9-2
……不可視の壁が、そこに建てられている。ジューメも異変に気が付いたのだろう、大剣を手にすると思い切り振り下ろすが、そこには一ミリの傷もつかない。
「無駄だ無駄だ、ウィユ=オスキュリートよ……。我々の宴に、他人は必要あるまいよ?」
「っ……何が、宴だ……!」
喉の奥でクツクツと笑うコンダムに、ユーはクロウを構え、身構えた。彼はそんなユーを見つめながらも、笑うのを止めない。
「あぁ、安心したまえ。彼らが退屈しないよう、支度はしてある」
コンダムが再び腕を上げ、ユーはサッと青ざめてヴェント達を振り返った。自分たちが先ほど入ってきた扉が壊れんばかりに開かれ、大量の人影がなだれ込む。
ルシアルの兵、煙ザコに、見たことのない無機質な敵もいた。両腕は刃物で出来ており、体は金属で作られている。ウサギを思い出させる可愛らしい形をした耳も、切れ味のよさそうな刃で包まれている。
雪崩れ込んできたその数に、ジューメは力なく崩れているミールの体を抱きかかえ、端にそっと寝かせると、即座にヴェントを庇うよう大剣を構えた。剣を握る手を震わせながら、ヴェントも身構え、ジューメの隣に並ぶよう立つ。
「ヴェント……ジューメ!」
「奴らを心配するだけの余裕はあるのか? オスキュリート……」
嘲るような声に、ユーは無理やり、コンダムへ顔を向けた。彼の背には翼がないのに宙に浮き、自身の周りにいくつもの球体を浮かべていた。それは彼が腕を動かすとともに揺れ、徐々に手足が生えてくる。くるんと開いた血の色の瞳は、一つだけついていた。それが数十個、一斉にユーへ視線を止める、
「これはビットだ……。そこに倒れる裏切り者とは違い、私に忠実な、意のままに動かせる便利な道具よ」
「ボクは、きみと戦いに来たんじゃない。話をしに来たんだ、なんでいきなり攻撃的なの」
「貴様と話すことは何もない……オスキュリートの血を持つ子よ。忌まわしき者の力を持つ、最後の生き残りよ」
前髪の下で、スッと、目が細められた気がした。薄く笑みが浮かぶその表情に、ユーはクロウを構えながらも、わずかに後退する。
「なんなのさ……その、忌まわしき者の、力って」
「言っただろう、貴様とは、何も話すことはないと。行け!」
鋭く突き出される手に従い、ビットはユーに向かって一斉に襲いかかってきた。ユーは舌打ちをし、表情を歪めながら。飛び交うそれに向け、クロウを振り上げる。




