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ポスダーはユーの背後に浮かぶ眼を指さしながら、話をしたくてたまらないと、笑いを必死にこらえるように肩を揺らしていた。ユーもポスダーからは決して目を離さないように気をつけながらも、チラと、背後の眼に視線を向ける。
「今から約五千年前……憎き闇の龍が魔界の門を閉じ、固く封じた……。奴はその後眠りについたが、扉を封じるための力を、闇の竜人へ、オスキュリートの血族へ渡した」
ユーは、自身の手の甲へ視線を落とした。手袋をはめているはずなのに、眼が自分をにらんでいるようで、背を震わせる。
「封じられてから今まで、実に長かった……。光も闇も、龍の盟約を無駄に守り続けていたからな。だがその封印の鍵も、貴様で終わりだ。ウィユ=オスキュリートよ。……この体は、実に使いやすかった」
ポスダーは唐突に、コンダムの体を見た。愛しく恍惚な表情は勝利を確信しているようで、ユーはギチリと眉間にシワを寄せる。
「光の竜人の長でありながら、闇を……それも、オスキュリートの血を宿すこの体。フフフ、おかげで、闇の竜人を滅ぼすのも、光の竜人を消していくのも楽だったよ。聞いた話では現在……まともな戦力として存在する集落は、この二つらしいのでねぇ? 随分とこの国も、平和ボケしたものだ」
「……一体、どれだけのルシアルの人を……コンダムに、殺させて!」
「さぁな。面白かったぞ? 信頼する長から殺される者たちの歪んだ表情を眺めるのは。……オスキュリート、お前が使っている力は元々、我らの力、貴様の封じる扉から微かに流れる魔界の力よ。クカカ、その封印の鍵、私が壊させてもらう!」
と、奪っているコンダムの腕を大きく広げた。再びビットが増殖していき、彼自身は頂点に黒い宝石が付いた杖を手にする。
「そうさ、この私が! 鍵を破壊するんだ!」
腕の皮膚を突き破る触手が、空を走った。突然のことにユーは反応できず、左翼を貫かれる。
「うああ!」
「さぁ、ビットよ行け! 踊れ、オスキュリート! 死に逝く舞を!」
ユーは触手を引き抜き、マトゥエを構え直すと、数を増やしたビットを一振りで破壊していった。先ほどと変わったことと言えば、ポスダーがコンダムの体を使い、触手を走らせてくること。
ビットを砕いたかと思えば触手で足を貫かれ、そちらを叩き潰したかと思えばビットに頭を攻撃される。縦横無尽に繰り広げられる攻撃は、ダメージも決して小さくはなく、これが続けばどうなるか。
それは考えなくとも、目に見えている。
「面倒くせぇ!」
触手に攻撃されようと、ビットに攻撃をされようとかまわず、ユーはポスダーの元に駆けた。血か宙に飛び、全身に痛みを受けながらも破けた翼は休めない。
突進の勢いを殺さないまま、マトゥエをコンダムの頭上に振り上げた。
ポスダーは右肩を前に突き出し、マトゥエを杖と触手で弾き返した。弾かれた反動を殺す時間もなく、床に背から叩き付けられる。砕けて散乱するビットが体に食い込み、喉元まで上がってきた悲鳴を無理やりに飲み込んだ。軋む腕にどうにか力を入れて立ち上がると、わずかに焦りの色が見えるポスダーを、凝視した。




