秘密の彼氏
やっと、蒼士のことを好きだと気づいた優愛。
でも、美緒の為に、弟の蒼馬と付き合うことにしたけど、ファーンの子達にいろいろと聞かれる中、そのたびに、蒼士君に助けられてー。
優愛の恋心が揺れ動くー!?
ガチャガチャ!
その時、カギを開ける音がすると、誰かが飛び込んできた。
あたしは、意識がもうろうとするなか、相手をみたけど、気を失ってしまった。
気を失ってから、どのくらい経っただろうー。
あたしは、保健室のベットの上で、目を覚ました。
「気がついたか?」
ベットの横で蒼士君が心配そうに
していた。
何だか、おでこが冷たいと思ったら、冷やしたタオルがのせてあった。
「そ、蒼士君が助けてくれたの……?」
あたしは、やっとの思いで声を出した。
蒼士君は、黙って頷いた。
「あ、ありがとう……」
素直にお礼を言うと、起き上がろうとした。
ん?何か胸の辺りが涼しいと思ったら、シャツの前ボタンが全部、外れていて、ブラが見える状態になっていた。
「ま……まさか、あなたが外したの!?」
あたしは、真っ赤な顔で、慌ててシャツで前を隠した。
「涼しくさせようと思って」
蒼士君は、涼しい顔で言った。
「そ、蒼士君がそんなことしなくても、保健室の先生がいるでしょー!?」
「先生が、いなかったんだから、仕方がないだろ」
蒼士君は、少し、無愛想な顔で言った。
そう言われると、何も言えなくなってしまう。
「それよりさー。蒼馬とキスしてるところ、撮られてたね?どうして2人っきりで会ってたのかな」
蒼士君が、ベットの上に手をついて、あたしの顔を覗き込んだ。
「そ、それはー」
美緒が、蒼士君のこと、好きだから探りを入れてたなんて言えない。
「わかった。どうせ、蒼馬にも口止めされたんだろう?」
「ち、違う!」
何、言ってるの!蒼馬君は、あんたと違うだから。
でも、ドラマのエンディング曲は蒼士君が歌っていることを、友達に言わない約束だったけど、つい、美緒に喋ってしまったのは秘密だ。
「じゃあ、どうして蒼馬にキスされたんだ?」
「……あ、あたし。蒼馬君に付き合ってほしいって言われたの」
あたしは、おずおずと打ち明けた。
「それで、付き合うのか?」
「まだ、わからない……」
「ふーん。でも、蒼馬にキスされたの、本当におでこだけか?」
蒼士君が、悪戯っぽく言った。
「そうだけど、何が言いたいわけ?」
「蒼馬って、結構、手が早そうだし。記事にはなっていないけど、今までだって、女性関係はあったみたいなんだよな」
「……」
それは知らなかったー。
「でも、カラオケに誘われて蒼馬が行くと、相手が蒼馬の歌声を聴いて、イメージが違っていて、幻滅するみたいなんだけどー」
蒼士君は、自分で言って、ハッとした。
どうやら、蒼馬君の歌声に関しては、秘密らしい。
だからかー、双子だってバレずに独りで歌っているようにしているのはー。
「そんなに、蒼馬君の歌って下手なの?」
「ごめん。今、言ったことは、忘れてくれないかな」
急に、蒼士君がそんなことを言うものだから、余計に興味が湧いてしまう。
「えー、いいじゃない。教えてくれたってー」
あたしは、軽く蒼士君の肩を揺すった。
「しつこいな。忘れろって言ってるだろ!」
蒼士君の顔がグッと近づいてきた。
また、キスされる!
あたしは、慌てて、パッと横を向いた。
「とにかく、今言ったことは忘れてくれ」
念を押すように言うと、保健室から出て行った。
びっくりした!また、キスされるのかと思ったー。
でも、今までなら口封じとか言って、キスされていたのに……。
なんだか、期待はずれのような気分になって、切ない溜め息をついてしまった。
「優愛……」
いつの間にか、美緒が保健室に来ていた。
「美緒」
「はい。優愛の鞄、持ってきた」
美緒は、あたしの鞄を差し出した。
「ありがとう」
あたしは、鞄を受け取る。
「今、神崎君とキスしていなかった?」
美緒は、ボソッと呟いた。
「えっ、してないよ!」 あたしは、慌ててブンブン手を振った。
「そうなんだ?じゃあ、角度でそう見えたのかもー」
美緒は、少しほっとした様子だ。
もう、キスしているなんて言ったら、ショックをうけるだろうな……。
「でも、何だか神崎君と仲良さそうだよね……。もしかして、神崎君。優愛のことが好きなのかな……」
「えっ!」
そんなのあるわけがない。
最初から、あたしに対して、意地悪で突然、ファーストキッスを奪う奴なんだよ!?
「神崎君が、優愛のこと好きなら、あたしは応援するしかないよね……」
美緒は、しょんぼりした顔で言った。
「や、やだなぁー。蒼士君があたしを?ありえないって。それに、ここだけの話。そ、蒼馬君と付き合うかも知れないしー」
少し言いずらそうに、美緒に打ち明けた。
「あの写真。やっぱり、そういうことになっていたんだー」
美緒は、納得した顔で頷いた。
何だか、自分で言ってて、胸の辺りがチクンと痛むのはどうしてだろう……。
「でも、蒼馬君と付き合うのって大変そうだね。もう、正門の所にマスコミが大勢集まっているし」
……!!
あたしは、慌てて保健室を出て昇降口へ向かった。
昇降口から外を見ると、正門の所にアナウンサーの人やカメラマン、記者の人が沢山集まっていた。
記者の人が、独り独り下校する生徒に、何か聞いているみたいだ。
これじゃ、帰れない……。
「あれは、西本のこと聞いてるなー」
いつの間にか、後ろで蒼士君が靴を履きながら、言っているのが聞こえてきた。
「あたしのことを、聞いてるって……。やっぱり、あの記事が原因?」
「ああ。蒼馬との関係を詳しく知りたいんじゃねぇの」
「……」
詳しくって言っても、まだ、はっきりと決めていないのに、言えるわけがない。それに、テレビ局まで来ているみたいだし、全国放送で流れるってことだよね…。
少し、足がすくんでしまった時、急に、蒼士君があたしの腕を掴んで歩き出した。
な、何!?まさか、あたしをマスコミの中に連れて行くつもりじゃー。
あたしは、蒼士君を止めようとしたけど、力が強くて、強引に引っ張られて行くだけだった。
「ほら、ここからだったら、見つからずに帰れるから」
しばらく歩くと、急に蒼士君が立ち止まった。
あたしは、ふと辺りを見回した。
どうやら、校舎裏らしいけど、旧校舎の方みたいだ。
蒼士君は、塀をよじ登ると、自分の手を差し出した。
「ほら、掴まれよ!」
「う、うん」
あたしは、素直に蒼士君の手を掴むと塀をよじ登った。
「俺、先に飛び降りて、支えてやるから。後から飛び降りろよ」
そう言うと、蒼士君は軽々とピョンと飛び降りた。
下を見ると、結構高い!!
「いいぞ!」
下で、蒼士君が両手を広げて合図を出している。
あたしは、少しためらったけど、思いっきりジャンプした。
ドシーン!
あたしの重みで、蒼士君の腕に抱きしめられるような形のまま、一緒に倒れてしまった。
「ごめん、大丈夫!?」
あたしは、慌てて蒼士君の顔を覗き込む。
「イテテ……。お前なぁー。もう少し、加減しろよ」
人が心配しているのに、最初の言葉がそれ!?
あたしは、ムスッとしながら、蒼士君から離れて立ち上がろうとしたのに、あたしを抱き締めたまま離そうとはしなかった。
や、やだー。どうしたんだろう……。
あたしの心臓の鼓動が、速くなる。
「ごめん。こんな所、蒼馬に見られたら殴られるな」
蒼士君は、慌ててあたしから離れた。
今日の蒼士君。いつもと様子がおかしい。
その時、あたしの携帯の着信音が鳴り響いた。
画面を覗いてみると、蒼馬君からだった。
あたしは、蒼士君を気にしながら、電話に出てみた。
「もしもし。優愛ちゃん?」
電話の向こうから、蒼馬君の人懐っこい声が流れてきた。
「蒼馬君……」
「学校にマスコミが押し寄せているみたいで、ごめん!まさか、あの時、写真を撮られているとは思わなくてー。俺もうかつだった」
蒼馬君は、しんみりした声で言った。
「あ、あたしも。もう少し、気を使っていればこんなことにはー」
あたしも、軽く考えていたことには変わりがない。
「ありがとう。そう言ってくれると助かるよ」
あらたまって、蒼馬君は礼を言う。
でも、蒼馬君と付き合うってことは、いつも誰かに見られていて、今回みたいにすぐにスクープになってしまうって、よくわかった。
「記事にも載ってしまったし、それで、ここで、はっきりとしておこうと思って。この前の返事を聞きたいんだけどー」
蒼馬君の、言いずらそうな声が流れてきた。
ど、どうしよう……。蒼馬君の彼女になれるなら、こんなに嬉しいことはない。
その時、何故か横にいる蒼士君が目に入った。
どうして、こんな時に蒼士君が気になるわけ?
「優愛ちゃん?」
「や、やっぱり、返事は電話で言うことじゃないし……。直接、逢ってからでもいいかな……?」
返事を、後回しにしようとしている自分がいた。
「じゃあ、わかった。後ろを振り向いてみて」
あたしは、不思議に思い、ゆっくりと後ろを振り向いた。
「蒼馬君ー」
いつの間にか、サングラスをかけ翼のある帽子をかけた蒼馬君が立っていた。
「よかった。優愛ちゃんに逢えて……」
「蒼馬君。どうしてここに?」
「学校の方にマスコミが押し寄せてるみたいだったから、心配になって、こっそり様子を見に来ちゃった」
蒼馬君が、サングラス越しに恥ずかしそうに笑っていた。
「蒼馬の所に行けよ。ずっと好きだったんだろ?気持ち伝えてこいよ」
蒼士君が、蒼馬君に向かって、あたしの背中を押された。
あたしは、一瞬、蒼士君の方を振り向くと、蒼士君が少し、悲しそうな顔をしている。
どうして、そんな顔をするの?
チクン!
そう思ったら、あたしの心臓が締めつけられた。
……あたし、蒼士君のことが好きなんだ!!
今頃、自分の気持ちに気づくなんてもう遅いよ……。
蒼士君は、美緒が好きな人ー。協力するって約束したのに今頃、蒼士君のことが好きだったなんて言えるわけがない。
あたしは、決心した顔で、蒼馬君を見た。
「あ、あたしを蒼馬君の彼女にして……」
あたしが言うと、蒼馬君は凄く、喜んでくれた。
「また、マスコミが押し寄せてくるようなことがあるかも知れないけど、優愛ちゃんのこと、絶対に守るから!」
「……」
今まで、テレビの向こうの蒼馬君が彼氏だったら……なんて、思ったこともあった。
その夢が叶ったんだから、きっと、これで良かったんだよね……。




