥が苦しい。
何分か経って、美緒が暗い顔で戻ってきた。
「優愛ー。蒼士君、お弁当受け取ってくれなかった……」
「そうなんだ……」
それを聞いて、内心、ホッとしてしまった。
「で、でも。たまたま、お腹がすいてにかったのかも知れないし……。落ち込むことないよ」
励ますように、美緒の肩をポンと叩いた。
「うん。わかってる。でも、このままだと、諦めきれないから、受け取ってくれるまで作ってくる」
美緒は、決心したように言った。
美緒みたいな勇気があれば、あたしも美緒に遠慮しないで、蒼士君に告白できたかも知れない。
その日の放課後。
そろそろ一週間になるというのに、まだ、正門にはマスコミが、群れを作って待ち伏せしていた。
「仕方ないなー」
あたしは、蒼士君に教えてもらった裏道を通る。
正門が通れなくなってから、ずっと、裏道から帰っているから、塀も登ったり飛び降りたりするのが、前より、すんなりできるようになった。
いつものように、塀をよじ登って飛び降りて、歩いて行こうとした時だった。
「ちょっと、そこの君」
突然、後ろから声をかけられて、あたしは、恐る恐る後ろを振り向いた。
「神崎蒼士君と一緒に、スクープされた子のことを聞きたいんだけどー」
カメラを首にかけて、少し小太りのおじさんが立っていた。
まさか、マスコミの人!?
あたしは、慌ててその場から離れようとした。
「よく見ると君、蒼士君と一緒に写っていた子に似ているような……?」
おじさんは、もっとよく見ようと、あたしを引き止めようと手を伸ばした。
捕まる瞬間、あたしは、急いで走り出した。
「君、待って!!」
おじさんが、慌てて追いかけてきた。
このままだと、捕まっちゃう!!
あたしが、諦めかけた時だった。
「こっちに来い。西本!!」
どこからか、蒼士君の叫び声が聞こえてきた。
目をこらして見てみると、塀が建ち並ぶ、曲がり角の向こうで蒼士君が、懸命に手招きしている。
息を切らせながら、蒼士君の所へ走っていく。
蒼士君の所へたどり着くと、
「こっち!!」
蒼士君が、あたしの腕を掴んで走り出した。
走って行くうちに、あたしは疲れ果てて、段々、走るのが遅くなる。
チラッと後ろを振り向くと、遠くの方で、おじさんが追いかけてくるのが見えた。
しつこい。まだ、追いかけてくるー!!体力の限界だよぉー。
息を切らせながら、次第に足が遅くなる。
「西本、こっち!」
蒼士君が、急にグイッとあたしを引っ張って、路地にサッと入り込んだ。
あたしと蒼士君は、路地の植え込みの陰に隠れながら、息を潜めた。
「あれ、何処に行ったんだ?確か、この辺で見失ったんだけどな」
近くで、おじさんが、独り言を言っているのが聞こえてきた。
どうか、見つかりませんように……。
あたしは、おじさんが通り過ぎるのを植え込みの陰から覗きながら、じっと伺った。
でも、そんな願いも虚しく、おじさんが路地に入って来るのが見えた。
見つかる!!
あたしは、思わず顔を伏せようとした時だった。
蒼士君は、あたしの肩に手をやると、グイッと抱き寄せた。
『ちょっと、何するの!?』
あたしは、小声で蒼士君に言った。
『しっ!』
蒼士君は、あたしを抱き締めながら、声を潜めた。
ドキンドキン……。
蒼士君の胸に、顔を埋めながら、あたしの心臓は音をたてながら波打った。
蒼士君からも、心臓の音があたしの耳に伝わってくる。
今、蒼士君はどんな気持ちで、あたしを抱き締めているんだろうー。
そう思ったら、胸がキュッと締め付けられた。
次第に、足音が段々、大きくなってきた。
蒼士君の抱き締める力が、強くなる。
こんなに抱き締められたら、心臓がもたないよぉ……。
恐怖と、蒼士君との密着に心臓がドキドキして、窒素しそうになった。




