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その日、ヴェントは朝早くに自宅を出ると、まっすぐにユーの家へ向かった。腕には家から失敬した果物をいっぱいに抱えており、それを切り分けるための短剣も腰に下げている。
いつものように家にたどり着いてみると、そこに、見たことのない竜人がいた。雷の竜人とは毛色の違う、白みを帯びた金髪、そして金色の瞳をした男が二人、ユーの家を舐めるようにして見ている。
腰にはそれぞれ剣を下げており、軽装ではあるが鎧もまとっている。集落にしては珍しい「兵隊」であることは確かだった。
――記憶が正しければ、自警団はあっても、こうしたきちんとした兵隊がいる集落は、ないはずだ。
「……君は、風の竜人の子だね。なぜ、リ・セントーレの外れに?」
警戒し、近寄ることが出来ずにいたヴェントに気が付いたのだろう。二人の男は振り返ると目を細めながら訪ねてきた。ヴェントは地面に降り立つと、その二人を穴が開くほど見つめる。
「あなた達は? 見たことのない竜人ですね、どこの集落の方なんです?」
「ヴェントー! 仕事終わったよー!」
ユーの声に、ヴェントは顔を上げた。男たちもそちらへ視線を送り、目を冷たく光らせる。
また、ユーも、男たちを見ると息をのみ、青ざめた。
「その黒い瞳、血の翼……見つけたぞ、オスキュリート!」
「闇の竜人の生き残り、今度こそ確実に!」
ヴェントの目の前で、二人は剣を手にした。それに目を丸くし、抱えていた果物を取り落としてしまう。
「ユー!」
「ヴェ、ヴェント……!」
飛び立とうとした男二人の服の裾を、ヴェントはしっかりと握っていた。空に向かうつもりだった男たちは突然に進行を止められ、その衝撃を殺せずに、前につんのめって倒れてしまう。
「な、何してるの!」
「行こう、逃げるよ!」
倒れる二人の背を思い切り踏みつけ、ヴェントは翼を広げるとユーの手を握った。立ち上がろうとしたところを踏みつけられたせいだろう、男たちは再び地面に倒れこみ、まだ立ち上がる気配はない。
「でも、ヴェントは」
「わかんないけど、あいつらはユーを狙ってるんだろ!」
戸惑いの表情を浮かべるユーを引っ張るように。ヴェントは翼を力強く動かし、その場を離れた。




